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◆番外編◆ なにより愛しいもの~side要~
#7
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勘違いしてしまっている美菜の瞳は、普段もクリッとした円つぶらな瞳をしているが、それにも増して大きく見開いたビックリ眼まなこをさっきまでの愉悦の所為かウルウルさせている。
そのいつもより増し増しの可愛らしさと艶っぽさを孕んだ美菜のその愛らしさは破壊力半端ない。
それをまともに食らってしまった俺は、もうメロメロの骨抜き状態で、もう勘違いしたままでもいいんじゃないかと思ってしまいそうなのをなんとか抑えて。
「いや、そうじゃなくて、俺がもし『社長』になっても『副社長』って呼ぶのかって話だ」
ニヤけてしまいそうな表情を引き締め美菜にやんわり言って聞かせると。
「////」
美菜は自分の勘違いが恥ずかしかったらしく、たちまち顔だけじゃなく全身を真っ赤にさせてしまっている。
世の中にこんなにも可愛らしい生き物が他に居るだろうか?
――あぁ、もう、どうしてくれよう。
俺の中に眠っていた加虐心がムクムクと湧いて出てきてしまう所為で、美菜を無茶苦茶にしてやりたいなんて邪な感情が頭を掠めてくる始末。
俺はそれらを必死になって抑え込んで。
「……で、美菜は、これから俺のことをどう呼んでくれるんだ?」
けれど、『もう副社長なんて呼ばせないぞ』という有無を許さぬ物言いになってしまうのは、これで留めることのできた俺へのせめてもの褒美なんだから目を瞑つぶってもらいたい。
「……ふ、副社長はどう呼んで欲しいですか?」
美菜は真っ赤になりながらも少し考えてから、ボソボソと呟くような小さな声で返してきたから、「要がいい」変わらず俺は有無を言わせない空気を漂わせつつ言ったのだが……。
何故か美菜のついさっきまで真っ赤だった筈の顔からは、血の気が引いていくみたいにあっという間に真顔になってしまった。
その直後、一瞬だけ、美菜は悲しそうな暗い表情を覗かせたかと思えば、
「……な、夏目さんと一緒の呼び方は嫌なので、『要さん』じゃ、ダメ……ですか?」
自意識過剰かも知れないが、美菜から返ってきた言葉は、まるで夏目に嫉妬して対抗しているかのような物言いで。
少なくとも俺には、そう思ってしまうような含みを孕んでいるようにしか聞こえなかった。
さっきから次々湧き出てくる加虐心を抑え込んだ俺のそんな必死な努力なんて吹き飛ばしてしまうくらいの威力を孕んだものだったから堪ったもんじゃない。
――これ以上俺を煽ってどうするつもりだ?
この時、美菜が一体何を考えていたかなんて知る由もない俺は、こうやって自分勝手なことを思ってしまっていた。
そんな俺は、まるで夏目に対して嫉妬しているみたいなことを言ってきた美菜に、どうしてそう言ってきたのかっていう理由を、もっとちゃんとした言葉として聞き出してやりたいという欲求に勝つことができなくて。
だってこれまでは、契約のこともあり、自分の意見なんて主張してくることなんてほとんどなかった美菜がこうやってちゃんと嫌だと言ってきたんだ。
まぁ、これまでは、俺が美菜にそうさせてしまっていたのだけれど……。
でも、美菜のことだ。これからはなんでも遠慮なく言えと言っても、きっと遠慮してこんな風には言ってはこないだろうから、こんなこと滅多にないかもしれない。
だから、美菜の口から何かを聞けるかもしれないこのチャンスを逃すわけにいかないっていう俺の気持ちも多目に見てもらいたい。
そんな風に、自分の中で言い訳をして、自分勝手だとは思いつつも、自分の欲求を抑えることのできなかった俺は、
「『要』も『要さん』もそう違わないだろう? 俺は、できれば『さん』なんて付けずに『要』で呼んで欲しい。なのに、どうしてそんなに夏目と同じ呼び方を嫌がるんだ?」
なんていう、意地の悪いことを美菜に言ってしまっているのだった。
それなのに、美菜から返ってきた言葉は、俺の思っていた以上の、そのまたはるか上を行くようなものだった。
「……な、夏目さんだけじゃなくて。女の人とデキなくなってからの副社長と、こういう関係だった男の人にも『要』って呼ばれてたのかと思ったら、悲しくなって、泣きたくなってきて……。でも、副社長の名前も好きだし、私も名前で呼びたい。……でも、……でも、一緒じゃ……イヤなんだもん」
最初は言いにくそうに小さな声でボソボソと呟くようなものだったのが、言っているうちに、段々と感情的になってきた様子の美菜はしまいには泣き出してしまって。
まるで小さな子供みたいに泣き出してしまった美菜は、泣き顔を晒したくはないようで。
俺の視線から逃げるようにして、とうとう両手で顔を覆い隠してしまっている。
そういえば、EDになってからというもの、寄ってくる女が煩わしくて、ずっとゲイだと匂わせていたため、まだ美菜のことを好きだという自覚がなかった頃だったし。
美菜にも俺が夏目と同じようにバイだという風に言っていたんだったなぁと、美菜の言葉を聞いてやっと思い出すことができた。
そんな間抜けな俺が美菜にちゃんと説明してやろうと、これまでのことを思い返していたところへ、
「……わ、煩わしいこと言って、ごめん……なさい」
どういう訳だか、急にそう言ってきた美菜の最後紡ぎ出された『ごめんなさい』という悲しそうな涙で震えた切ない声が、途切れ途切れに何度か俺の耳に流れ込んできた。
そのいつもより増し増しの可愛らしさと艶っぽさを孕んだ美菜のその愛らしさは破壊力半端ない。
それをまともに食らってしまった俺は、もうメロメロの骨抜き状態で、もう勘違いしたままでもいいんじゃないかと思ってしまいそうなのをなんとか抑えて。
「いや、そうじゃなくて、俺がもし『社長』になっても『副社長』って呼ぶのかって話だ」
ニヤけてしまいそうな表情を引き締め美菜にやんわり言って聞かせると。
「////」
美菜は自分の勘違いが恥ずかしかったらしく、たちまち顔だけじゃなく全身を真っ赤にさせてしまっている。
世の中にこんなにも可愛らしい生き物が他に居るだろうか?
――あぁ、もう、どうしてくれよう。
俺の中に眠っていた加虐心がムクムクと湧いて出てきてしまう所為で、美菜を無茶苦茶にしてやりたいなんて邪な感情が頭を掠めてくる始末。
俺はそれらを必死になって抑え込んで。
「……で、美菜は、これから俺のことをどう呼んでくれるんだ?」
けれど、『もう副社長なんて呼ばせないぞ』という有無を許さぬ物言いになってしまうのは、これで留めることのできた俺へのせめてもの褒美なんだから目を瞑つぶってもらいたい。
「……ふ、副社長はどう呼んで欲しいですか?」
美菜は真っ赤になりながらも少し考えてから、ボソボソと呟くような小さな声で返してきたから、「要がいい」変わらず俺は有無を言わせない空気を漂わせつつ言ったのだが……。
何故か美菜のついさっきまで真っ赤だった筈の顔からは、血の気が引いていくみたいにあっという間に真顔になってしまった。
その直後、一瞬だけ、美菜は悲しそうな暗い表情を覗かせたかと思えば、
「……な、夏目さんと一緒の呼び方は嫌なので、『要さん』じゃ、ダメ……ですか?」
自意識過剰かも知れないが、美菜から返ってきた言葉は、まるで夏目に嫉妬して対抗しているかのような物言いで。
少なくとも俺には、そう思ってしまうような含みを孕んでいるようにしか聞こえなかった。
さっきから次々湧き出てくる加虐心を抑え込んだ俺のそんな必死な努力なんて吹き飛ばしてしまうくらいの威力を孕んだものだったから堪ったもんじゃない。
――これ以上俺を煽ってどうするつもりだ?
この時、美菜が一体何を考えていたかなんて知る由もない俺は、こうやって自分勝手なことを思ってしまっていた。
そんな俺は、まるで夏目に対して嫉妬しているみたいなことを言ってきた美菜に、どうしてそう言ってきたのかっていう理由を、もっとちゃんとした言葉として聞き出してやりたいという欲求に勝つことができなくて。
だってこれまでは、契約のこともあり、自分の意見なんて主張してくることなんてほとんどなかった美菜がこうやってちゃんと嫌だと言ってきたんだ。
まぁ、これまでは、俺が美菜にそうさせてしまっていたのだけれど……。
でも、美菜のことだ。これからはなんでも遠慮なく言えと言っても、きっと遠慮してこんな風には言ってはこないだろうから、こんなこと滅多にないかもしれない。
だから、美菜の口から何かを聞けるかもしれないこのチャンスを逃すわけにいかないっていう俺の気持ちも多目に見てもらいたい。
そんな風に、自分の中で言い訳をして、自分勝手だとは思いつつも、自分の欲求を抑えることのできなかった俺は、
「『要』も『要さん』もそう違わないだろう? 俺は、できれば『さん』なんて付けずに『要』で呼んで欲しい。なのに、どうしてそんなに夏目と同じ呼び方を嫌がるんだ?」
なんていう、意地の悪いことを美菜に言ってしまっているのだった。
それなのに、美菜から返ってきた言葉は、俺の思っていた以上の、そのまたはるか上を行くようなものだった。
「……な、夏目さんだけじゃなくて。女の人とデキなくなってからの副社長と、こういう関係だった男の人にも『要』って呼ばれてたのかと思ったら、悲しくなって、泣きたくなってきて……。でも、副社長の名前も好きだし、私も名前で呼びたい。……でも、……でも、一緒じゃ……イヤなんだもん」
最初は言いにくそうに小さな声でボソボソと呟くようなものだったのが、言っているうちに、段々と感情的になってきた様子の美菜はしまいには泣き出してしまって。
まるで小さな子供みたいに泣き出してしまった美菜は、泣き顔を晒したくはないようで。
俺の視線から逃げるようにして、とうとう両手で顔を覆い隠してしまっている。
そういえば、EDになってからというもの、寄ってくる女が煩わしくて、ずっとゲイだと匂わせていたため、まだ美菜のことを好きだという自覚がなかった頃だったし。
美菜にも俺が夏目と同じようにバイだという風に言っていたんだったなぁと、美菜の言葉を聞いてやっと思い出すことができた。
そんな間抜けな俺が美菜にちゃんと説明してやろうと、これまでのことを思い返していたところへ、
「……わ、煩わしいこと言って、ごめん……なさい」
どういう訳だか、急にそう言ってきた美菜の最後紡ぎ出された『ごめんなさい』という悲しそうな涙で震えた切ない声が、途切れ途切れに何度か俺の耳に流れ込んできた。
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