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私、捕まっちゃいました
#3
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木村先輩オススメのバーへと辿り着いた私は、これから脚を踏み入れる大人の世界に、期待と不安で胸をわくわくドキドキさせながら脚を進ませた。
そこは、大人の隠れ家って感じの、しっとり落ち着いた大人な雰囲気が静かに漂っているオシャレな空間で。
スマートに出迎えてくれたスタッフさんに、奥のソファー席に案内してもらった私と木村先輩。
洗練された大人のオーラを身に纏った、モデル並にカッコいいバーテンダーさんが、作ってくれた甘くて美味しい綺麗なカクテルを堪能しつつ、向かえ合わせでテーブルを挟んだ私たちは、楽しいお喋りに花を咲かせていた。
ちょっと軽くて明るい気さくな木村先輩の人柄と、アルコールの威力も手伝ってか、バーに来るのが初めてで緊張気味だった私でも、少しも臆することなく、楽しい一時を過ごしていたのだった。
そして現在、程よく酔いも回って、ほろ酔い状態の私は、気になって気になって……仕方のなかった副社長と、あのすかしたインテリ銀縁メガネのことを聞いていたのだが……。
「あー、まー、いろいろ?
噂は聞くんだけどさぁ……。副社長と秘書の夏目さんって、大学からの親友らしいんだけど。三年前って言ってたかなぁ?
副社長に就任するときに、どうしても秘書は夏目でなきゃってんで。商社だったか、定かじゃないけど、就職してバリバリ仕事してた夏目さんを引き抜いたって話は有名で……って。あれ? 美菜ちゃん、大丈夫?
なんか眠そうだけど。もしかして酔っちゃった?」
「へへへぇ……らいじょーぶれしゅよー。きーむらしぇーんぱぁい」
心配そうに私を気遣ってくれている木村先輩に、そういって返していた私は、全然大丈夫ではなくて。
美味しく呑んでいた筈だったお酒に、完全に呑まれてしまっていたのだった。
その証拠に、私には、それからの記憶なんて、全くといっていいほど残ってはいなかったのだから。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
ふわふわとしたあったかいぬくもりに包まれているような、そんな心地よさに頬をスリスリと摺り寄せて、頬ずりをしながら至福の時を味わっていた私が、そうっと重い瞼を上げたその先には……。
白いワイシャツのようなものがあって。
そのワイシャツの襟もとは、何故か色っぽく大胆に肌蹴けられていて。
寝惚けているのか、ハタマタまだ夢の中にいるのか……そう思った私が、眠気眼をパチパチと何度も何度もしつこいくらいに瞬きを繰り返した後、もう一度、目をよーく凝らして見てみると。
そこにはやっぱり、さっきと同じ光景があって。
白いワイシャツの肌蹴たその隙間からは、喉仏らしきものが見て取れる。
でも、その喉仏が誰のものかなんて、そんなことを確認するような冷静さも余裕なんかも、今の私が持ち合わせている訳もなく、ただただ見つめることしかできない。
よくよく見てみれば、私は、どこの誰かも分からない喉仏の持ち主であるその男の人の背中にまで腕を伸ばしていて。
あろうことか、ぴったりとくっつくように、寄り添うようにして、しっかりと抱き着いてしまっている。
そして、ここまでくればお察しいただけるだろうが、当然のように、何も身に纏《まと》っていていない素肌を晒《さら》している私の胸は、白いワイシャツに押し付けるようにして密着しているのだった。
そんな、ありえないような衝撃的な事実に直面してしまった私は、次の瞬間には、
「ギャァ―――!!!」
という静寂だった空間をつんざくような大きな大きな叫び声をあげていて。
……まったく、色気もへったくれもあったもんじゃなかった。
そこは、大人の隠れ家って感じの、しっとり落ち着いた大人な雰囲気が静かに漂っているオシャレな空間で。
スマートに出迎えてくれたスタッフさんに、奥のソファー席に案内してもらった私と木村先輩。
洗練された大人のオーラを身に纏った、モデル並にカッコいいバーテンダーさんが、作ってくれた甘くて美味しい綺麗なカクテルを堪能しつつ、向かえ合わせでテーブルを挟んだ私たちは、楽しいお喋りに花を咲かせていた。
ちょっと軽くて明るい気さくな木村先輩の人柄と、アルコールの威力も手伝ってか、バーに来るのが初めてで緊張気味だった私でも、少しも臆することなく、楽しい一時を過ごしていたのだった。
そして現在、程よく酔いも回って、ほろ酔い状態の私は、気になって気になって……仕方のなかった副社長と、あのすかしたインテリ銀縁メガネのことを聞いていたのだが……。
「あー、まー、いろいろ?
噂は聞くんだけどさぁ……。副社長と秘書の夏目さんって、大学からの親友らしいんだけど。三年前って言ってたかなぁ?
副社長に就任するときに、どうしても秘書は夏目でなきゃってんで。商社だったか、定かじゃないけど、就職してバリバリ仕事してた夏目さんを引き抜いたって話は有名で……って。あれ? 美菜ちゃん、大丈夫?
なんか眠そうだけど。もしかして酔っちゃった?」
「へへへぇ……らいじょーぶれしゅよー。きーむらしぇーんぱぁい」
心配そうに私を気遣ってくれている木村先輩に、そういって返していた私は、全然大丈夫ではなくて。
美味しく呑んでいた筈だったお酒に、完全に呑まれてしまっていたのだった。
その証拠に、私には、それからの記憶なんて、全くといっていいほど残ってはいなかったのだから。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
ふわふわとしたあったかいぬくもりに包まれているような、そんな心地よさに頬をスリスリと摺り寄せて、頬ずりをしながら至福の時を味わっていた私が、そうっと重い瞼を上げたその先には……。
白いワイシャツのようなものがあって。
そのワイシャツの襟もとは、何故か色っぽく大胆に肌蹴けられていて。
寝惚けているのか、ハタマタまだ夢の中にいるのか……そう思った私が、眠気眼をパチパチと何度も何度もしつこいくらいに瞬きを繰り返した後、もう一度、目をよーく凝らして見てみると。
そこにはやっぱり、さっきと同じ光景があって。
白いワイシャツの肌蹴たその隙間からは、喉仏らしきものが見て取れる。
でも、その喉仏が誰のものかなんて、そんなことを確認するような冷静さも余裕なんかも、今の私が持ち合わせている訳もなく、ただただ見つめることしかできない。
よくよく見てみれば、私は、どこの誰かも分からない喉仏の持ち主であるその男の人の背中にまで腕を伸ばしていて。
あろうことか、ぴったりとくっつくように、寄り添うようにして、しっかりと抱き着いてしまっている。
そして、ここまでくればお察しいただけるだろうが、当然のように、何も身に纏《まと》っていていない素肌を晒《さら》している私の胸は、白いワイシャツに押し付けるようにして密着しているのだった。
そんな、ありえないような衝撃的な事実に直面してしまった私は、次の瞬間には、
「ギャァ―――!!!」
という静寂だった空間をつんざくような大きな大きな叫び声をあげていて。
……まったく、色気もへったくれもあったもんじゃなかった。
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