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◆番外編◆ 消えないもの~side要~
#1
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退院したばかりの美菜に『好きです』と言われ、自分の気持ちも伝え、互いの想いを確認し合うことができて。
週末は、病み上がりの美菜を気遣うためにも、部屋でのんびりと穏やかな時間を過ごした。
特にいつもと変わらない週末だった筈なのに……。
愛おしい美菜が傍に居るだけで、心も身体も幸福感に満たされて、特別なモノへと変わってしまう。
今朝もいつもと変わらない週明けの朝を迎えた筈なのに……。
目覚めた時に隣で眠る愛おしい美菜の無防備な寝顔を見ただけで、たちまち胸があったかくなってくる。
俺は無意識に愛おしい美菜の寝顔に引き寄せられるように手を伸ばしていて、その柔らかな頬の感触を味わうようにそうっと撫でてしまっていて。
それに美菜が反応し、擽ったそうに身動ぎをして目を覚ましてしまい。
俺の視線と美菜のうっすらと開いた眠気眼とが交わった途端。
寝惚けた様子の美菜がいつものように母親に甘えて抱っこをねだる小さな子供のように、俺に向けて両手を伸ばしてくる。
俺に向けて伸ばされた美菜のその両手をそっと引き寄せてやると、全てを委ねるようにギュッと俺に抱きついてくる美菜。
いつものように抱き抱えた美菜の背中を宥めるように優しくトントンしてやれば、寝心地良いのかそのままクタリと華奢な身体から力が抜けていく。
毎朝の美菜とのこの何気ない一時が俺の密かな楽しみとなっていて。
この時間が永遠に続けばいいのに、なんてことを本気で願ってしまうくらいだ。
――美菜が甘えてくれることが、嬉しくて、愛おしくて堪らなくて……。
俺は美菜が望むことならなんだって叶えてやりたくなってしまう。
***
出勤して間もない副社長室では。
美菜のお陰で、梅雨のどんよりとした仄暗い雲を吹き飛ばすくらいに、晴れ晴れとした清々しい心持ちで、窓の外へと視線を向けた俺の表情はさっきから緩みっぱなしだ。
いつものように壁の半分を埋め尽くす大きな窓の傍に佇んで、下界を見下ろすようにして大通りの車の流れをなんとはなしに眺めていると……。
美菜の無邪気な笑顔が不意に浮かんできて、愛おしい美菜に『今すぐ逢いたい』なんてことを思ってしまう。
ついさっき夏目の運転する車で、美菜と一緒に出勤してきたばかりだというのにだ……。
こんな風に年甲斐もなく、浮かれてしまっている自分自身に心底呆れながらも、気を抜けば、またすぐに緩んでしまいそうになる表情を気にしつつ、目を通さなければならないデスクの書類に意識を集中させたちょうどその瞬間。
入り口の扉を控えめにコンコンコンとノックする小気味いい音が響き渡った。
これまたいつものように、「どうぞ」そう声を掛けると、
「失礼致します」
畏まった声で返した後、ドアを開けて現れたのは……。
普段のチャラさや人当たりの良さなんて微塵も感じさせないインテリ銀縁メガネ仕様(美菜風に言ってみた)の夏目の姿だった。
週末は、病み上がりの美菜を気遣うためにも、部屋でのんびりと穏やかな時間を過ごした。
特にいつもと変わらない週末だった筈なのに……。
愛おしい美菜が傍に居るだけで、心も身体も幸福感に満たされて、特別なモノへと変わってしまう。
今朝もいつもと変わらない週明けの朝を迎えた筈なのに……。
目覚めた時に隣で眠る愛おしい美菜の無防備な寝顔を見ただけで、たちまち胸があったかくなってくる。
俺は無意識に愛おしい美菜の寝顔に引き寄せられるように手を伸ばしていて、その柔らかな頬の感触を味わうようにそうっと撫でてしまっていて。
それに美菜が反応し、擽ったそうに身動ぎをして目を覚ましてしまい。
俺の視線と美菜のうっすらと開いた眠気眼とが交わった途端。
寝惚けた様子の美菜がいつものように母親に甘えて抱っこをねだる小さな子供のように、俺に向けて両手を伸ばしてくる。
俺に向けて伸ばされた美菜のその両手をそっと引き寄せてやると、全てを委ねるようにギュッと俺に抱きついてくる美菜。
いつものように抱き抱えた美菜の背中を宥めるように優しくトントンしてやれば、寝心地良いのかそのままクタリと華奢な身体から力が抜けていく。
毎朝の美菜とのこの何気ない一時が俺の密かな楽しみとなっていて。
この時間が永遠に続けばいいのに、なんてことを本気で願ってしまうくらいだ。
――美菜が甘えてくれることが、嬉しくて、愛おしくて堪らなくて……。
俺は美菜が望むことならなんだって叶えてやりたくなってしまう。
***
出勤して間もない副社長室では。
美菜のお陰で、梅雨のどんよりとした仄暗い雲を吹き飛ばすくらいに、晴れ晴れとした清々しい心持ちで、窓の外へと視線を向けた俺の表情はさっきから緩みっぱなしだ。
いつものように壁の半分を埋め尽くす大きな窓の傍に佇んで、下界を見下ろすようにして大通りの車の流れをなんとはなしに眺めていると……。
美菜の無邪気な笑顔が不意に浮かんできて、愛おしい美菜に『今すぐ逢いたい』なんてことを思ってしまう。
ついさっき夏目の運転する車で、美菜と一緒に出勤してきたばかりだというのにだ……。
こんな風に年甲斐もなく、浮かれてしまっている自分自身に心底呆れながらも、気を抜けば、またすぐに緩んでしまいそうになる表情を気にしつつ、目を通さなければならないデスクの書類に意識を集中させたちょうどその瞬間。
入り口の扉を控えめにコンコンコンとノックする小気味いい音が響き渡った。
これまたいつものように、「どうぞ」そう声を掛けると、
「失礼致します」
畏まった声で返した後、ドアを開けて現れたのは……。
普段のチャラさや人当たりの良さなんて微塵も感じさせないインテリ銀縁メガネ仕様(美菜風に言ってみた)の夏目の姿だった。
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