いじわるドクター

羽村美海

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episodo:15

#6

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退院してからのことを思い出しながら、受付で帰るための準備を整えていると、気づかないうちに私の直ぐ後ろに来ていた海翔によって、


「何ニヤニヤしてんだよ?」 


「……び、びっくりしたぁ!」 


声を掛けられ驚いていると、海翔がお決まりのように意地悪なことを言ってきた。 



「そんなに驚くことないだろ? また言えないような厭らしいことでも考えてたのかよ?」 


「////」 



そんなこと考えてない……って言いたいのに……。 


海翔お得意の、超が付くほどの至近距離から、綺麗な顔を近づけて、私の顔を覗き込んでくるもんだから、恥ずかしくて堪らなくてなんにも言えなくて……。 



それなのに、真っ赤になって固まってしまっている私のことを、じっと見つめたまんまで、


「そんなに真っ赤になるなよ? 夜になったら、もっと恥ずかしいことしてんのに……。 仕方ねぇから、今夜から芽依に免疫つけるためにも、もっと厭らしいことしないとな?」


なんてことを言ってくる始末。 



私が退院してからというもの、海翔の意地悪の度合いが、どんどんパワーアップしてるような気がするんだけど……。



結婚したらどうなっちゃうか凄く心配になってくるんだけど……。 



でも、海翔は、私が事故に遭う前と変わらず、どんなに意地悪なことを言ってきても、私が本当に嫌だって言うようなことはーー絶対にしてくることはない。 



そして何よりも、私のことを最優先してくれるし、本当にとっても大事にしてくれる。



海翔と一緒に居られるだけで幸せで ーー幸せ過ぎて怖いくらいだ……。



最近、よく思うことがある。 



人を好きになって、好きになった人に好きになって貰える それがどんなに凄いことかって。



海翔には内緒なんだけど、退院する前にリカさんがお見舞いに来てくれた。



事故の日に、勝手な思い込みで一方的に責めたりしてごめんなさい……って謝るために。



でも、海翔のことを好きな気持ちは誰にも負けないし、これからも変わらない……。



あなたがもしあの日みたいに泣いて逃げるようなことがあったら、その時は、遠慮なんてしない。 



どんなことをしてでも海翔のことを振り向かせてみせるから……最後にそう言い残して帰っていった。 



リカさんが本当に海翔のことを好きだっていう気持ちが痛いほど伝わってきた。



海翔と所謂大人の関係だった時の自分の想いと重なって、切なさに押し潰されて胸が苦しくなってしまう程に……。



ほんの僅かな時間だったけれど、リカさんと話したことで、私と海翔が幸せで居られるその影には、誰かのこういう想いがあるんだってことを気づかせて貰った。



事故に遭ってからの私は、何事も悪い方にしか考えることができなくて、辛い現実から目を逸らして逃げ出そうとしたこともあった。 



でも、海翔と出逢って、海翔を好きになって、海翔に好きになって貰えたこの奇跡を ずっと大事にして、海翔と一緒に同じ未来を歩んで生きていきたい……。



これから先の未来でどんなことが待っていようと、変わることなく……。 



今は、やっとそう思えるようになった。 



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