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揺らめく心と核心~前編~
#6
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でも、それよりも今は、仕事が超が付くほど忙しい要さんに、余計な心配をかけたくはないし。
ましてや、私のことで時間を費やして、これ以上要さんの負担を増やしたくはない。
だから、スマホを取り出して要さんを呼び出そうとしている夏目さんに、
「仕事が忙しい要さんに心配かけたくないし、きっとただの貧血か何かだと思うんで、要さんは呼ばないでください。譲さんの病院へ行くだけなら私ひとりで大丈夫ですから!」
そう宣言して立ち上がろうとするも……。
眩暈でふらついてしまった私は、危うく机の角に倒れ込みそうになって、
「危ないっ! 全然大丈夫じゃねーじゃんっ! それに、『ただの貧血か何かだと思うんで』って、医者でもないのに勝手に決めつけんなっ! もし違ってたら取り返しがつかないだろう? 頼むからじっとしてろっ!」
すんでのところで夏目さんに抱き留められて、いつになく厳しい口調で咎められてしまうのだった。
それでも、
「そんな大袈裟な。これくらい大丈夫です。夏目さんも忙しいんですから、速く仕事に戻ってくださいっ!」
そう言って、ふらつく私の身体を支えてくれている夏目さんを振り払おうとすると。
いよいよ見かねたらしい夏目さんに、
「前から思ってたけど、美菜ちゃんって、結構強情なとこがあるよな? それ、要の影響か? だったら手に負えねーな。美菜ちゃんに何かあって、後で要に激昂されたら堪んねーから、俺が病院まで連れて行く。それで文句ないだろ? ほら、行くぞ」
振り払おうとした手をやんわり制され、ほとほと呆れ果てたって口調で吐き捨てながらも、最後には折れてくれた、なんやかんや優しい夏目さん。
そんな以前と変わらない、本当のお兄さんのように接してくれた夏目さんの態度に、私がホッとする暇もなく。
夏目さんは、ふらつく私をヒョイと肩に担ぐようにして抱き上げ、スタスタと歩き始めてしまった。
まるで、米俵のようにして運ばれてしまっている私が、驚いて脚をバタつかせつつ、
「ちょっ、夏目さん! 自分で歩くから下ろしてくださいっ!」
必死で訴えるも……。
「おとなしくしてねーと落ちても知らねーぞ?」
そう言って、パチンとまるで鼓でも打つようにしてお尻を軽く叩かれてしまった私。
軽くとはいえ、少し痛みもあったし、恥ずかしさもあって、文句の一つでも言ってやろうと思っていたのだけれど……。
ちょうどそのタイミングで、再びの眩暈に見舞われてしまった私には、何も返すことができず、言われた通り、ただじっとしていることしかできないのだった。
そんなこんなで、結局私は、夏目さんの運転する車で光石総合病院へと向かうことになって。
その頃には、呻き声を上げた直後『酷いなぁ、夏目さん』とか零して壁際にしゃがみこんでいた筈の隼さんは、いつの間にか居なくなっていたようだった。
ましてや、私のことで時間を費やして、これ以上要さんの負担を増やしたくはない。
だから、スマホを取り出して要さんを呼び出そうとしている夏目さんに、
「仕事が忙しい要さんに心配かけたくないし、きっとただの貧血か何かだと思うんで、要さんは呼ばないでください。譲さんの病院へ行くだけなら私ひとりで大丈夫ですから!」
そう宣言して立ち上がろうとするも……。
眩暈でふらついてしまった私は、危うく机の角に倒れ込みそうになって、
「危ないっ! 全然大丈夫じゃねーじゃんっ! それに、『ただの貧血か何かだと思うんで』って、医者でもないのに勝手に決めつけんなっ! もし違ってたら取り返しがつかないだろう? 頼むからじっとしてろっ!」
すんでのところで夏目さんに抱き留められて、いつになく厳しい口調で咎められてしまうのだった。
それでも、
「そんな大袈裟な。これくらい大丈夫です。夏目さんも忙しいんですから、速く仕事に戻ってくださいっ!」
そう言って、ふらつく私の身体を支えてくれている夏目さんを振り払おうとすると。
いよいよ見かねたらしい夏目さんに、
「前から思ってたけど、美菜ちゃんって、結構強情なとこがあるよな? それ、要の影響か? だったら手に負えねーな。美菜ちゃんに何かあって、後で要に激昂されたら堪んねーから、俺が病院まで連れて行く。それで文句ないだろ? ほら、行くぞ」
振り払おうとした手をやんわり制され、ほとほと呆れ果てたって口調で吐き捨てながらも、最後には折れてくれた、なんやかんや優しい夏目さん。
そんな以前と変わらない、本当のお兄さんのように接してくれた夏目さんの態度に、私がホッとする暇もなく。
夏目さんは、ふらつく私をヒョイと肩に担ぐようにして抱き上げ、スタスタと歩き始めてしまった。
まるで、米俵のようにして運ばれてしまっている私が、驚いて脚をバタつかせつつ、
「ちょっ、夏目さん! 自分で歩くから下ろしてくださいっ!」
必死で訴えるも……。
「おとなしくしてねーと落ちても知らねーぞ?」
そう言って、パチンとまるで鼓でも打つようにしてお尻を軽く叩かれてしまった私。
軽くとはいえ、少し痛みもあったし、恥ずかしさもあって、文句の一つでも言ってやろうと思っていたのだけれど……。
ちょうどそのタイミングで、再びの眩暈に見舞われてしまった私には、何も返すことができず、言われた通り、ただじっとしていることしかできないのだった。
そんなこんなで、結局私は、夏目さんの運転する車で光石総合病院へと向かうことになって。
その頃には、呻き声を上げた直後『酷いなぁ、夏目さん』とか零して壁際にしゃがみこんでいた筈の隼さんは、いつの間にか居なくなっていたようだった。
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