同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。

羽村美海

文字の大きさ
上 下
19 / 39

微睡みの中の着信 #5

しおりを挟む

 それからは、小春日和のあたたかな陽光に満たされた広い寝室のベッドでイチャイチャとじゃれないながら、お互いの両親への挨拶の日取りや、これから結婚にむけての話で盛り上がっていた。

 窪塚のご両親は、もう既に大賛成なのでなんの問題もないが、気がかりなのは、極度の心配性である私の父のことだ。

 といっても、この二年間、私だけでなく、母や職場のトップであり、神の手である窪塚の父親とも旧知の仲である譲おじさんがことあるごとにフォローしてくれていたようで、父の窪塚に対する印象も幾分良くはなっているようだけれど。

 お泊りを許されている私が不在となる週末が近づくと、父は毎回シュンとしてしまうので、嫁ぐとなると、どうなることやら。

 少々心配ではあるものの、挨拶の日取りは来月の私の誕生日である二十三日を目前に控えた十九日の日曜日に決行することに決めた。

 そして結婚式は来年の春を目指そうということになったが、お互い形式的なことには拘っていないので、お互いの両親の意向に沿って決めようということにもなって、昨日まで漠然としか思い描いていなかった、私たちが歩んでいく未来が一気に現実味を帯びてくる。

 幸せ一色に包まれている私たちの話題は尽きることはなく、結婚後の仕事のことや、新居のこと、今は結婚式の衣装について話しているところだ。

 ベッドにごろんと横になっている窪塚に腕枕されている私は、ずっとニコニコしっぱなしだった。

 無論、窪塚も私と同じで、とっても嬉しそうにずっと笑顔の花を咲かせている。

 ーーあー幸せだなぁ。こんなにも幸せでいいのかなぁ。

 ふと暇さえあれば、窪塚の隣でそんなことばかり思ってしまうのだった。

 そんな感じで窪塚と一緒にタブレットで、結婚情報雑誌の公式ホームページで紹介されている式場の画像を眺めていると、画面に映っていたウェディングドレス姿の女性に目をとめた窪塚が急に何を思ったのか、ニヤニヤしながら冗談めかしてくる。

「鈴のウェディングドレス姿、メチャクチャ綺麗なんだろうなぁ。あー、速く脱がして~」
「////ーーもう! ウェディングドレス着たときのこと想像してロマンチックに浸ってたのに。圭ってば、もう知らないッ!」

 お蔭で、終始夢見る乙女モードでアレコレ思い浮かべていた私は、盛大にムッとしてしまうのだった。

「おいおい、そんなに怒るなって。鈴にとってウェディングドレスが憧れなのと一緒で、男にとってもロマンなんだからさぁ」
「何がロマンよ。圭のドスケベ」

 それに対して窪塚からの返答がこれまたふざけたものだったために、私は、ますます唇を尖らせ猛反撃に出るが、本気で怒っているわけではない。

 窪塚もそのことを察してくれているので、なんやかんや言いあいつつも、イチャついているだけだ。

「そんなこと言って、ドスケベの俺のことも好きなクセに」
「嫌いです~。フンだ」
「素直じゃないな~」
「あっ、ちょっと、なにすーーギャッ!? ヤダ。擽ったい~」
「何々? 聞こえね~な~」
「あっ、ちょっとー!」

 言葉だけの応戦だったのが、いつしか窪塚が擽り攻撃を開始したことで、しばらくの間二人仲良く擽りあいっこに興じていた。

 一頻り擽りあいっこに興じた後、いつしか見つめあい、微笑みあっていて、互いの唇を啄みあいっこしているうちに、やがて本格的なキスへと移り変わり、窪塚との甘やかで幸せなキスに酔いしれていたのだが。

 そこに、あたかも私たちの邪魔でもするかのように、サイドボードに置いてあった窪塚のスマートフォンから着信を知らせる賑やかな音色が響き渡った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

独占欲強めな極上エリートに甘く抱き尽くされました

紡木さぼ
恋愛
旧題:婚約破棄されたワケアリ物件だと思っていた会社の先輩が、実は超優良物件でどろどろに溺愛されてしまう社畜の話 平凡な社畜OLの藤井由奈(ふじいゆな)が残業に勤しんでいると、5年付き合った婚約者と破談になったとの噂があるハイスペ先輩柚木紘人(ゆのきひろと)に声をかけられた。 サシ飲みを経て「会社の先輩後輩」から「飲み仲間」へと昇格し、飲み会中に甘い空気が漂い始める。 恋愛がご無沙汰だった由奈は次第に紘人に心惹かれていき、紘人もまた由奈を可愛がっているようで…… 元カノとはどうして別れたの?社内恋愛は面倒?紘人は私のことどう思ってる? 社会人ならではのじれったい片思いの果てに晴れて恋人同士になった2人。 「俺、めちゃくちゃ独占欲強いし、ずっと由奈のこと抱き尽くしたいって思ってた」 ハイスペなのは仕事だけではなく、彼のお家で、オフィスで、旅行先で、どろどろに愛されてしまう。 仕事中はあんなに冷静なのに、由奈のことになると少し甘えん坊になってしまう、紘人とらぶらぶ、元カノの登場でハラハラ。 ざまぁ相手は紘人の元カノです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 ★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★ ☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆ ※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。  お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。 ※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。 書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。 ――――――――――――――――――― ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。 傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。 ―――なのに! その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!? 恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆ 「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」 *・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・* ▶Attention ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

処理中です...