【R18】訳あり御曹司と秘密の契約【本編完結・番外編不定期更新中】

羽村美海

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予期せぬ出来事とほころび

#9

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私が気を失ってから、一体どれくらい経っただろうか……。

気づいたときには、見慣れた寝室のベッドの上で、近くには要さんが居て、

「身体、大丈夫か?」

「……は、はい」

「そうか。……さっきは悪かった」

「いえ、私こそごめんなさい。さっき、夏目さんと話してたのは……」

「そのことならもういい。俺が大人げなかったんだ。それよりお腹すいてるだろ? 何か持ってくるから待ってろ」

そう言って、私から離れていこうとする要さん。

パウダールームでは、あんなにご機嫌斜めで、いつになく意地悪だった筈なのに、今はどういう訳か元気がないように見える。

それに、今までの要さんなら、きっとあの時、私が夏目さんに『言っちゃダメー!』って言ってた理由を何がなんでも聞き出そうとしてた筈なのに……。

要さんが口にするのは、パウダールームでのことだけで、その話題には触れようともしない。

一体どうしちゃったっていうの?

色んなことが気にかかってしまった私は、座ってたベッドから立ち上がって、部屋から出て行こうとする要さんのスラックスの生地をツンと摘まんで、引き留めてしまっていて。

そしたら、そんなことをされるとは思っていなかったらしい要さんが、少し驚いた声で、

「……美菜? どうした?」

そう言いながら、ベッドで横になっている私の目線まで、ゆっくりと身体を屈めてきてくれた要さん。

やっぱり、元気がないし、どこか寂しそうに見えてしまう。

思い当たることと言えば、キッチンでのことしかない。

だから私が言えることと言えば、そのことしかないから、

「さっき、夏目さんに口止めしてたのは」

と、そのことを言おうとした私の言葉は、要さんの思いがけず強い口調によって、

「そのことはもういいと言っただろ!」

と、あっけなく遮断されてしまったのだった。

けれども、これで、やっぱり要さんがキッチンでのことを怒っているのは明白な訳で。

このままにしておくことなんてできる筈もなく……。

私は、要さんを怒らせるのを覚悟で、

「お願いします。聞いてください」

そう言ったのに……。

「聞きたくない! 美菜は俺に言えないことでも、夏目には言えるってことがよーく分かったから、もういい、充分だ。

それとも、夏目に、『婚約指輪まで決められて、今さら結婚したくないなんて言えなくなった、とでも言って相談してた』とでもいうのか?

婚約指輪を選ぶときから、様子が変だったもんな……。

あぁ、そうか。美菜は俺に奨学金を払ってもらってるのをえらく気にしていたんだったな。やはりそうか、それで俺のプロポーズを受けたのか……。

それなら、美菜のお陰でEDを克服できたんだから、俺が謝礼を払うのは当然だ。気にすることはない。

けど、どういう理由であれ、一度受けてもらったものをなかったことにはしない。嫌でも俺と結婚してもらう」

不機嫌そうに低い声を放つ要さんの口から、信じられない言葉が次から次に飛び出してきてしまい。

一瞬、頭が真っ白になってしまった。
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