110 / 427
忘れられない特別な夜
#2
しおりを挟む要さんの綺麗なお顔と真正面から、しかも息のかかるほどの至近距離からご対面させられて。
寝起きだったとはいえ、要さんの胸板で頬をスリスリして顔なんて緩みきっていただろうから、さぞかしおバカ丸出しのマヌケ面だったに違いないから、恥ずかしくて仕方ないというのに……。
それでも、要さんの反応を確かめたいという怖いもの見たさにも似た心理も働いて、恐る恐る要さんの綺麗なお顔を見下げてみれば。
絶賛羞恥に襲われ中の私の心情なんてお構い無しで、いつもキリリとした切れ長の瞳を眩しそうに細めた要さんが、時折見せるあのとびきりの優しい笑顔で、私のことを愛おしそうに見つめていて。
ほんの数秒前まで、あんなに恥ずかしかった筈なのに、要さんのとびきりの笑顔に見惚れてしまった私は、羞恥も身動ぎさえも忘れてただただ要さんのとびきりの笑顔に釘付け状態だ。
そんなどうしようもなく身も心も要さんにメロメロ状態の私に、
「美菜、おはよう。身体、辛くないか?」
そう言って、優しく気遣ってくれる要さんにやっぱり見惚れたままで言葉を返す余裕もまだなくて、ただコクコクと頷くことしかできない私。
そんな私に、
「美菜が眠りにくいかと心配だったが、その様子だと、夢だなんて思わずに済んだようで、何よりだ」
要さんはそう言って、私の顔を自分の右肩に乗っけるようにして抱き寄せると、私の頭を優しく撫でてくれている。
ーー私のためにしてくれたことなんだと分かり、嬉しさで胸が一杯になる。
そんな風に、私が要さんの優しさに感激してしまってたところへ、
「それに、あんなに幸せそうに俺の胸で頬をスリスリする可愛い美菜が見れて、俺も夢じゃないんだって思うことができたしなぁ」
さっきまでの優しい声とは違った、どこまでも楽しそうな声の要さんに、そんなことを言われてしまった私は、またもや頭のてっぺんから爪先までを真っ赤にさせられてしまうのだった。
こうして、幸せな朝を迎えることができた私と要さんは、お昼過ぎまでゆっくりと寝室のベッドで過ごして。
どうやら気を利かせてくれたらしい夏目さんは、朝から出掛けていて。要さん曰く、前々から予定があったらしいけれど。
ーーあの夏目さんのことだから、絶対、そうじゃないと思う。
だって、退院した私が要さんに『好きです』と伝えた次の日に、夏目さんと仲直りした時だって、
『美菜ちゃんはなんでも顔に出るからすぐに分かった。
どうせ、入院中に要が付きっきりで傍に居たから勢いで告っちゃったんだろう』とか言われちゃったし。
ーーてことは、この数日間のことは勿論、昨夜のことも・・・?
ーーあーもー、恥ずかしすぎる。
思えば、副社長である要さんと契約を交わしたあの夜から、夏目さんには恥ずかしい場面を色々見聞きされているとはいえ、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
夏目さんが用意して行ってくれた昼食を暖め直して、要さんと一緒にテーブルに運びながら、そんなことを考えては百面相を繰り広げていたのだろう私は、
「俺と居るのに、まさか、夏目のことを考えてるんじゃないだろうな? だとしたら、お仕置きしないとなぁ……。で、どうなんだ?」
「////」
さっきまでご機嫌だった筈なのに、いつのまにやらご機嫌斜めになってしまってる要さんの不機嫌マックスの低い声で言葉が放たれた後。
長身を屈めて、私の顔の至近距離まで迫ってきた要さんの舌先によって、私の唇がペロリと舐められてしまって。
私はお約束のように、これ以上にないってくらいに真っ赤にさせられてしまい。
夏目さんにも言われた通り、私はなんでもかんでも顔に出てしまうと言うことを、イヤというほど思い知らされることとなったのだった。
0
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2024.8.2)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる