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深まる疑惑
#27
しおりを挟むしばらくの間、要さんは私のことを後ろから何度も貫きながら、愛おしそうに何度も何度も私の名前を呼び続けた。
その間ずっと、私は、これは酔ってる所為で、要さんの意志じゃないから仕方ないんだ、って言い聞かせた。
そうして何度も後ろから貫かれているうち、要さんが呻くようなそんな声が聞こえてきて、私の両の胸の膨らみに腕を回して抱きついてきた要さん。
「――うっ……」
――どうやら終わりが近づいてるようだ。
――やっと解放してもらえるんだ。
ホッと安堵していると、さっきよりも余裕なく私の身体にすがるように寄りかかってきた要さん。
要さんに後ろから胸の膨らみを鷲掴みされたまま、要さんの迸る欲のすべてを一滴残らず受け入れた。
まだ達したばかりで、荒い息づかいの要さんに強く抱きしめられたまま、ぼんやりと視界に映る白い壁紙を見つめることしかできずにいる私の内腿から、生ぬるい白濁が伝う感触がして。
熱く蕩けた身体とは裏腹に、ずっと置いてきぼりをくらってしまっていた私の冷めた心が、やっと終わったと安堵するそんな暇なく。
私の中で欲を吐き出して鎮火した筈の要さん自身がミルミル元気を取り戻し、その存在を鼓舞するように見事な復活を遂げてしまったかと思えば……。
私の中から自身を素早く引き抜いて、私の身体をひょいっと姫抱きにしてしまった要さんは、リビングに向かって歩き始めてしまった。
「……え、要さん?」
「とことん可愛がってやると言っただろ?嫌なのか?」
慌てた私が声をかけるも、要さんは相変わらず可笑しなスイッチ全開になってしまっているようで、声こそ返してくれてはいるが、聞き入れてくれる気は更々ないご様子だ。
口調だって、命令口調以外では相変わらず抑揚のない低いままだし、表情だって無表情で感情が読み取れない。
――要さん、どうしちゃったの?
――いつもの優しい要さんはどこに行っちゃたの?
――要さんじゃないみたいで、怖いよ。
――速くいつもの優しい要さんに戻って。
これは全部、お酒に酔ってる所為だって分かってはいるのだけど、隼さんに色々聞かされた所為で、どうしても不安感を拭うことができない。
――やっぱり会社のことや静香さんとのことで苛立っているのかな?
――それとも、私が何か機嫌を損ねるようなこと、しちゃったのかな?
――でも、ずっと一緒に居た訳じゃないからそんな筈はないだろうし、やっぱり静香さんの所為?
いくら考えても、結局は隼さんに聞かされたことに結び付いてしまう。
考えてるうち不安になってきた私は、要さんにお姫様抱っこされた腕の中で、返事を返す代わりに、要さんの身体にぎゅうっと強く抱きついて、要さんの酔いが速く醒めるようにとただそれだけを祈り続けた。
ほどなくして、要さんはリビングのソファまでたどり着くと、その上へそっと横たえた私の身体に、覆い被さるようにしてのしかかってきて。
ずっと無表情を貫いていた怖いくらい綺麗な顔をどういう訳か、苦しげに歪ませたかと思えば、私の胸元に顔を埋めるようにして抱きついてくると。
「美菜は俺だけのものだ。愛してる」
そう言ったかと思えば、要さんは、まるで力尽きるようにして、私の胸元でさっきまでのことは夢だったのかと思うぐらい、穏やかな表情で同じように穏やかな寝息をたてはじめた。
どうやら、寝落ちしてしまったらしい。
そんな要さんの姿に拍子抜けして、
「私も愛してます」
そう呟き返した私は、寝入ってしまった要さんの綺麗な寝顔を見つめているうち、疲労感も相まっていつしか眠りに誘《いざな》われていったようだった。
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