いじわるドクター

羽村美海

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番外編~みんなの愛に包まれて~

#6

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扉を開けた海翔にエスコートされて脚を踏み入れると、


 「二人とも、おめでとう!」 


直ぐに颯介さんの柔らかい笑顔が視界に入ってきた。 


傍のテーブルにはしのさんの写真がそっと飾られていて、颯介さんがしのさんの笑顔に微笑みかけているように見える。


その隣には、彩乃さんと映画監督で旦那さんの須藤《すどう》俊一《しゅんいち》さん。


「海翔は愛想ないけど……。ねぇ? 芽依ちゃんはとってもカワイイでしょ?」 


「いやいや。二人とも良い表情してるじゃないか。 海翔君は君に似て、少しシャイなだけで、良い青年だよ」 


「あら、そうかしら?」 


何やら仲睦まじく寄り添って、とっても楽しそうに語らっている。 


仲の良い夫婦っていうよりも、素敵な大人のカップルのようで、見ていると羨ましいくらいだ……。


そして、その隣には、これまた素敵な美男美女のカップルの姿が視界に入ってきた。


「ホントに芽依ちゃんによく似合ってる。あなたのデザインするドレスってどれも素敵だから迷っちゃったけど、あのドレスにして良かったわ」 


「ありがとう。でも、どんなドレスより、愛菜の方が綺麗だけどな?」 


「ヤダァ、そんなことないわよ」 


何故か照れている愛菜さんは、旦那さんの翔太《しょうた》さんの肩をパシンと叩《はた》いているようだった。 


海翔の隣で海翔の家族に見とれていると、 


「芽依、おめでとう」


懐かしい優しい声が耳に流れ込んできた。


ここに居るはずのない大好きな人の優しい声。 


それは、聞き間違えるはずのないお母さんの声。 


声の方に視線を巡らせば、地元の徳島で暮らしている両親と弟の伊吹《いぶき》の姿がそこにあった。


遠いから来てくれているなんて思わなかった私は、ただただ呆然と三人の姿を眺めることしかできなくて。 


そんな私に、お母さんが 


「式はまだ先になるだろうからって、海翔くんが飛行機のチケットとホテルの手配をしてくれたの。 芽依、良かったね? 優しい人に出逢えて。こうやって大事にして貰えて」 


そう言って抱きしめてくれたお母さんの腕の中で、 涙が溢れて止まらなくなってしまった。 


「ホンマに芽依も母さんに似て泣き虫やな」


「ホンマに。姉ちゃん化粧取れたら、誰か解らんけん、泣くなよな?」 


なんて、お父さんと伊吹がいつものように笑っている声と、海翔の楽しそうな笑い声が一緒に聞こえてくる。 


「うぅ……あり……が…とう」 


私は優しいお母さんの腕の中で一頻《ひとしき》り泣いた。 


まるで、小さい子供に戻ったように……。


だって、泣き続ける私を泣き止ませようと、 何度も優しく背中をトントンッてしてくれるんだけど、どうしようもないくらい、それが凄くあったかくて、凄く優しくて。


もうこうやって甘えることができないんだと思ったら、なんだか急に寂しくなってきて、 涙腺が壊れたみたいに涙が止まってくれないんだもん。 


そんな私に、 お母さんが少しだけ困ったような声で、 


「そんなに泣かなくても……。お嫁に行っても芽依はずっと私とお父さんの子供なのよ? 逢いたくなったらいつでも逢えるんだし、もうそんなに泣かないの。ね?」 


優しく言い聞かせるようにして言ってくれた。 


「うん……」 


小さい子供の頃によくそうしてくれたように……。 



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