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episoudo:15
#4
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一通り話し終えた私たちが談話室を出て、エレベーターの方へ向かって歩いていると。
ちょうど今、到着したばかりのエレベーターから出てきた車椅子の女性から相川さんが、
「あれぇ? うそっ、相川先輩?」
そう呼び止められて。相川さんと一緒に居た私も当然、その女性と対面することになるわけで……。
私の瞳に映り込んできたその女性は、色素が薄いのか、透けるような白い肌をしていて、均整のとれた上品な顔立ちをしている。
黒いストレートの肩までの綺麗な髪を微かに揺らしながら、柔らかく笑う笑顔が印象的な、とても綺麗な大人の女性だった。
「……あ、えっ!? 咲ちゃん?」
相川さんの取って付けたような、大根役者みたいなセリフを聞きながら、この女性が『咲さん』なのだと知ることになったのだが……。
何故か私は、妙な胸騒ぎのようなものを感じてしまった。
それに加えて、さっき、私と話していた時とは、明らかに違う態度の相川さん。
どうやら、また、いつもの化けの皮を被っているらしい……。
「咲ちゃん、同じ髪型のせいかな? あの頃と全然変わんないから驚いたよ。いや、あの頃より、もっと輝きが増したんじゃないかなぁ? 磨きがかかったお陰で、眩しくて眩しくて」
ハハハッなんていって笑っちゃってるし。
……よくもまぁ、そんな歯の浮くようなセリフが湧水のごとく湧いて出てくるもんだなぁ、と感心してしまうほどだ。
「そういう相川先輩こそ。全然、変わってないですね? あの頃も、『そういうこと言われると恥ずかしいからやめて下さい』って、何度も言ってたなぁ……って思い出したじゃないですかぁ」
どうやら、相川さんは、昔から、化けの皮を被っていたらしい。
そんなに長い間被ってるんだったら、そろそろ剥げてくれてもいいのになぁ……。
あっ、もしかして、もうカツラだったりして……。
なんてことを考えていた私が、咲さんとの昔話に花を咲かせ続ける相川さんの後頭部に、こっそりと目をやって、呪いをかけかけた、ちょうどその時。
「あ、紹介が遅くなってごめんね? こちらは、松岡の部下で、黒木愛さん。こちらは、松岡の幼馴染の青木咲ちゃん」
相川さんの声によって阻止されてしまい。
チッと心の中で舌打ちをした私は、二人に向き直ってペコリと丁寧に頭を下げてから、咲さんと初めて言葉を交わすことになった。
「そっかぁ。直ちゃんの会社の方かぁ……。スーツ姿の直ちゃんなんて見たことないから、想像がつかないなぁ……」
フフフッと何かを思い出したのか、零れた微笑がとっても綺麗で、思わず見惚れそうになったけど。
「なんか、七五三の時の、袴姿の直ちゃんのこと思い出しちゃって。ごめんなさい」
直樹のことだろうとは、話の流れで分かってはいた筈なのに。
咲さんの口から直接それを聞いてしまった途端、モヤモヤとしたよく分からないものが浮かび上がってきて。
それが嫉妬だということに気付いた時には、もう咲さんとは別れた後で……。
幼馴染の咲さんにまで嫉妬してしまった自分が、幼い子供みたいに思えてきて。
自分よりも大人っぽい咲さんと比べてしまうけど、そんなこと比べるまでもなくって。
誰が見ても、どう考えたって、咲さんの方が大人なわけで。
それを思い知って、それでまた落ち込んで、そんな堂々巡りをする羽目になってしまった。
ちょうど今、到着したばかりのエレベーターから出てきた車椅子の女性から相川さんが、
「あれぇ? うそっ、相川先輩?」
そう呼び止められて。相川さんと一緒に居た私も当然、その女性と対面することになるわけで……。
私の瞳に映り込んできたその女性は、色素が薄いのか、透けるような白い肌をしていて、均整のとれた上品な顔立ちをしている。
黒いストレートの肩までの綺麗な髪を微かに揺らしながら、柔らかく笑う笑顔が印象的な、とても綺麗な大人の女性だった。
「……あ、えっ!? 咲ちゃん?」
相川さんの取って付けたような、大根役者みたいなセリフを聞きながら、この女性が『咲さん』なのだと知ることになったのだが……。
何故か私は、妙な胸騒ぎのようなものを感じてしまった。
それに加えて、さっき、私と話していた時とは、明らかに違う態度の相川さん。
どうやら、また、いつもの化けの皮を被っているらしい……。
「咲ちゃん、同じ髪型のせいかな? あの頃と全然変わんないから驚いたよ。いや、あの頃より、もっと輝きが増したんじゃないかなぁ? 磨きがかかったお陰で、眩しくて眩しくて」
ハハハッなんていって笑っちゃってるし。
……よくもまぁ、そんな歯の浮くようなセリフが湧水のごとく湧いて出てくるもんだなぁ、と感心してしまうほどだ。
「そういう相川先輩こそ。全然、変わってないですね? あの頃も、『そういうこと言われると恥ずかしいからやめて下さい』って、何度も言ってたなぁ……って思い出したじゃないですかぁ」
どうやら、相川さんは、昔から、化けの皮を被っていたらしい。
そんなに長い間被ってるんだったら、そろそろ剥げてくれてもいいのになぁ……。
あっ、もしかして、もうカツラだったりして……。
なんてことを考えていた私が、咲さんとの昔話に花を咲かせ続ける相川さんの後頭部に、こっそりと目をやって、呪いをかけかけた、ちょうどその時。
「あ、紹介が遅くなってごめんね? こちらは、松岡の部下で、黒木愛さん。こちらは、松岡の幼馴染の青木咲ちゃん」
相川さんの声によって阻止されてしまい。
チッと心の中で舌打ちをした私は、二人に向き直ってペコリと丁寧に頭を下げてから、咲さんと初めて言葉を交わすことになった。
「そっかぁ。直ちゃんの会社の方かぁ……。スーツ姿の直ちゃんなんて見たことないから、想像がつかないなぁ……」
フフフッと何かを思い出したのか、零れた微笑がとっても綺麗で、思わず見惚れそうになったけど。
「なんか、七五三の時の、袴姿の直ちゃんのこと思い出しちゃって。ごめんなさい」
直樹のことだろうとは、話の流れで分かってはいた筈なのに。
咲さんの口から直接それを聞いてしまった途端、モヤモヤとしたよく分からないものが浮かび上がってきて。
それが嫉妬だということに気付いた時には、もう咲さんとは別れた後で……。
幼馴染の咲さんにまで嫉妬してしまった自分が、幼い子供みたいに思えてきて。
自分よりも大人っぽい咲さんと比べてしまうけど、そんなこと比べるまでもなくって。
誰が見ても、どう考えたって、咲さんの方が大人なわけで。
それを思い知って、それでまた落ち込んで、そんな堂々巡りをする羽目になってしまった。
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