【R18】訳あり御曹司と秘密の契約【本編完結・番外編不定期更新中】

羽村美海

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揺らめく心と核心~side要~

#2

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というのも、来春オープン予定の新店舗のことで色々動かないといけなくなってしまったからだった。

来年開催予定のオリンピックに合わせての空港周辺の再開発が進む中、『YAMATO』うちもそれに加わることになっていたのだが……。

もうその準備も着々と進んでいて、あとは内装工事のみという段階になっているにも関わらず、今更になって、ベルギー王室御用達の誰もが知る高級チョコレートブランドを起用した方が話題作りになるという理由で、今回は出店を見送ってほしいという、耳を疑うような報せが入ったせいだ。

――こんなこと、後にも先にも聞いたことがない、前代未聞のとんでもない案件だ。そんなバカげたこと誰が言ってるんだ?

で、調べたところ、昔から西園寺社長に色々と世話になっているらしい、大物代議士で、次期総裁との噂もある鬼瓦《おにがわら》剣一郎《けんいちろう》、見るからに腹黒そうな古だぬきだった。

その名前を聞いてピンときた。絶対に西園寺静香が絡んでる。

真偽のほどは不明だが、恐らく、鬼瓦が恩義のある西園寺社長への忖度から企てた、静香との縁談を袖にした俺に対しての、質の悪い嫌がらせに違いない。

まぁ、その件に関しては、こっちも古くからの付き合いがあった現総裁や元総裁といった、あらゆる方面からのツテを駆使して、すぐに、そのすべてを無かったことにしてやったのだが……。

それからというもの、細かいことを上げればキリがないというくらい、様々な妨害に圧力、そういった類のものが次々に湧き上がってるっていう状況が続いていて。

そんな中で、俺の唯一の拠り所が、愛おしい美菜の存在だった。

仕事に行けば、ただでさえ忙しい日々の業務に加えて、西園寺静香がらみで日々奔走し、どんなに疲れ果てて帰っても。

どうにも愛おしくて愛おしくて堪らない美菜の、可愛いとびきりの笑顔に出迎えられれば、そんなものも、一瞬にしてどこかに吹き飛んでしまっているから不思議だ。

それに、俺のために苦手な料理を克服しようと、どうやらこっそり特訓をしてくれているらしい美菜。

そんなことしなくとも、以前から、面と向かって美味しいとは言えなかったし、口では地味だとか色々言ってはいたが、俺は美菜の作るものならなんだって嬉しかったし、本当にどれも美味しいと思っていた。

そんな俺の最近の楽しみは、愛おしい美菜が俺のためにと作ってくれた愛情たっぷりの料理を食べることと、食事の準備や後片づけをしてくれる美菜のことを手伝うことだったりする。

それには、実は理由があって、前々から、食事の準備や後片付けを楽しそうにしていた、夏目と美菜の姿に、少々嫉妬してしまってた大人げない俺は、いつか美菜と一緒にそうしたいと思っていたからだった。

そんなことを知る筈のない優しい美菜は、忙しい俺のことを案じて、手伝いなんてしなくていいと言ってくれるのだが……。

そういう美菜の気遣いは嬉しいが、本当のことを言ってしまうのが、少々気恥しい俺は、美菜のことを後ろから腕に閉じ込めながら、

「俺は美菜と少しでもこうしてくっついていたいのに、美菜は嫌なのか?」
「////」

耳元に顔を近づけ、少々意地の悪いことを、それでも、なるだけ甘い声で囁けば。

たちまち真っ赤になって黙り込んでしまうという、なんとも可愛すぎる反応を見せる美菜。

そんな、いつまで経っても、こういうことに不慣れな可愛い美菜に、俺はいつも癒してもらっていた。

こうして俺は、愛おしい美菜と、一足早い新婚生活のような甘い甘い夢のような幸せな日々を送っていたが……。

その一方で、連日のように、あの手この手で、様々な妨害や圧力をかけてくる西園寺静香の矛先が、俺から、いつか愛おしい美菜へ向くんじゃないかという、不安が付きまとうようになって。

夏目が探ってくれていたあのキス動画も、睨んだ通り、西園寺静香が絡んでいることが判明し。

仕事に関しては、『YAMATO』うちには代々引き継がれてきた経営理念と優れた技術と信頼関係も、磐石な基礎を築き上げてきた絶対的自信もあるし、俺には経営者として、それらを守り抜く自信だってある。

だから、どんな妨害があろうが、圧力がかかろうが、不安なんて微塵もない。

けれど、美菜のこととなると、何かあったらと考えただけで、俺は途端に不安になって、ずっと好きでいてもらえる自信もなくて、牙を抜かれた臆病者の野獣になりさがってしまう。

――それでも、どうしても、美菜だけは失いたくない。

愛おしい美菜を守るためにも、短期間とはいえ、西園寺静香と付き合っていたという、俺にとっては汚点でしかなかった忌々しい過去と対峙して、今度こそ決着をつける覚悟を決めたのだった。

それなのに、まさか、この件がきっかけで、美菜の気持ちが俺から離れてしまうなんて、この時の俺は夢にも思っていなかった。

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