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episoudo:6
#3
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……はぁ!?
黒木の呟きを聞いた俺は、どうしてそんなふうに黒木が思ったのか意味が掴めなくて、ただあんぐりと口を半開きにして眉を顰めた。
でも確かに、言われてみれば、ここに俺が居るって事自体が黒木にしてみれば。
からかわれている、そう取れなくもないわけで。
数秒後に、この状況を黒木の立場に立って冷静に考えて、その意味をようやく理解した俺は、黒木への反応が遅くなってしまった。
そんな俺の、一瞬の隙をついた黒木は、俺の腕を勢いよく払いのけると、そのまますり抜けていこうとする。
「……ちょっと待てよっ! お前をからかってなんかねぇよ……。俺は、お前の友人の舞ちゃんにお前のこと頼まれたっていうチャラ男に無理やり連れて来られただけで……。たまたま見かけたお前が泣いてたから、放っておけなくて」
黒木の腕を掴んで慌てて引き止めれば。
「主任は私の上司だから、部下の私のことが放っておけなかったんですよね? もう、良いから放っておいてください。ついでに、さっき私が言ったことも忘れて下さい。主任にとったら、私の気持ちなんか迷惑でしかないでしょうしっ!」
黒木は、俺の言葉を遮ると、俺の手を思いきり振り払いながら、震えた声を絞りだすようにして強い口調で言い切った。
俺の言った言葉を勝手に変換して解釈すると、
私、帰りますっ!
涙で濡れた瞳で俺をキツく睨みながら吐き捨てるようにそう言うと、今度こそ俺の腕を振り払って帰ろうとする黒木。
俺は、なんとかして、黒木との間で生じてしまった誤解を解きたくて。
帰ろうとする黒木の身体を強く引き寄せて腕の中に閉じ込めたまま、未だ信じられないって声を出す黒木に、なりふり構わず必死になって訴え続けた。
「お前の気持ちを迷惑だってっ!? 勝手に決めつけてんじゃねぇよっ! この前、お前に『セクハラ上司』って言われて、お前を好きだって気持ちに気付いて以来、ずっと、お前に嫌われたと思ってた。それから今まで、俺が一体どんな想いでいたか解るか?
もう、お前のこと諦めようって思ってた。せめて上司として見守ろうって。けど、お前の口から、さっき俺のこと好きだって直接聞いて、どんなに嬉しかったと思ってんだよ? それを今更、忘れろだ!? ふざけんなっ!! お前の言葉、何があっても絶対に忘れたりしねぇからなっ! 俺は、お前のこと好きだから、もう、離さない!
解ったら返事しろよ!? おい、黒木?」
「……ウソ」
「ウソじゃねぇよっ! 信じられないんだったら、お前が信じるまで何度でも言ってやる! 俺は、黒木愛のことが好きだっ!」
一瞬、俺の腕の中で捕らえている黒木の動きが止まった。
その後何かを口にした黒木の声は、俺の胸に強く押し付けているからか、くぐもっていたため、間近にいる俺にはハッキリとは聞き取れなくて。
「……ぁ……もす、……き、れ、しゅ……」
そのせいで、黒木が俺に、一体何を言ってるの解からなくて。
「……ああっ!?」
ついさっきまで、黒木への想いを必死になって訴えかけていた俺は、息が上がって、肩を上下させながら、荒い呼吸を整えることもできないままに聞き返したため、苛立っているような声色になってしまった。
「だから、私も主任のことが好きだって言ったんですってばっ! 解ったら早く離してくださいっ!」
その所為か、俺の声を聞いた黒木は俺の胸に手を当て強く押し離すように突っぱねると、俺へと向けて放った声色も同じように苛立ったモノが投げられて。
俺も黒木も、段々ムキになってきて、
「はぁ!? 誰が離すかっ!離しちまったら、お前帰っちまうじゃねぇかよっ!」
「そんなの決まってるじゃないですか!? こんな公衆の面前で、好きだなんて何度も言われたら恥ずかしいからもうやめて下さいっ!」
あの涙は一体なんだったんだ? てな感じで、スッカリいつもの調子に戻った黒木と暫く言い合うこととなった。
黒木の呟きを聞いた俺は、どうしてそんなふうに黒木が思ったのか意味が掴めなくて、ただあんぐりと口を半開きにして眉を顰めた。
でも確かに、言われてみれば、ここに俺が居るって事自体が黒木にしてみれば。
からかわれている、そう取れなくもないわけで。
数秒後に、この状況を黒木の立場に立って冷静に考えて、その意味をようやく理解した俺は、黒木への反応が遅くなってしまった。
そんな俺の、一瞬の隙をついた黒木は、俺の腕を勢いよく払いのけると、そのまますり抜けていこうとする。
「……ちょっと待てよっ! お前をからかってなんかねぇよ……。俺は、お前の友人の舞ちゃんにお前のこと頼まれたっていうチャラ男に無理やり連れて来られただけで……。たまたま見かけたお前が泣いてたから、放っておけなくて」
黒木の腕を掴んで慌てて引き止めれば。
「主任は私の上司だから、部下の私のことが放っておけなかったんですよね? もう、良いから放っておいてください。ついでに、さっき私が言ったことも忘れて下さい。主任にとったら、私の気持ちなんか迷惑でしかないでしょうしっ!」
黒木は、俺の言葉を遮ると、俺の手を思いきり振り払いながら、震えた声を絞りだすようにして強い口調で言い切った。
俺の言った言葉を勝手に変換して解釈すると、
私、帰りますっ!
涙で濡れた瞳で俺をキツく睨みながら吐き捨てるようにそう言うと、今度こそ俺の腕を振り払って帰ろうとする黒木。
俺は、なんとかして、黒木との間で生じてしまった誤解を解きたくて。
帰ろうとする黒木の身体を強く引き寄せて腕の中に閉じ込めたまま、未だ信じられないって声を出す黒木に、なりふり構わず必死になって訴え続けた。
「お前の気持ちを迷惑だってっ!? 勝手に決めつけてんじゃねぇよっ! この前、お前に『セクハラ上司』って言われて、お前を好きだって気持ちに気付いて以来、ずっと、お前に嫌われたと思ってた。それから今まで、俺が一体どんな想いでいたか解るか?
もう、お前のこと諦めようって思ってた。せめて上司として見守ろうって。けど、お前の口から、さっき俺のこと好きだって直接聞いて、どんなに嬉しかったと思ってんだよ? それを今更、忘れろだ!? ふざけんなっ!! お前の言葉、何があっても絶対に忘れたりしねぇからなっ! 俺は、お前のこと好きだから、もう、離さない!
解ったら返事しろよ!? おい、黒木?」
「……ウソ」
「ウソじゃねぇよっ! 信じられないんだったら、お前が信じるまで何度でも言ってやる! 俺は、黒木愛のことが好きだっ!」
一瞬、俺の腕の中で捕らえている黒木の動きが止まった。
その後何かを口にした黒木の声は、俺の胸に強く押し付けているからか、くぐもっていたため、間近にいる俺にはハッキリとは聞き取れなくて。
「……ぁ……もす、……き、れ、しゅ……」
そのせいで、黒木が俺に、一体何を言ってるの解からなくて。
「……ああっ!?」
ついさっきまで、黒木への想いを必死になって訴えかけていた俺は、息が上がって、肩を上下させながら、荒い呼吸を整えることもできないままに聞き返したため、苛立っているような声色になってしまった。
「だから、私も主任のことが好きだって言ったんですってばっ! 解ったら早く離してくださいっ!」
その所為か、俺の声を聞いた黒木は俺の胸に手を当て強く押し離すように突っぱねると、俺へと向けて放った声色も同じように苛立ったモノが投げられて。
俺も黒木も、段々ムキになってきて、
「はぁ!? 誰が離すかっ!離しちまったら、お前帰っちまうじゃねぇかよっ!」
「そんなの決まってるじゃないですか!? こんな公衆の面前で、好きだなんて何度も言われたら恥ずかしいからもうやめて下さいっ!」
あの涙は一体なんだったんだ? てな感じで、スッカリいつもの調子に戻った黒木と暫く言い合うこととなった。
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