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◆番外編◆ かなわないもの~side要~
#10
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暫くすると、イキそうになったのか、美菜の身体のバランスが崩れて、正面の俺の身体にしなだれかかってきた美菜が首にしがみついてきて。
「こんなのやだ。もっと、優しくしてほしい」
そんな余裕のない美菜の口からは、ポロリと本音が零れ落ちてきた。
こういうことに不慣れな処女である美菜に、俺は気づけばいつもこうやって無茶なことをさせてしまっている。
でも、美菜はいつもはされるがままで、こんな風にハッキリと意思表示してきたことなんてなかった。
それをいいことに、俺はいつもやりたい放題だったような気がする。
もしかしたら、美菜はいつも我慢していたのかも知れない。
鬱憤がつもり積もって、こんな形で出てきたのだとすれば、もう我慢の限界なのかも知れない。
そこまで考えが及んだ瞬間、目の前が真っ暗になった気がした。
――ど、どうすればいい?
今まで、相手の女をイカせ過ぎて失神させることはあっても、一度たりともこんな風に不満なんて言われたことなんかなかった筈なのに……。
美菜が相手だと、どうにもペースを乱されて、こうやってつい調子に乗ってしまって、ついついやり過ぎてしまっている。
このまま美菜に嫌われてしまったらと考えただけで……ゾッとする。
――あー、落ち着け落ち着けっ! しっかりしろっ!
さっきまでの、あのやりたい放題だった俺はどこへやら、弱気になってしまった俺は、サーッと血の気が引いていくのを感じながら、なんとか自分を奮い立たせると。
「美菜が可愛くて、つい調子に乗ってしまって……悪かった。もう意地悪しないから、俺のことを嫌わないでほしい」
未だ俺の首にしがみついたまんまの美菜に向けて、なんとも情けないことを言ってしまっていた。
その声は、本当に俺のモノかと驚いてしまうぐらいに小さく頼りないモノだった。
どこまでも情けない俺は、美菜からどんな言葉が返ってくるかと内心焦りながらも、これ以上、情けない姿を晒してなるものかと耐え忍んでジッと待っていた。
それなのに、美菜は俺の首に絡めたままだった腕を緩めると、俺の正面へと向き直ってきて。
「そんなことで嫌いになんてなりません。もしかして、焦らしてるんですか? 早く可愛がってくれないと、嫌いになっちゃいますよ?」
やはり怒っているのか、ムッとした表情で口を尖らせると、少し拗ねたような声で催促するようなことを言ってきた。
どうやら、さっきのことよりも、可愛がるのを中断してしまった俺のことを怒っているらしい。
どういう心境の変化か、それともさっきのは『嫌よ嫌よも好きのうち』っていう類のモノだったのだろうか?
どちらにしろ、美菜の言葉は、俺のやる気を漲らせるには充分なモノだった。
その証拠に、フウと大きく息を吐き出して気持ちを切り替えさせた俺は、
「あぁ、分かった。もう焦らさない。こんどこそ、たーっぷりと可愛がってやる」
なんて言葉を美菜にお見舞いすると、瞬時に美菜の身体を抱え直して姫抱きにしていて。
用意してあったバスローブを適当に羽織ってから寝室のベッドへとあっという間に移動したのだった。
そんな風に焦って居ながらも、病み上がりの美菜を気遣いバスローブで包んでちゃんと水気まで拭き取っていたのだから、自分でも驚きの早業だった。
そんなこんなで、このまま行けば、最後まで旨く事が運びそうだなんて思いながら、美菜の身体をベッドの上へゆっくり横たえて。
そうっとあまり体重を掛けないようにと気を配りながら美菜の身体に覆いかぶさるようにしてゆっくりと重なったのだが……。
たった今組み敷いた美菜のことを見下ろした瞬間、美菜の期待に満ちたような潤んだ瞳に囚われた俺の心は、たちまち不安に襲われてしまうのだった。
そんな風に見つめられたら、またさっきみたいに我を忘れて、無茶苦茶にしてしまいそうで怖い。
――でも、デキなかったらどうしよう。デキなくて、美菜にがっかりされたらどうしよう……。
そんな俺らしくもないネガティブな思考に支配されそうになった俺は、なんとか気を落ち着けようと。
今か今かという風に、俺を見つめ続けている美菜の頬に手を伸ばして、髪が頬に張り付いているのを指でそっと優しく撫でるように拭っているうち、
「そんな表情されると、優しくしてやりたいと思うのに、メチャクチャにしてしまいそうで怖くなる。でも、デキなくて、美菜にがっかりされたらと思うと怖くて、これ以上触れてしまうのが、怖い」
美菜に不安に思ってしまっていることの全てをついうっかり吐露してしまっていた。
「こんなのやだ。もっと、優しくしてほしい」
そんな余裕のない美菜の口からは、ポロリと本音が零れ落ちてきた。
こういうことに不慣れな処女である美菜に、俺は気づけばいつもこうやって無茶なことをさせてしまっている。
でも、美菜はいつもはされるがままで、こんな風にハッキリと意思表示してきたことなんてなかった。
それをいいことに、俺はいつもやりたい放題だったような気がする。
もしかしたら、美菜はいつも我慢していたのかも知れない。
鬱憤がつもり積もって、こんな形で出てきたのだとすれば、もう我慢の限界なのかも知れない。
そこまで考えが及んだ瞬間、目の前が真っ暗になった気がした。
――ど、どうすればいい?
今まで、相手の女をイカせ過ぎて失神させることはあっても、一度たりともこんな風に不満なんて言われたことなんかなかった筈なのに……。
美菜が相手だと、どうにもペースを乱されて、こうやってつい調子に乗ってしまって、ついついやり過ぎてしまっている。
このまま美菜に嫌われてしまったらと考えただけで……ゾッとする。
――あー、落ち着け落ち着けっ! しっかりしろっ!
さっきまでの、あのやりたい放題だった俺はどこへやら、弱気になってしまった俺は、サーッと血の気が引いていくのを感じながら、なんとか自分を奮い立たせると。
「美菜が可愛くて、つい調子に乗ってしまって……悪かった。もう意地悪しないから、俺のことを嫌わないでほしい」
未だ俺の首にしがみついたまんまの美菜に向けて、なんとも情けないことを言ってしまっていた。
その声は、本当に俺のモノかと驚いてしまうぐらいに小さく頼りないモノだった。
どこまでも情けない俺は、美菜からどんな言葉が返ってくるかと内心焦りながらも、これ以上、情けない姿を晒してなるものかと耐え忍んでジッと待っていた。
それなのに、美菜は俺の首に絡めたままだった腕を緩めると、俺の正面へと向き直ってきて。
「そんなことで嫌いになんてなりません。もしかして、焦らしてるんですか? 早く可愛がってくれないと、嫌いになっちゃいますよ?」
やはり怒っているのか、ムッとした表情で口を尖らせると、少し拗ねたような声で催促するようなことを言ってきた。
どうやら、さっきのことよりも、可愛がるのを中断してしまった俺のことを怒っているらしい。
どういう心境の変化か、それともさっきのは『嫌よ嫌よも好きのうち』っていう類のモノだったのだろうか?
どちらにしろ、美菜の言葉は、俺のやる気を漲らせるには充分なモノだった。
その証拠に、フウと大きく息を吐き出して気持ちを切り替えさせた俺は、
「あぁ、分かった。もう焦らさない。こんどこそ、たーっぷりと可愛がってやる」
なんて言葉を美菜にお見舞いすると、瞬時に美菜の身体を抱え直して姫抱きにしていて。
用意してあったバスローブを適当に羽織ってから寝室のベッドへとあっという間に移動したのだった。
そんな風に焦って居ながらも、病み上がりの美菜を気遣いバスローブで包んでちゃんと水気まで拭き取っていたのだから、自分でも驚きの早業だった。
そんなこんなで、このまま行けば、最後まで旨く事が運びそうだなんて思いながら、美菜の身体をベッドの上へゆっくり横たえて。
そうっとあまり体重を掛けないようにと気を配りながら美菜の身体に覆いかぶさるようにしてゆっくりと重なったのだが……。
たった今組み敷いた美菜のことを見下ろした瞬間、美菜の期待に満ちたような潤んだ瞳に囚われた俺の心は、たちまち不安に襲われてしまうのだった。
そんな風に見つめられたら、またさっきみたいに我を忘れて、無茶苦茶にしてしまいそうで怖い。
――でも、デキなかったらどうしよう。デキなくて、美菜にがっかりされたらどうしよう……。
そんな俺らしくもないネガティブな思考に支配されそうになった俺は、なんとか気を落ち着けようと。
今か今かという風に、俺を見つめ続けている美菜の頬に手を伸ばして、髪が頬に張り付いているのを指でそっと優しく撫でるように拭っているうち、
「そんな表情されると、優しくしてやりたいと思うのに、メチャクチャにしてしまいそうで怖くなる。でも、デキなくて、美菜にがっかりされたらと思うと怖くて、これ以上触れてしまうのが、怖い」
美菜に不安に思ってしまっていることの全てをついうっかり吐露してしまっていた。
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