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◆番外編◆ 消えないもの~side要~
#10
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――そのためには、今までのままじゃダメだ。
美優とのことがあって、EDになってからというもの、俺はいつも見たくないことから目を背けてばかりだったような気がする。
どうしてあの時、美優が俺に嘘をついてまで別れる必要があったのか、その理由に気づきながらも、それを認めてしまうのが怖かったんだ。
弱くて格好悪い自分を見せるのが嫌で、わざと傍若無人な態度をとってみたり、人を寄せ付けなかっり、ただの我儘な子供と一緒だ。
――いや、いい大人だから質が悪い。
今にして思えば、もしあのまま、俺に美優が嘘なんかつかずに、最期まで傍に居させてもらえたとして。
こんなに脆くて弱い見掛けだけの俺に、それを乗り越えることなんてできなかっただろうと思う。
ずっとメソメソウジウジしたままで、こんな風に、美菜を好きになることだってなかったかもしれない。
それどころか、もしかしたら、美優を失うことに耐えきれなくて、美優の後を追ってたかもしれない。
優しかった美優のことだ、脆くて弱い俺のことをたった一人残して居なくなることなんてできなかったんだろうと思う。
だからきっと、美優は、俺には本当のことを言わずに別れを告げたんだろう……。
もし、俺が美優の立場だったら、とてもじゃないがそんなことできなかったに違いない。
俺なら、自分のことで精一杯で、残していく者のことにまで気遣うような、そんな余裕なんて持てなかったに違いない。
でもこれからは、そんな時にこそ頼ってもらえるような、そういう男でありたいと思う。
……とはいっても、すぐには変えられはしないだろうが、少しずつでも変えていきたい。
――やっと、こんな風に、思えるようになったんだ。
夏目はもう来なくていいと言ってくれたが、美優にはちゃんと自分の気持ちを伝えておきたい。
といっても、美優のことを忘れるんじゃない。忘れられる筈なんてない。
俺が美優の分まで幸せになることが美優への一番の供養になるように思う。
独りよがりかもしれないが、ちゃんと前に進むためにも……。
「俺も一緒に、美優の墓参りにいかせて欲しい。それで最後にさせてもらう。墓参りを済ませて、ちゃんと区切りをつけてから、美菜と向き合うことにする。いつになるかは分からないが、美菜にはいずれ、美優のことをちゃんと話そうと思ってるし」
「……そうか。うん、分かった」
俺の申し入れに、夏目は特に何を言うでもなかったが、なんとなく察してくれているようだった。
こうして俺は、美菜には大学の頃の友人に会うためだと言って、夏目と一緒に美優の墓参りに行くことになった。
美優の墓参りに行ってきたからといって、何がどうなる訳じゃないが……。
俺のただの独りよがりかもしれないが、心なしか美優に背中を押してもらえたようなそんな気がした。
~fin~
【次回は、『なにより愛しいもの』side要をお送りします】
美優とのことがあって、EDになってからというもの、俺はいつも見たくないことから目を背けてばかりだったような気がする。
どうしてあの時、美優が俺に嘘をついてまで別れる必要があったのか、その理由に気づきながらも、それを認めてしまうのが怖かったんだ。
弱くて格好悪い自分を見せるのが嫌で、わざと傍若無人な態度をとってみたり、人を寄せ付けなかっり、ただの我儘な子供と一緒だ。
――いや、いい大人だから質が悪い。
今にして思えば、もしあのまま、俺に美優が嘘なんかつかずに、最期まで傍に居させてもらえたとして。
こんなに脆くて弱い見掛けだけの俺に、それを乗り越えることなんてできなかっただろうと思う。
ずっとメソメソウジウジしたままで、こんな風に、美菜を好きになることだってなかったかもしれない。
それどころか、もしかしたら、美優を失うことに耐えきれなくて、美優の後を追ってたかもしれない。
優しかった美優のことだ、脆くて弱い俺のことをたった一人残して居なくなることなんてできなかったんだろうと思う。
だからきっと、美優は、俺には本当のことを言わずに別れを告げたんだろう……。
もし、俺が美優の立場だったら、とてもじゃないがそんなことできなかったに違いない。
俺なら、自分のことで精一杯で、残していく者のことにまで気遣うような、そんな余裕なんて持てなかったに違いない。
でもこれからは、そんな時にこそ頼ってもらえるような、そういう男でありたいと思う。
……とはいっても、すぐには変えられはしないだろうが、少しずつでも変えていきたい。
――やっと、こんな風に、思えるようになったんだ。
夏目はもう来なくていいと言ってくれたが、美優にはちゃんと自分の気持ちを伝えておきたい。
といっても、美優のことを忘れるんじゃない。忘れられる筈なんてない。
俺が美優の分まで幸せになることが美優への一番の供養になるように思う。
独りよがりかもしれないが、ちゃんと前に進むためにも……。
「俺も一緒に、美優の墓参りにいかせて欲しい。それで最後にさせてもらう。墓参りを済ませて、ちゃんと区切りをつけてから、美菜と向き合うことにする。いつになるかは分からないが、美菜にはいずれ、美優のことをちゃんと話そうと思ってるし」
「……そうか。うん、分かった」
俺の申し入れに、夏目は特に何を言うでもなかったが、なんとなく察してくれているようだった。
こうして俺は、美菜には大学の頃の友人に会うためだと言って、夏目と一緒に美優の墓参りに行くことになった。
美優の墓参りに行ってきたからといって、何がどうなる訳じゃないが……。
俺のただの独りよがりかもしれないが、心なしか美優に背中を押してもらえたようなそんな気がした。
~fin~
【次回は、『なにより愛しいもの』side要をお送りします】
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