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それぞれの思惑~前編~
#18
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「……美菜ちゃん、ごめん。確かにちょっと、ムキになっちゃったけどさぁ。
でも、美菜ちゃんて、男に対して全然警戒とかしないし、なんでも信じ切っちゃうとこあるから……。お兄さん的立場としては心配なんだよ」
私の言葉を聞いた夏目さんは、酷く傷ついたような表情をしていて、見ているこっちの方が辛くなってくる程だ。
シュンとしながらも、なんとか私の機嫌を取ろうと必死になって声を掛けてくれているんだけど……。
さっきの木村先輩のことを思うと、そんなに簡単に夏目さんのことを許す訳にもいかない訳で。
「そんな心配なんてしてもらわなくても、大丈夫ですから。
木村先輩は、私のことを昔飼ってた猫に似てるって言ってたくらいなんで」
それでも、一応私を心配してくれてるってことは分かるから、少しは安心するだろうと、そう返したのに。
さっきまでシュンとしてた筈の表情をたちまち険しい表情に豹変させた夏目さんは、
「まさか、それ、鵜呑みにした訳じゃないよね? そんなの美菜ちゃんが警戒しないように予防線張っただけだから……。そんな言葉信じちゃダメだよ。
それに、さっき、どっか行くようなこと言ってたけど。まさか、前みたいに一緒にお酒飲みに行くとか言わないよね?」
私の肩を両手で掴むと、そんな空気の読めないことを言ってくる。
行き過ぎた心配症のせいで聞く耳を持たない夏目さんに、益々、腹が立ってきた私は、
「急な異動でストレスが溜まってるだろうからって。心配して、気晴らしにカラオケに誘ってくれただけですから。
そんな訳分かんないこと言わないでください。それに、別に先輩と一緒にカラオケくらい行ってもいいですよね?
あっ、そう言えば、チョコ貰いに行かなきゃいけないんでしたっけ? じゃぁ、行ってきます」
早口に言いたいだけ捲し立てると、
「美菜ちゃん、分かったから落ち着いて、ね? 要が心配するから、あんまり遅くならないうちに」
いつものように長ったらしくなりそうな夏目さんの言葉を阻止するように、
「さっすが秘書の鑑《かがみ》。夏目さんは、いっつも副社長が一番ですもんね? いい加減、放してくださいっ!」
キツく言い放つ。
すると相も変わらず、私の肩を掴んだままでいる夏目さんの手を振り払い、屋上を飛び出すようにして、一階にある店舗へと向かった。
後になって、私は、この時の夏目さんの忠告に耳を貸さなかったことを後悔することになる。
でも、美菜ちゃんて、男に対して全然警戒とかしないし、なんでも信じ切っちゃうとこあるから……。お兄さん的立場としては心配なんだよ」
私の言葉を聞いた夏目さんは、酷く傷ついたような表情をしていて、見ているこっちの方が辛くなってくる程だ。
シュンとしながらも、なんとか私の機嫌を取ろうと必死になって声を掛けてくれているんだけど……。
さっきの木村先輩のことを思うと、そんなに簡単に夏目さんのことを許す訳にもいかない訳で。
「そんな心配なんてしてもらわなくても、大丈夫ですから。
木村先輩は、私のことを昔飼ってた猫に似てるって言ってたくらいなんで」
それでも、一応私を心配してくれてるってことは分かるから、少しは安心するだろうと、そう返したのに。
さっきまでシュンとしてた筈の表情をたちまち険しい表情に豹変させた夏目さんは、
「まさか、それ、鵜呑みにした訳じゃないよね? そんなの美菜ちゃんが警戒しないように予防線張っただけだから……。そんな言葉信じちゃダメだよ。
それに、さっき、どっか行くようなこと言ってたけど。まさか、前みたいに一緒にお酒飲みに行くとか言わないよね?」
私の肩を両手で掴むと、そんな空気の読めないことを言ってくる。
行き過ぎた心配症のせいで聞く耳を持たない夏目さんに、益々、腹が立ってきた私は、
「急な異動でストレスが溜まってるだろうからって。心配して、気晴らしにカラオケに誘ってくれただけですから。
そんな訳分かんないこと言わないでください。それに、別に先輩と一緒にカラオケくらい行ってもいいですよね?
あっ、そう言えば、チョコ貰いに行かなきゃいけないんでしたっけ? じゃぁ、行ってきます」
早口に言いたいだけ捲し立てると、
「美菜ちゃん、分かったから落ち着いて、ね? 要が心配するから、あんまり遅くならないうちに」
いつものように長ったらしくなりそうな夏目さんの言葉を阻止するように、
「さっすが秘書の鑑《かがみ》。夏目さんは、いっつも副社長が一番ですもんね? いい加減、放してくださいっ!」
キツく言い放つ。
すると相も変わらず、私の肩を掴んだままでいる夏目さんの手を振り払い、屋上を飛び出すようにして、一階にある店舗へと向かった。
後になって、私は、この時の夏目さんの忠告に耳を貸さなかったことを後悔することになる。
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