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episoudo:8
#2
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「ごめん。ちょっと考え事してた」
そう言った俺の言葉を聞いた黒木は、腕の中で、今度は不機嫌そうに綺麗に整えられてる眉を吊り上げ、さっきよりも唇をツンと尖らせた。
きっと、自分と居るのに、考え事をしてたなんて言う俺のことをかなり怒ってしまっているんだろう。
けど、その裏を返せば、それだけ俺のことを好きなんだってことを表してる訳で。
そう思うだけで、黒木への言いようのない愛おしさがこみ上げる……。
黒木のおかげで、単純で馬鹿などこにでも転がっている男に成り下がってしまってる俺は、また気持ちがフワフワと地に足がつかずに舞い上がってしまっている。
――なぁ、黒木? お前は全然気づいちゃいねぇんだろうけど……。
俺は、お前の行動や言葉の一つに、こうやって振り回されていて、それも良いかなんて思ってしまってるんだぞ……。
それくらいお前は、俺にとって大事な愛おしい存在になってるんだぞ……。
俺は、自分の胸へと強く抱き寄せている黒木に言葉で告げる代わりに、ソっと優しくその柔らかな甘い唇にくちづけた。
俺が黒木のその柔らかな甘い唇を味わうこと数秒……。
閉じ込めた腕の中で、いつものごとくキスに蕩けて甘い吐息を零し始めた黒木が、蕩けかけてた筈の艶っぽい顔と眉を急に顰めて歪ませたかと思うと、俺の胸に両手をついて、必死に突っ張るようにして強く押し返してきた。
「……ちょっ……ヤダッ! 誤魔化さないでっ!」
どうも、黒木のことを怒らせた俺がキスで誤魔化そうとしていると思ったらしい。
怒って息巻いてる黒木の様子に焦った俺は、なんとかしてその誤解を解きたくて、フワフワと浮ついてた頭をなんとか切り替えさせた。
切り替えたおかげで、僅かに冷静さを取り戻した頭をフル回転させて、
「ちげーよ。誤魔化そうとなんかしてねぇよ。チャラ男に、俺が……お前にキス以上のことをしないって、お前が不安がってるって聞いて、気になって……。ちょっとそのこと考えてた」
そうしてやっと口から出たモノは、黒木にチャラ男から聞いたってことを自分からバラしてしまってるモノで。
言ってしまった後になってやっと、自分がどれだけ焦ってしまっていたかってことに気づいた俺は、言いようのない酷い羞恥に襲われることとなった。
そんな、間抜けでカッコ悪い俺の腕の中では、きっと俺と同じように羞恥に襲われているであろう黒木が。
首から上を湯気が上がるほど真っ赤にさせて、口を忙しなく金魚のごとくパクパクさせると、まるで凍りついたようにフリーズしてしまっている。
黒木と出逢う前の俺なら……
今よりはもっと格好良くスマートに立ち回れていただろうと思うのに――。
どうも俺は、自分で思っているよりも――黒木にどっぷりとのめり込んでしまっているらしい……。
まぁ、でも、バラしてしまったもんはしょうがない。
こんなの俺らしくもねぇし、スッゲー格好悪いってことは自分でもよーく解ってる。
けどそんなことに、イチイチなりふり構ってるような余裕なんてない。
今は、黒木のことが何よりも一番大事なんだから……。
酷い羞恥に襲われていた情けねぇ俺は、改めて黒木が自分にとってどんなに大事な存在であるかを思い知らされた。
そんな俺は、自分の中のプライドをかなぐり捨てて、腕の中で未だフリーズしてしまってる黒木の身体を、さっきよりもシッカリと自分から離れてしまわないように……
僅かな隙さえもできたりしないよう強く引き寄せて。
黒木のその耳元へそっと顔を擦り寄せてから、
「不安にさせて、ゴメンな。けど、信じてほしいんだ。俺は、お前のこと、大事にしたいからキス以上のことをしなかっただけで……。
お前に、女としての魅力を感じてなかった訳じゃない。いつも、お前にもっと触れたいって思ってた。……けど、触れてしまったら、自分を抑えられなくなりそうで……。お前を傷つけてしまいそうで、情けねぇくらい怖かったんだ」
黒木のことを愛おしいと想う――俺の切ないほどに熱いこの想いが、黒木に少しでも伝わるように縋るような想いで。
願いながら何もかもを曝《さら》け出した。
一方の黒木はというと……。
驚いているのか……
何かに弾かれたようにガバッと顔を上げてきて、滑稽なほど真剣な表情をしているだろう俺のことを、ジーッと正面からうかがうような眼差しと言葉を向けてきた。
「……ホ、ホントに?」
俺の言ったことが本当のことなのかどうかを確かめるために、ジーッと俺のことを見つめ続けている黒木の表情が、少しずつ不安げなものへと変わってゆく。
それなのに、俺は黒木の問にすぐには応えてやることができないでいた。
自分でも呆れ果てるくらいに、黒木にベタボレ状態のどうしようもない俺は、確かに黒木をそうさせているのが俺なんだと思うと。
ただそれだけで、胸の奥の方がほっこりとしてしまって、じんわりと俺の心を満たしていく幸福感に酔いしれることしかできなくて。
きっと、時間にすれば、ホンの数秒という短い時間だったろうと思う。
別に、勿体ぶってる訳じゃねぇけど……。
好きな女にこんなにも想ってもらえてるという喜びを噛み締めさせてもらった俺は、黒木へ向けてとびきりの優しい微笑みを向けると、
「あぁ、ホントだよ。不安にさせて、ゴメンな」
なんて、自分でも驚くほどの甘く優しい声で囁きながら、黒木の頭を優しくまるで大事なモノを包み込むようにして抱き寄せて、ポンポンと頭を何度もそっと優しく撫で続けた。
そんなどうしようもない俺に、黒木は何度も頭を左右に振りつつ、俺の背中へと両手をゆっくりと回して抱きついてくる。
そう言った俺の言葉を聞いた黒木は、腕の中で、今度は不機嫌そうに綺麗に整えられてる眉を吊り上げ、さっきよりも唇をツンと尖らせた。
きっと、自分と居るのに、考え事をしてたなんて言う俺のことをかなり怒ってしまっているんだろう。
けど、その裏を返せば、それだけ俺のことを好きなんだってことを表してる訳で。
そう思うだけで、黒木への言いようのない愛おしさがこみ上げる……。
黒木のおかげで、単純で馬鹿などこにでも転がっている男に成り下がってしまってる俺は、また気持ちがフワフワと地に足がつかずに舞い上がってしまっている。
――なぁ、黒木? お前は全然気づいちゃいねぇんだろうけど……。
俺は、お前の行動や言葉の一つに、こうやって振り回されていて、それも良いかなんて思ってしまってるんだぞ……。
それくらいお前は、俺にとって大事な愛おしい存在になってるんだぞ……。
俺は、自分の胸へと強く抱き寄せている黒木に言葉で告げる代わりに、ソっと優しくその柔らかな甘い唇にくちづけた。
俺が黒木のその柔らかな甘い唇を味わうこと数秒……。
閉じ込めた腕の中で、いつものごとくキスに蕩けて甘い吐息を零し始めた黒木が、蕩けかけてた筈の艶っぽい顔と眉を急に顰めて歪ませたかと思うと、俺の胸に両手をついて、必死に突っ張るようにして強く押し返してきた。
「……ちょっ……ヤダッ! 誤魔化さないでっ!」
どうも、黒木のことを怒らせた俺がキスで誤魔化そうとしていると思ったらしい。
怒って息巻いてる黒木の様子に焦った俺は、なんとかしてその誤解を解きたくて、フワフワと浮ついてた頭をなんとか切り替えさせた。
切り替えたおかげで、僅かに冷静さを取り戻した頭をフル回転させて、
「ちげーよ。誤魔化そうとなんかしてねぇよ。チャラ男に、俺が……お前にキス以上のことをしないって、お前が不安がってるって聞いて、気になって……。ちょっとそのこと考えてた」
そうしてやっと口から出たモノは、黒木にチャラ男から聞いたってことを自分からバラしてしまってるモノで。
言ってしまった後になってやっと、自分がどれだけ焦ってしまっていたかってことに気づいた俺は、言いようのない酷い羞恥に襲われることとなった。
そんな、間抜けでカッコ悪い俺の腕の中では、きっと俺と同じように羞恥に襲われているであろう黒木が。
首から上を湯気が上がるほど真っ赤にさせて、口を忙しなく金魚のごとくパクパクさせると、まるで凍りついたようにフリーズしてしまっている。
黒木と出逢う前の俺なら……
今よりはもっと格好良くスマートに立ち回れていただろうと思うのに――。
どうも俺は、自分で思っているよりも――黒木にどっぷりとのめり込んでしまっているらしい……。
まぁ、でも、バラしてしまったもんはしょうがない。
こんなの俺らしくもねぇし、スッゲー格好悪いってことは自分でもよーく解ってる。
けどそんなことに、イチイチなりふり構ってるような余裕なんてない。
今は、黒木のことが何よりも一番大事なんだから……。
酷い羞恥に襲われていた情けねぇ俺は、改めて黒木が自分にとってどんなに大事な存在であるかを思い知らされた。
そんな俺は、自分の中のプライドをかなぐり捨てて、腕の中で未だフリーズしてしまってる黒木の身体を、さっきよりもシッカリと自分から離れてしまわないように……
僅かな隙さえもできたりしないよう強く引き寄せて。
黒木のその耳元へそっと顔を擦り寄せてから、
「不安にさせて、ゴメンな。けど、信じてほしいんだ。俺は、お前のこと、大事にしたいからキス以上のことをしなかっただけで……。
お前に、女としての魅力を感じてなかった訳じゃない。いつも、お前にもっと触れたいって思ってた。……けど、触れてしまったら、自分を抑えられなくなりそうで……。お前を傷つけてしまいそうで、情けねぇくらい怖かったんだ」
黒木のことを愛おしいと想う――俺の切ないほどに熱いこの想いが、黒木に少しでも伝わるように縋るような想いで。
願いながら何もかもを曝《さら》け出した。
一方の黒木はというと……。
驚いているのか……
何かに弾かれたようにガバッと顔を上げてきて、滑稽なほど真剣な表情をしているだろう俺のことを、ジーッと正面からうかがうような眼差しと言葉を向けてきた。
「……ホ、ホントに?」
俺の言ったことが本当のことなのかどうかを確かめるために、ジーッと俺のことを見つめ続けている黒木の表情が、少しずつ不安げなものへと変わってゆく。
それなのに、俺は黒木の問にすぐには応えてやることができないでいた。
自分でも呆れ果てるくらいに、黒木にベタボレ状態のどうしようもない俺は、確かに黒木をそうさせているのが俺なんだと思うと。
ただそれだけで、胸の奥の方がほっこりとしてしまって、じんわりと俺の心を満たしていく幸福感に酔いしれることしかできなくて。
きっと、時間にすれば、ホンの数秒という短い時間だったろうと思う。
別に、勿体ぶってる訳じゃねぇけど……。
好きな女にこんなにも想ってもらえてるという喜びを噛み締めさせてもらった俺は、黒木へ向けてとびきりの優しい微笑みを向けると、
「あぁ、ホントだよ。不安にさせて、ゴメンな」
なんて、自分でも驚くほどの甘く優しい声で囁きながら、黒木の頭を優しくまるで大事なモノを包み込むようにして抱き寄せて、ポンポンと頭を何度もそっと優しく撫で続けた。
そんなどうしようもない俺に、黒木は何度も頭を左右に振りつつ、俺の背中へと両手をゆっくりと回して抱きついてくる。
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