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近づく距離

#14

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「美菜、待っていてくれたのか?」

「……あれ? あ、えっ!? ふっ…ふ…副、社長? おっ、おかえり……なさい」

夜になって、副社長と夏目さんは会食のため居ないし、あんなに広いキングサイズのベッドで、一人ぼっちで寝るのもなんだか寂しくて。

それに、朝、副社長とあんな風になっちゃって、夏目さんがフォローしてくれるって言ってくれていても、やっぱり気になっちゃって……。

本当は、怒らしてしまったことを一言でも、ちゃんと今日中に謝っておきたかったから。

だから、リビングの座り心地のいいソファに深く身を沈めて、バラエティー番組を観ながら副社長と夏目さんの帰りを待っていた筈だったのに……。
どうやらそのまま眠ってしまってたようだ。

そんな私が、副社長の声で目を覚まして、でも寝惚けていたせいもあって。

急に目の前に現れた副社長の姿に驚き、一瞬、ソファから転げ落ちそうになりながらも、放った声を言い終わる前に、副社長によって抱き上げられて、そのままフワリと優しく腕の中に閉じ込められてしまったのだった。

単純な私は、こうやって副社長の腕の中に居るだけで、朝のことなんてスッカリ忘れちゃってたし、もうそれだけでいいなんて思っちゃってるのに。

「あぁ、ただいま。

朝は、美菜が俺の立場を考えてのことだったのに、……悪かった。もう、あんなことしない。許してくれないか? 俺は、もう美菜が居ないと、寝ることもできないから、許してもらわないと困る」

副社長は、私のことを優しく包んだままで、少しバツ悪そうに、不安げな声色で低く囁くように。

そして、最後には、私にトドメを刺すようにして、我儘な子供みたいな可愛いことを言ってくるから。

「私の方こそ、しつこく言って、ごめんなさい。怒ってないから、安心してください」

そう返しながらも、泣いてしまいそうになって、副社長の腕の中で、思わず胸にギュッてしがみついてしまったら、そんな私に応えてくれるみたく、同じように副社長も、私のことをキツく抱き締めなおしてくれた。

ーーそんな風にされちゃったら、言われちゃったら、益々好きになっちゃうじゃないか。

これ以上、私のことを好きにさせて、副社長から離れられなくなっちゃっても、責任なんかとってくれないクセに。

私のことを好きになっちゃくれないクセに。

私のことが、煩わしくなっちゃったら、もう、こんな風に、傍においちゃくれないクセに。

それなのに、

「ありがとう。

美菜に、渡したいものがある」そう言ってきた。
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