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鳥籠から出るために
鳥籠から出るために⑱
しおりを挟むますます困惑する美桜の元に、再び尊の声が届く。
「もういいから寝てろ。色々あったし散々喘いだんだ。身体だって辛いだろ」
相変わらずの素っ気ない声音ではあったが、美桜のことを気遣うような優しい言葉だった。
なんだか無性に嬉しくなって、胸までが苦しくなってくる。
そこに、つい先程まで、尊から散々お見舞されていたものと同じく意地の悪い声音が降ってきた。
「まだ物足りないなら、このまま風呂に連れて行くが。どうする?」
今度はたっぷりと含みをもたせた意味深なものだ。
そのことで、とんでもない羞恥に襲われた美桜の意識が完全に逸れていく。
ーー一緒にお風呂だなんて、と、とんでもない……!
「////ーーけ、結構ですッ」
「ふっ、そうか。なら、オコチャマはいい子にして寝てろ」
ーーあっ、またオコチャマって言った。確かにそうだけど。そんな何度も言わなくったって。
途端にムスッとして尊のことを睨んでいると、聞き分けのない小さな子供をあやすように、頭をポンポンされて、美桜は完全にむくれてしまう。
そんな美桜のことをどこか楽しそうに見下ろしている尊が急に長身を屈めてきた。そしてゆったりとした動作で美桜の顔を覗き込んでくる。
その至近距離に驚いて、とっさに瞼を閉ざしてしまった美桜の額には、軽くチュッとキスを降らせた尊の唇のあたたかな感触がした。
吃驚仰天した美桜がパチっと目を見開いたときには、尊はもうバスルームに向かって歩き出していて。尊の背中に描かれている龍の刺青が視界に飛び込んでくる。
その様は、予想していたとおり、とても力強く、とても綺麗だった。
なにより、自分の名前の由来でもある桜が描かれていたことが、どうにも嬉しくて仕方ない。
尊の背中が見えなくなってからも、美桜はそこから視線を外せずにいた。
しばらくして、尊が風呂から上がった頃には、美桜はすっかり眠りこけていた。
きっと色々あったせいで疲れていたのだろう。珍しく、朝まで一度も目覚めることなく熟睡していたようだ。
目覚めた頃には、もうとうに朝陽が昇っているようだった。
障子で覆われた大きな窓からの陽射しに刺激され、目を覚ました美桜は、身体にまとわりつくあたたかな感触に違和感を覚えた。
それが尊の身体だということに気づいたのも束の間。尊が一糸まとわぬ素っ裸だと悟った瞬間。真っ赤になった美桜はその場で凍りついてしまう。
同時に、昨夜、尊にされたことの一部始終が蘇ってくるのだから、堪らない。
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