狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海

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鳥籠から出るために

鳥籠から出るために⑪

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 美桜のぷるんとした唇の柔らかな感触でも味わうかのように、尊の唇が上下を交互に啄んでいく。

 食むように挟んではチュッと艶かしい音色と共に、薄い皮膚の表面を吸引される。

 その動作を幾度となく繰り返されているうち、余りの心地よさに、美桜はうっとりしてしまう。

 誰かを好きになったこともなければ、キスの経験など、もちろんあるはずもなかった。

 目を閉じるタイミングさえもわからなかったのだ。

 ぼんやりと夢現で自分のことを極上のキスで翻弄している尊の端正な相貌を凝視してしまっている。

 今日逢ったばかりの尊と、こうして口づけを交わしているなんて、自分でも信じられない。

 あたかも夢でも見ているような心地だ。

 うっとりするほど艶めいた尊の姿に魅入られてしまっていた美桜の唇が不意に解放された。

「どうした? なにか気になることでもあるのか? それとも、何をされてるか見ておきたい性分なのか?」

 そこに降らされた怪訝そうな尊の低い声音に美桜は目をぱちくりさせる。

 ぼんやりしていたせいで、思考と行動とが伴わなかったのだ。

 尊の言葉はしっかり聞こえていたので、顔を紅潮させつつも、数秒遅れで口を開いた。

「////ーーえ、あっ、あの、違います。その、こういう……ことが……は、初めてで。だから……その」

 だが自分の口から未経験だとは言い出しがたい。自然と言葉は途切れ、徐々に尻すぼみになっていく。

「ああ、なるほどな。どうすればいいかがわからなかったってわけか」

 尊は、すぐに察してくれたようだった。

 けれども、そのことに安堵するような心境ではない。第三者の口から改めて聞いてしまうと、どうにもいたたまれなくなってくる。

 きっとこういうことにも慣れているだろう尊に言わせれば、二十歳になったばかりのオコチャマでしかない自分とは正反対の、大人の女性のほうが好みであるに違いない。

 飽きるまで傍に置いて欲しいだなどと、よくも言えたものだと自分でも思う。

 途端に、尊に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。

「……はい。すみません」

 思わず尊に謝ってしまっていた。

「謝る必要なんてない。むしろ愉しみだ」

 尊から返ってきた言葉を噛み砕くことができない。美桜は首を傾げるしかなかった。

「愉しみ?」

「ああ、仕込み甲斐があるってことだ」

「仕込み……がい?」

 言われた言葉をオウム返しすることしかできない。

 その都度、どことなく嬉しそうに見える尊から返される言葉に、まったく理解が及ばなかったからだ。

 すっかり困惑して心配そうに眉根を寄せてしまっている美桜のことを、ふっと笑みを零した尊が、宥めるように優しく頭を撫でる。

 そうして美桜に言い聞かせるようにして、今までで一番優しい声音で囁きかけてくる。

「心配するな。変なことを強要したりはしない。ただお前に女である悦びをじっくりと味わわせてやるだけだ」

 その声音に美桜が思わず聞き入っているうち、いつしか尊の手は美桜が寛ぎかけていた襟元へと辿り着いていた。

「まずは、こうやって」

 美桜が気づいたときには、言葉を切った尊の手により、ガバッと強引に広げられた合わせ目からは、サラシで包まれた胸が曝け出されてしまっている。

 驚いている間もなく、「邪魔だな」と煩わしそうな呟きを落とした尊に、これまた強引にサラシをずりおろされたことにより、素肌の胸がふるんとまろびでてしまう。

「////ーーキャッ!?」

 たちまち羞恥に塗れ、短い悲鳴を上げた美桜が腕で胸元を隠そうとするのを、やんわりと手で制されてしまった。

 ただでさえ恥ずかしいというのに、尊にまじまじと見下されてしまっている。

 二十歳にしては幼さの残る美桜の童顔とは似ても似つかない、豊満な双丘を前に、尊は至極感心したように口を開く。

「初心なお嬢様は、ずいぶんと女らしい身体をしてるんだな」

 その声を拾った美桜は、これ以上にないくらい全身を赤く染めあげ身悶えるしかなかった。
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