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予期せぬ出来事とほころび
#5
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♪゜・*:.。. .。.:*・♪
「……美菜ちゃん?
おーい、美菜ちゃん!」
「……あっ、はいっ!」
「何? どした? 最近ずっと幸せボケで、今朝だってお花畑モード全開だったのに。午後から元気なかったけど、なんかあった?」
「……お花畑モード全開って……。私、そんなに分かりやすいですか?」
「ハハ、そんな落ち込まなくても。そこが美菜ちゃんの"いいとこ"なんだし。
……で、どうしてそんな浮かない表情《かお》してんのか、"イケメンでとっても優しい夏目お兄さん"に話してみ?」
「……"いいところ"って言われても、全然嬉しくありませんけど……」
「ハハハ、ごめん、ごめん、冗談だって。それよりさぁ、何があったか言ってみ? ほら」
「……何って、自分でもよく分かんないというか……その」
いつものように仕事を終えて、マンションに帰った私は、夏目さんと一緒に夕食の準備をしていたのだけれど……。
毎度お決まりのように、全部お見通しなオフモードの優しい夏目さんによって、私はシステムキッチンの片隅で、優しい尋問を受けているのだった。
要さんは、リビングのソファに身体を沈めて、何かの資料に目を通しているらしかった。
私は、夏目さんの優しい尋問を受けたものの、自分でもどう説明すればいいのか分からないんだけどなぁ、と思いながらも。
夏目さんには、今みたいに、口では色々からかったりされるけれど、なんやかんや言いつつ、仕事でもプライベートでも、いつも気にかけてくれる夏目さんの優しさを無下にする訳にもいかず。
自分の、このよく分からない感情を説明するべく、まずは、昼間の副社長室でのことを話そうと、思い返してみることにした。
***
あの後、西条部長に指のサイズを確認してもらった私は、用意された煌めきを放ち続けている幾つもの婚約指輪の前で、呆然と立ち尽くしていたのだけれど。
そんな私のことを自分の隣へと優しく促してくれた要さんに、
「美菜、座ってゆっくり選ぶといい。気に入ったものがなければ、どういったものがいいか言ってくれればオーダーもできるから、遠慮しないで言って欲しい」
そう言われても……。
漠然とした不安に加えて、自分には不釣り合いな、明らかに高価そうな指輪に圧倒されてしまい。
どうしたらいいかが分からなくて、若干パニック気味の私は、やっぱり何も言えないままで。
ただただテーブルのジュエリーケースと要さんの顔を、交互に見つめることしかできなくて……。
そんな私の様子に、みかねた様子の要さんは、少し困ったような、どこか寂しげな微笑みを浮かべつつ、
「……急なことで、驚かせてしまったようだ。今度は、ゆっくりと時間のとれるときにした方が良さそうだな……。
西条、呼びつけておいて悪いんだが、日を改めさせてもらうことにする」
という言葉と一緒に、私から西条部長に視線を移してしまった要さん。
要さんはきっと、私を喜ばせようと私のために、サプライズのつもりで用意してくれたに違いない。
そう思うと申し訳なくて、心苦しくて、私は、
「承知いたしました」
という西条部長の声に、
「あのっ、すみませんっ! 私、こういうのよく分からなくて……。かな……副社長、決めてもらってもいいですか?」
と、ハモるようにして声を出したのだった。
「……美菜ちゃん?
おーい、美菜ちゃん!」
「……あっ、はいっ!」
「何? どした? 最近ずっと幸せボケで、今朝だってお花畑モード全開だったのに。午後から元気なかったけど、なんかあった?」
「……お花畑モード全開って……。私、そんなに分かりやすいですか?」
「ハハ、そんな落ち込まなくても。そこが美菜ちゃんの"いいとこ"なんだし。
……で、どうしてそんな浮かない表情《かお》してんのか、"イケメンでとっても優しい夏目お兄さん"に話してみ?」
「……"いいところ"って言われても、全然嬉しくありませんけど……」
「ハハハ、ごめん、ごめん、冗談だって。それよりさぁ、何があったか言ってみ? ほら」
「……何って、自分でもよく分かんないというか……その」
いつものように仕事を終えて、マンションに帰った私は、夏目さんと一緒に夕食の準備をしていたのだけれど……。
毎度お決まりのように、全部お見通しなオフモードの優しい夏目さんによって、私はシステムキッチンの片隅で、優しい尋問を受けているのだった。
要さんは、リビングのソファに身体を沈めて、何かの資料に目を通しているらしかった。
私は、夏目さんの優しい尋問を受けたものの、自分でもどう説明すればいいのか分からないんだけどなぁ、と思いながらも。
夏目さんには、今みたいに、口では色々からかったりされるけれど、なんやかんや言いつつ、仕事でもプライベートでも、いつも気にかけてくれる夏目さんの優しさを無下にする訳にもいかず。
自分の、このよく分からない感情を説明するべく、まずは、昼間の副社長室でのことを話そうと、思い返してみることにした。
***
あの後、西条部長に指のサイズを確認してもらった私は、用意された煌めきを放ち続けている幾つもの婚約指輪の前で、呆然と立ち尽くしていたのだけれど。
そんな私のことを自分の隣へと優しく促してくれた要さんに、
「美菜、座ってゆっくり選ぶといい。気に入ったものがなければ、どういったものがいいか言ってくれればオーダーもできるから、遠慮しないで言って欲しい」
そう言われても……。
漠然とした不安に加えて、自分には不釣り合いな、明らかに高価そうな指輪に圧倒されてしまい。
どうしたらいいかが分からなくて、若干パニック気味の私は、やっぱり何も言えないままで。
ただただテーブルのジュエリーケースと要さんの顔を、交互に見つめることしかできなくて……。
そんな私の様子に、みかねた様子の要さんは、少し困ったような、どこか寂しげな微笑みを浮かべつつ、
「……急なことで、驚かせてしまったようだ。今度は、ゆっくりと時間のとれるときにした方が良さそうだな……。
西条、呼びつけておいて悪いんだが、日を改めさせてもらうことにする」
という言葉と一緒に、私から西条部長に視線を移してしまった要さん。
要さんはきっと、私を喜ばせようと私のために、サプライズのつもりで用意してくれたに違いない。
そう思うと申し訳なくて、心苦しくて、私は、
「承知いたしました」
という西条部長の声に、
「あのっ、すみませんっ! 私、こういうのよく分からなくて……。かな……副社長、決めてもらってもいいですか?」
と、ハモるようにして声を出したのだった。
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