いじわるドクター

羽村美海

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episodo:4

#2

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「お、それ、うちの企画が通ったやつだよな?海老のすり身使ったやつ。

どれどれ……うん、うまいなぁ」


楽しそうに言いながら、

私が食べてるお弁当を覗き込んできた主任が、

あろうことか私がお箸で挟んで食べようとしてた海老だんごを、

私の手を掴んだかと思うと、あっという間にパクリと口に入れてモグモグと咀嚼し始めた。


最後の楽しみにとっておいたのに……。


「あー、それっ。なんで食べちゃうんですかぁ!もう、信じられない。楽しみにしてたのにー」


「お前なぁ、そんなにギャーギャー怒ることないだろう?コーヒーで勘弁しろ。奢ってやるから」


「じゃぁ、カフェオレにしてください」


「はいはい、わかったよ。日下は?何がいい?」


「……え、あぁ、ありがとうございます。私も同じものを…」


急に呼ばれて驚いた優が、

いつになく遠慮がちに言うのを聞きながら、私は残りのお弁当を片付けていた。


主任は私たちに背中を向け、

休憩室の奥にある自販機にコインをじゃらじゃらと投入している。


視線を感じて優を見ると、

ニヤニヤして何か言いたげだったけど、

大体の予想がつくから無視を決め込んだ。


「ほら、カフェオレ2つ。
弁当食ってすぐによくそんな甘いの飲めるな。お前ら舌がおかしんじゃないのかぁ?」


主任がテーブルに紙コップを優と私の前に置いてから、


近くのテーブルの椅子を私の横へガタン…と引きずり寄せて、


ゆっくりと腰を下ろしながら面白そうに言ってくる。


「大きなお世話ですよ。主任、タバコ吸いに来たんじゃないんですか?早く吸わないと休憩時間終わっちゃいますよ」


「お前に言われなくてもわかってんだよ。うるさいやつだなぁ、高岡芽依は。そんなんじゃ男にモテないぞ?なぁ、日下」


「え、あぁ、そんなことないんじゃないですか?最近年上の彼と仲がいいみたいだし。ねえ、芽依」


また、優は、余計なことを……。


「へぇ、物好きがいて良かったなぁ」


「ゲホッ」


「芽依、急ぎすぎだってばぁ」
「お前、なに慌ててんだよ…」


カフェオレを飲んでた私は文句を言おうとして、思いっきり咳き込んでしまい、

二人に突っ込まれ、大笑いされてしまった。



「ゴホッ…、ゴホッ…」


どうも気管に入ってしまったようで、咳が止まらず苦しんでると、


「おいおい、大丈夫なのかよ?まったくお前は落ち着きのないやつだなぁ」


って言って、近くにいる主任が笑いながら私の背中を擦り始めた。


そしたら、


「あ、私、今日、トイレ掃除の当番だったんだ。じゃ、お先に行ってきます!」


なんて、

いかにも棒読みの優が、

私のと自分の空になってるお弁当の容器をゴミ箱に捨ててから、休憩室を出て行こうとしている。


こっそり、

私にだけ見えるように、下手なウインクをして、しかも満面にニッコリと笑みを浮かべて…。


あまりにも露骨過ぎて感心してしまう。


「あぁ、日下、頑張ってなぁ」


「はぁい!」


出る間際に、主任と呑気に言葉を交わしてから出て行ってしまった。


「お前、大丈夫か?涙目になってるじゃねえかよ」


「だ、大丈夫です。どうも、ありがとうございます…」


漸く、落ち着いた私が、

ふっと顔を上げると、主任の顔が思ったよりも至近距離にあって、私の顔を覗き込んでくる。
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