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episodo:14
#3
しおりを挟むねぇ、海翔、私、頭の打ち所が悪かったんじゃないのかな?
まだ、頭も靄《もや》がかかったようにスッキリとしないし。
身体だって鉛のように重くって、自分の思うように動いてはくれないし。
これって、実は、まだ意識が戻ってなくて、 海翔が言ってくれた言葉を真に受けて喜んでたら目が覚めて、さっきのは夢だった…なんてオチが待ってるんじゃないのかな?
でも、確かに、頬を冷たい雫が流れ落ちる感触があって、その雫を自分で拭おうとしてもやっぱり手には力が入んない。
それを、綺麗な海翔の指先が、私の頬をソッと優しく滑るようにして雫を拭い去ってくれる。
凄く優しくて、うっとりしてしまうくらい心地よくって、指が触れたところからあったかいぬくもりが伝わってくる。
夢なんかじゃないんだよね?
信じても良いんだよね?
ううん、海翔のことを信じたい。
海翔との出逢いが特別なものだって信じたい……。
やっと、 そう思うことができた私は、海翔の綺麗な瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「……信じて良いの?」
涙が邪魔をして、その一言を紡ぎ出すのが精一杯だった。
海翔は私の言葉を聞くや否や、私の額に自分の額をくっつけてくると、真っ直ぐに私の瞳の奥を窺うようにして覗き込んでくる。
綺麗な濃いブラウンの瞳から綺麗な雫を零しながら。
「あぁ、信じて欲しい。本当は、あの日、事故のあった日に言うつもりだったんだ。
俺と結婚して欲しいって。
芽依がイヤじゃなかったら、ずっと芽依の傍に居させて欲しい。頼りないかも知れねぇけど、芽依の支えになりたいんだ」
「……私、もう、死んでも良い」
海翔の形の良い唇から紡ぎだされた言葉を聞いた私の口からは、勝手に言葉がポロリと零れ落ちていた。
そしたら、海翔の眉間には深い皺が刻まれて、
「はぁ!? 何、バカなこと言ってんだよっ! 俺がどんなに心配したと思う?
芽依が倒れてんの見たとき、目の前が真っ暗になって、生きた心地しなかったんだからなっ!
冗談でも二度とそんなこと言うなっ!」
至極真剣で悲しそうな、 僅かに怒気を含んだ声が返された。
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