いじわるドクター

羽村美海

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episodo:3

#6

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*芽依side*


「……海翔さん、お弁当って、うな重だったんだ…」


「ん?嫌いなのか?」


私の声に、

心配そうに聞いてくる海翔さん。


それ以上、

元気になってどうするんだろうなんて思ってしまって、急に…恥ずかしくなってきた。


「え、ううん、豪勢だなぁって思っただけ…」


朝、目覚めた時に、明日の予定を聞かれて、

特に予定はないって答えると、

一緒に過ごそうって言われたから、

どうしてもあらぬ方向へ考えが暴走してしまうのを慌てて誤魔化した。


さっきも、

急に抱きしめられて、もしかしてって内心ドキドキしてたら、

ただ話しをしただけだったことに、ほんのちょっとがっかりしてしまったし。


きっと、ただ、食べたかっただけなんだろうし。


「芽依と過ごすから、もっと元気にならないとな」


そう思っていたのに、

サラッと当たり前のように、なんでもないようにそんなことを真顔で言われてしまって…、


途端に、私の顔は全身の血液が一気に駆け巡ってきたんじゃって思うぐらい熱くなってきた。


「どうした?想像したのか?顔が真っ赤になってるぞ。もしかして熱か?」


……そっとしてて欲しいのに、

からかってるだけなのか、本当に心配してるのか、変わらず真顔で、俯いた私の顔を覗き込んできて、額に手を当てようとしてくる。


「海翔さんなんて、知らない!」


なんか、私だけが意識してるのが凄く悔しいから、つい海翔さんに怒った口調で言ってしまった。


実際にそうだからしょうがないのに…。


「……ごめん。お茶淹れるな…」


海翔さんはいつもと同じで無表情だから感情は読み取れないけど、シュンと落ち込んだように見えてしまった。


手も力なく引っ込めて、

私から視線を逸らせて背中を向け、

部屋の隅に備え付けられた流し台まで歩いていって、黙々とお茶の用意を始めちゃったし。



「…海翔さん」


なんか、

そんな海翔さんを見てるのが嫌で、駆け寄って後ろから抱きついてしまった。


「ん?芽依、どうした?」


心配そうに聞いてくる海翔さんの声が頭上から聞こえてくる。


だって、海翔さんが悲しんでるように見えちゃったから、私まで悲しくなったんだもん。


「怒っちゃってごめんなさい。恥ずかしかっただけだから。本当に怒ったんじゃないから」


「…そうか」


前にも思ったけど、


海翔さんって、本当に不器用だね?


もっと、感情を表に出せばいいのに。


海翔さんを見ていると、

無理して感情を抑え込んでいるように見える時がある。


どれぐらい傍に居たら全部見せてもらえるのかな?


私は、海翔さんに抱きついたまま直ぐに離れることができなかった。

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