63 / 101
ヤクザと激甘新婚生活⁉
ヤクザと激甘新婚生活⁉④
しおりを挟む日常とはかけ離れた、レトロな趣ある空間にいるせいだろうか。
上質なキングサイズの大きなベッドにそうっと優しく横たえられた途端、ふわふわと上質な寝心地も相まって、天国にでもいるような心地がする。
そんな美桜の身体に、尊が負担をかけまいとしてか、慎重にゆっくり覆い被さるようにしてのしかかかってくる。
その重みさえも心地よくて、美桜はうっとりしてしまう。
なによりその重みが夢ではなく、確かに現実であのだと証明してくれている。
ーー夢じゃないんだ。本当に尊さんのものになれるんだ。
そう思った瞬間。ちょうど一月前、尊と初めて出逢ってから今日までのことが一気にぶわっと蘇ってくる。
まだ一月しか経っていないなんて思えないほど濃厚な時間だったと思うが、ほんの短い期間でしかない。
けれどこれまで生きてきた人生の中で、一番充実した、幸せなものとなった。
尊とは政略結婚だが正式な夫婦となったのだ。
尊も、自分を必要とする限りは傍に置いてくれると言ってくれた。
命に代えても守り抜いてやるともーー。
感極まってしまった美桜の目尻からあたたかな雫がはらはらと零れ落ちていく。
その感触で、自分が泣いていることに気づいた美桜が手で目元を拭うよりも先に、尊の指先がそうっと優しくなぞるように拭いはじめる。
「……どうした? 怖くなったのか?」
尊の声に弾かれるようにして視線を向けた先には、心なしか不安そうな表情で美桜の様子を窺ってくる尊の漆黒の双眸が待ち受けていた。
いつもは怖いくらいの無表情を決め込んでいて、感情など一切掴めない。
それがちょっと涙を見せたくらいで、尊がこんなにも不安そうにしているなんて、意外でしかなかった。
同時に、いつだったか、ヒサから聞いた言葉が思い出される。
『最近、仕事も立て込んでて寝る間もないと思うんすけど。社長、機嫌もいいし、何かいいことでもあったのかなぁって、思ってたんすけど。姐さんのお陰っすね』
『いやいや、全然違いますよ。社長雰囲気とかも少し変わってきたし、角が取れたっていうか。姐さんが来る前は、声かけるのも、おっかなくて、メチャメチャ勇気いりましたもん』
耳にしたときには、そんなこと信じられなかったし、きっとヒサが気を遣ってくれているのだとばかり思い込んでいた。
だがこれまでのことを思い返してみると、確かにふたりのときとそうでないときとでは 、態度も口調も違っている気がする。
おそらく極道の世界とは無縁だった美桜のことを尊なりに気遣ってくれていたからに違いない。
そうとわかっていても、やはり嬉しいものは嬉しい。
ーー少しは特別に思ってくれているって、都合よく捉えるくらいいいよね。
「やっと尊さんに借りが返せるって思ったら、嬉しくなったんです。これからは夫婦なんだし、私も何でも曝け出しますから、尊さんもーー」
少々気を良くしてしまった美桜が尊に放った言葉は最後まで言い切る前に、端正な相貌を苦しげに歪ませた尊の唇によって、唇もろとも性急に奪われてしまっていた。
「ーーん、んんッ、ふ、ぁ……っ」
先ほどの優しく甘やかなキスとは違い、美桜のなにもかもを奪い尽くすかのような激しいキスに、美桜の思考は次第と薄れていく。
そうして気づいたときには、身も心もなにもかもがトロトロに蕩けており、身に着けていた上品なパステルピンクのシフォンワンピースも上下セットの淡いピンクの下着も、全て取り払われ、尊も美桜も一糸まとわぬ姿で縺れあうようにして抱きあっていた。
0
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。
真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。
地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。
ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。
イラスト提供 千里さま
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした
瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。
家も取り押さえられ、帰る場所もない。
まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。
…そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。
ヤクザの若頭でした。
*この話はフィクションです
現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます
ツッコミたくてイラつく人はお帰りください
またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*
契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!
如月 そら
恋愛
「それなら、いっそ契約婚でもするか?」
そう言った目の前の男は椿美冬の顔を見てふっと余裕のある笑みを浮かべた。
──契約結婚なのだから。
そんな風に思っていたのだけれど。
なんか妙に甘くないですか!?
アパレルメーカー社長の椿美冬とベンチャーキャピタルの副社長、槙野祐輔。
二人の結婚は果たして契約結婚か、溺愛婚か!?
※イラストは玉子様(@tamagokikaku)イラストの無断転載複写は禁止させて頂きます
黒王子の溺愛は続く
如月 そら
恋愛
晴れて婚約した美桜と柾樹のラブラブ生活とは……?
※こちらの作品は『黒王子の溺愛』の続きとなります。お読みになっていない方は先に『黒王子の溺愛』をお読み頂いた方が、よりお楽しみ頂けるかと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる