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煌めく未来へ
#7
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それに対して、要さんは、しれーっとした様子で、
「あぁ。まぁ、小石川の名刺を渡したときは、気乗りしない感じだったんだが……。その後、すぐに会ったらしくて。聞いたのは先週のことなんだが、『香澄さんって、見た目モデルっぽくて隙がなさそうだけど、ちょっと残念な美人っていうか、結構抜けてて、面白い子だった』って、言っててな。だから、どうだろうと、今日、小石川にもそれとなく訊いてみたんだが……。まぁ、小石川は、医者のクセに、夏目の言うように、結構抜けてて、鈍感なところがあるから、そのことに気づいてないんだろうなぁ」
ハハハッなんて楽しそうに笑いながら、そんなことを言ってきた。
――そんなこと、全然知らなかったんですけど。
ちょっとくらい教えてくれても良かったのに。そしたら、そんなに気に病むこともなかったのに……。
「そんな大事なこと、どうして教えてくれなかったんですか? 水臭いじゃないですか」
「……いや、実は、仕事も忙しかったのもあるんだが……。身重の美菜のことがずっと気にかかってたし。俺が無理を言って早めた結婚式の準備のことで頭がいっぱいで。それに、美菜がどんな反応をするかが……少し怖かったのもあって。正直、今日のことがなかったら、こうして美菜に話すこともなかったかもしれない。……すまない」
当然、ムッとした私が要さんに抗議の言葉を放つと、途端に、何とも言えない気まずそうな表情を浮かべて、かと思えばシュンとして、みるみる縮こまってしまった要さん。
最後には、本当に申し訳なさそうに頭を垂れて謝ってきた。
――要さんは、本当にズルい。
そんな風に言われちゃったら、それ以上責めることなんてできないじゃないか。
だって、それって、私のことで頭がいっぱいだったって言ってるのと同じなんだもん。
要さんへの愛おしさで胸がいっぱいになって、収まり切れない想いが溢れて、もう止められそうにない。
「分かりました、もういいです。でも、これからは、隠し事はなしですよ?」
「……あぁ、分かった」
「じゃぁ、仲直りの印に、いつものキス、してください」
「あぁ、それはいいが、今夜は俺がどれほど美菜のことを愛しているかを証明するために、たーっぷりと可愛がるって約束だっただろう? だから、美菜のことを今から寝室に連れていきたいんだが……。それまで我慢できるか? できないようなら、今すぐここで始めてもいいのだが……。どうだろう?」
「////……すぐがいい」
そんな想いでいた筈の私は、私の言葉ですっかり元気を取り戻して、いつも以上にヤル気と可笑しなスイッチが入ってしまったらしい要さんによって、毎度の如く、あっという間に、茹でダコにされてしまってて。
けれども、どうしようもなく要さんのことが好きで好きでしょうがない私は、要さんの胸にぎゅっと抱き着きながら、要さんと出逢う前では、自分がそんなことを言うなんて、夢にも思わなかった大胆な言葉を口にしているのだった。
「あぁ。まぁ、小石川の名刺を渡したときは、気乗りしない感じだったんだが……。その後、すぐに会ったらしくて。聞いたのは先週のことなんだが、『香澄さんって、見た目モデルっぽくて隙がなさそうだけど、ちょっと残念な美人っていうか、結構抜けてて、面白い子だった』って、言っててな。だから、どうだろうと、今日、小石川にもそれとなく訊いてみたんだが……。まぁ、小石川は、医者のクセに、夏目の言うように、結構抜けてて、鈍感なところがあるから、そのことに気づいてないんだろうなぁ」
ハハハッなんて楽しそうに笑いながら、そんなことを言ってきた。
――そんなこと、全然知らなかったんですけど。
ちょっとくらい教えてくれても良かったのに。そしたら、そんなに気に病むこともなかったのに……。
「そんな大事なこと、どうして教えてくれなかったんですか? 水臭いじゃないですか」
「……いや、実は、仕事も忙しかったのもあるんだが……。身重の美菜のことがずっと気にかかってたし。俺が無理を言って早めた結婚式の準備のことで頭がいっぱいで。それに、美菜がどんな反応をするかが……少し怖かったのもあって。正直、今日のことがなかったら、こうして美菜に話すこともなかったかもしれない。……すまない」
当然、ムッとした私が要さんに抗議の言葉を放つと、途端に、何とも言えない気まずそうな表情を浮かべて、かと思えばシュンとして、みるみる縮こまってしまった要さん。
最後には、本当に申し訳なさそうに頭を垂れて謝ってきた。
――要さんは、本当にズルい。
そんな風に言われちゃったら、それ以上責めることなんてできないじゃないか。
だって、それって、私のことで頭がいっぱいだったって言ってるのと同じなんだもん。
要さんへの愛おしさで胸がいっぱいになって、収まり切れない想いが溢れて、もう止められそうにない。
「分かりました、もういいです。でも、これからは、隠し事はなしですよ?」
「……あぁ、分かった」
「じゃぁ、仲直りの印に、いつものキス、してください」
「あぁ、それはいいが、今夜は俺がどれほど美菜のことを愛しているかを証明するために、たーっぷりと可愛がるって約束だっただろう? だから、美菜のことを今から寝室に連れていきたいんだが……。それまで我慢できるか? できないようなら、今すぐここで始めてもいいのだが……。どうだろう?」
「////……すぐがいい」
そんな想いでいた筈の私は、私の言葉ですっかり元気を取り戻して、いつも以上にヤル気と可笑しなスイッチが入ってしまったらしい要さんによって、毎度の如く、あっという間に、茹でダコにされてしまってて。
けれども、どうしようもなく要さんのことが好きで好きでしょうがない私は、要さんの胸にぎゅっと抱き着きながら、要さんと出逢う前では、自分がそんなことを言うなんて、夢にも思わなかった大胆な言葉を口にしているのだった。
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