同期ドクターの不埒な純愛ラプソディ。

羽村美海

文字の大きさ
上 下
10 / 39

久方ぶりの甘い夜 #3 ✱

しおりを挟む

 とことん攻め立ててくる窪塚によってもたらされる強烈な快感に、辛うじて保っていた意識が今にも途絶えそうだ。

 いよいよ限界なんだと思い知る。

「……もっ、ダメぇ」

 余裕なく言葉を紡ぎつつ。

 ーーやっと楽になれる。

 ゴールが近いのだと、安堵しかけた時のことだ。

 容赦なく攻め立てていた窪塚の愛撫がどうしたことか突然ピタリと停止してしまったのは。

 おそらく焦らそうとしているに違いない。

 焦らしに焦らして、先ほどの宣言通り、私が素直に窪塚自身を欲しがるように、とことんまで苛め抜こうとしているのだろう。

 何故なら、いつもなら私の限界を的確に見極めて、そろそろ意地悪な言葉でお伺いを立ててきてもよさそうな頃合いなのに、そんな素振りが微塵もないからだ。

 それどころか窪塚は、膣内が蕩けてしまっているのかと思うくらいに、愛蜜で大洪水を起こしてしまっている秘裂から、クチャリと厭らしい水音を立てつつ自身の指をあっさりと引き抜いてしまう。

 ーーえ? なんで?

 首にしがみついたまま呆けている私の目の前で、窪塚はこれ見よがしに、自身の指に絡みついて厭らしく艶めく愛蜜を丁寧に舌で舐りとると、意地の悪い声音で囁きかけてくる。

「鈴、どうしたんだよ? そんな物欲しそうな顔して。もしかして、俺にもっと苛めて欲しかったのか?」

 容赦ない言葉を突きつけてきた窪塚の端正な顔がえらく妖艶で、薄くて形のいい唇には、怖いくらいに綺麗な冷たい微笑がうっすらと浮かべられている。

 思わず息を呑み、喉を鳴らしてしまった私は視線を絡めとられたように一瞬たりとも目が離せない。

 そんな私の視界の片隅で何かが煌めいた。

 おそらくそれは欲情にまみれて獣と化した窪塚の攻め立ての所為で幾度となく流したものと同じ性的な涙だったに違いない。

 ようやく絶頂を迎えて楽になれると思っていた当てが外れて、悲しかったのか、落胆したのか、そんなことは、自分でもよくはわからないが、窪塚の言葉通り、きっとそれくらいのものだったんだろうと思う。

 けれどこういうセックスの時以外に関しては、窪塚はとっても優しくて、この二年間というもの、以前同様窪塚の揶揄いに、ムッとした私と冗談半分で言い合ったりすることはあっても、窪塚が本気で怒ったところなど一度として見たことがない。

 いつもいつも窪塚はさり気なく折れてくれていた。

 それについては、結婚を前提に付き合うようになってから知ったことだが。

 彩曰く、驚くことに、光石総合病院で研修医として勤務するようになってからずっと、私に対して『ビッチ』など陰口をたたく者に対して、ことあるごとに性別関係なく厳しく叱責していたらしい。

 けれど私が怒った窪塚のことを目にしたのは、セフレだった頃に同期の加納と現在専攻医となった羽田のくそワンコに対してのみだ。

 私に対しては、相変わらず口だって悪いけど、普段は勿論、こういうセックスの時にも、メチャクチャ優しく気遣ってくれていた。

 だからかもしれない。

 これまでと比較にならないくらい冷たく感じる意地の悪い言葉攻めと、ドSっぷりを遺憾なく発揮してきた窪塚の容赦の欠片もない攻め立てに、自身でも思っている以上に大きな衝撃を受けてしまったのだろう。

 折角、プロポーズしてもらえたのに、久しぶりなのに、どうしてこんなに苛められなきゃいけないのかと。

 眼前でハラハラと涙の雫を流す私の姿を見にした途端、ハッと息を呑んだ窪塚の顔から瞬く間に妖艶さが消え失せ、顔色がみるみる青ざめていく。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

独占欲強めな極上エリートに甘く抱き尽くされました

紡木さぼ
恋愛
旧題:婚約破棄されたワケアリ物件だと思っていた会社の先輩が、実は超優良物件でどろどろに溺愛されてしまう社畜の話 平凡な社畜OLの藤井由奈(ふじいゆな)が残業に勤しんでいると、5年付き合った婚約者と破談になったとの噂があるハイスペ先輩柚木紘人(ゆのきひろと)に声をかけられた。 サシ飲みを経て「会社の先輩後輩」から「飲み仲間」へと昇格し、飲み会中に甘い空気が漂い始める。 恋愛がご無沙汰だった由奈は次第に紘人に心惹かれていき、紘人もまた由奈を可愛がっているようで…… 元カノとはどうして別れたの?社内恋愛は面倒?紘人は私のことどう思ってる? 社会人ならではのじれったい片思いの果てに晴れて恋人同士になった2人。 「俺、めちゃくちゃ独占欲強いし、ずっと由奈のこと抱き尽くしたいって思ってた」 ハイスペなのは仕事だけではなく、彼のお家で、オフィスで、旅行先で、どろどろに愛されてしまう。 仕事中はあんなに冷静なのに、由奈のことになると少し甘えん坊になってしまう、紘人とらぶらぶ、元カノの登場でハラハラ。 ざまぁ相手は紘人の元カノです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 ★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★ ☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆ ※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。  お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。 ※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。 書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。 ――――――――――――――――――― ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。 傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。 ―――なのに! その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!? 恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆ 「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」 *・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・* ▶Attention ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

処理中です...