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◆番外編◆ 夏目くんの誤算~side夏目~
#3
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それから暫くは特に何もなく、美優と俺は、これまで通りに、どこにでもいるような仲のいい兄と妹で居続けることができていた。
――美優はきっと、大好きだった父親を突然あっけなく病気で亡くして、寂しくて堪らなかったんだろうと思う。
それを一番近くにいる血の繋がらない兄である俺にぶつけてきただけだったんだろう。
俺は、そうやってもっともらしい理由をこじつけて、自分にも暗示を掛けていたのだった。
けれど、そんな風に心配して足掻いていたのは、俺だけのようで。
美優は、何もなかったかのように、俺に普通に接してくることに、こっちが寂しく思うくらい平気そうだったのだ。
それに引き替え俺は、あの日、美優の俺に対する想いを知ってからというもの……。
美優への想いを断ち切るために、誰かに告白されれば、とりあえず付き合って、そのたびに、美優が帰ってきてるであろう時間に、わざと彼女を家に連れて帰っては、美優と引き合わせた。
始めの頃は、美優も少しばかりショックを受けていたようだったけれど、次第に特になんの反応も示さなくなっていった。
きっと、彼女をとっかえひっかえしてばかりの俺への想いなんて、すぐに冷めてしまったんだろう。
やっぱり、俺への想いなんて、ただの寂しさを紛らわせるために抱いてしまったものだったのだ。
それに対して俺は、新しい彼女ができるたびに、美優のことを好きだという想いに、気付かされてばかりいた。
そんな俺が彼女を作るのをやめて、受験勉強に励みだした夏休みのある夜、事件は起こった。
いつものように、俺と美優の二人で夕飯を済ませて、美優が風呂から出た後、俺がシャワーで汗を流していた時のことだった。
背中越しに浴室のドアがガチャリと開く音が聞こえて、振り返るとそこには、何も身に纏ってない美優の姿があって。
俺は、まるで時間でも止まってしまったかのように、身動ぎも、瞬きもできないままで、ただただフリーズしたように固まってしまったのだった。
けれど美優は、そんな俺には構いもせずに、何も身に纏ってない生まれたまんまの姿で、俺に抱き着いてきて。
「ちょっ……おまっ、何やって」
「爽兄、私ね、クラスの男子に告白されて、その男子と付き合うことにしたの。でも、いつもいつも爽兄のことが浮かんじゃうの。だからお願い。
今日だけでいいから、私に、いつも彼女にしてたことしてほしいの。そしたら諦めがつくと思うの。ダメ?」
俺の出した声を遮るようにして、そう言って尚も迫ってくる、いつもはあどけない、可愛い筈の表情とは違った、色っぽい女の表情を垣間見せる美優を前に、
俺の意思とは反して、自制心なんてない分身が反応を示してしまった俺には、もうそれらを抑えられるほどの理性なんてなかった。
――そりゃ、そうだ。
ずっと自分の美優に対する感情を誤魔化して、蓋ばかりしてきた俺は、美優を忘れるために、好きになることの出来ない彼女のことを、いつもいつも、美優の身代わりにしてきたのだから……無理もない。
「男は、好きじゃなくても、こーやって反応するし、こーいうことできるんだからな? 後で、後悔しても知らないからな?」
最後の力を振り絞るようにして、牽制したつもりの俺の言葉も虚しく。
「後悔なんてしないもん。それくらい爽兄が好きなんだもん。美優に反応してくれて、嬉しい」
そう言いながら、美優にキスをされてしまった俺は、美優のことを狭い浴室にも構うことなく組み敷くと、何度も何度も無我夢中で美優の柔らかで滑らかな肌を抱きしめていた。
そして、とうとう俺と美優は、兄妹という一線を越えてしまったのだった。
――それでも俺は、自分の本当の想いを美優に伝えることだけは、どうしてもできなかった。
――美優はきっと、大好きだった父親を突然あっけなく病気で亡くして、寂しくて堪らなかったんだろうと思う。
それを一番近くにいる血の繋がらない兄である俺にぶつけてきただけだったんだろう。
俺は、そうやってもっともらしい理由をこじつけて、自分にも暗示を掛けていたのだった。
けれど、そんな風に心配して足掻いていたのは、俺だけのようで。
美優は、何もなかったかのように、俺に普通に接してくることに、こっちが寂しく思うくらい平気そうだったのだ。
それに引き替え俺は、あの日、美優の俺に対する想いを知ってからというもの……。
美優への想いを断ち切るために、誰かに告白されれば、とりあえず付き合って、そのたびに、美優が帰ってきてるであろう時間に、わざと彼女を家に連れて帰っては、美優と引き合わせた。
始めの頃は、美優も少しばかりショックを受けていたようだったけれど、次第に特になんの反応も示さなくなっていった。
きっと、彼女をとっかえひっかえしてばかりの俺への想いなんて、すぐに冷めてしまったんだろう。
やっぱり、俺への想いなんて、ただの寂しさを紛らわせるために抱いてしまったものだったのだ。
それに対して俺は、新しい彼女ができるたびに、美優のことを好きだという想いに、気付かされてばかりいた。
そんな俺が彼女を作るのをやめて、受験勉強に励みだした夏休みのある夜、事件は起こった。
いつものように、俺と美優の二人で夕飯を済ませて、美優が風呂から出た後、俺がシャワーで汗を流していた時のことだった。
背中越しに浴室のドアがガチャリと開く音が聞こえて、振り返るとそこには、何も身に纏ってない美優の姿があって。
俺は、まるで時間でも止まってしまったかのように、身動ぎも、瞬きもできないままで、ただただフリーズしたように固まってしまったのだった。
けれど美優は、そんな俺には構いもせずに、何も身に纏ってない生まれたまんまの姿で、俺に抱き着いてきて。
「ちょっ……おまっ、何やって」
「爽兄、私ね、クラスの男子に告白されて、その男子と付き合うことにしたの。でも、いつもいつも爽兄のことが浮かんじゃうの。だからお願い。
今日だけでいいから、私に、いつも彼女にしてたことしてほしいの。そしたら諦めがつくと思うの。ダメ?」
俺の出した声を遮るようにして、そう言って尚も迫ってくる、いつもはあどけない、可愛い筈の表情とは違った、色っぽい女の表情を垣間見せる美優を前に、
俺の意思とは反して、自制心なんてない分身が反応を示してしまった俺には、もうそれらを抑えられるほどの理性なんてなかった。
――そりゃ、そうだ。
ずっと自分の美優に対する感情を誤魔化して、蓋ばかりしてきた俺は、美優を忘れるために、好きになることの出来ない彼女のことを、いつもいつも、美優の身代わりにしてきたのだから……無理もない。
「男は、好きじゃなくても、こーやって反応するし、こーいうことできるんだからな? 後で、後悔しても知らないからな?」
最後の力を振り絞るようにして、牽制したつもりの俺の言葉も虚しく。
「後悔なんてしないもん。それくらい爽兄が好きなんだもん。美優に反応してくれて、嬉しい」
そう言いながら、美優にキスをされてしまった俺は、美優のことを狭い浴室にも構うことなく組み敷くと、何度も何度も無我夢中で美優の柔らかで滑らかな肌を抱きしめていた。
そして、とうとう俺と美優は、兄妹という一線を越えてしまったのだった。
――それでも俺は、自分の本当の想いを美優に伝えることだけは、どうしてもできなかった。
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