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#46 狼王子と甘く蕩ける初夜を ⑶ ✱

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 それに対してクリスから返ってきた言葉によって私は大きな衝撃を受けることになる。

「あぁ、ノゾミ。僕だけのノゾミ。わかったよ、すぐに満たしてあげるからね。でも、安心して、さっきは子作りとか言ったけど、まだしばらくはノゾミのことを独り占めしたいから、ちゃんと子種が根付かないようにしておくからね。だから安心して僕のすべてを受け入れて欲しい」

 何故かというとーー。

 別にクリスのことを疑っていた訳ではないが、心のどこかで、クリスは王族だから、自分の後継者となる子供さえ産んでくれたら誰でも良かったんじゃないか。その相手が探し求めていた聖女だっただけで、私じゃなくても良かったんじゃないか。そう思ってしまっていたらしい。

 その証拠に、クリスのこの言葉を耳にした瞬間、心底嬉しかった。

 私の眦からは、愉悦のせいで滲んでいたものとは違った、新たな雫がとめどなく溢れてくる。

 それを目にしたクリスがギョッとしたような表情で私のことを見遣ってきてすぐ、慌てふためいた様子で私のことを抱き起こし案じてくれる。

「ノゾミッ、ごめん。どこが痛むの? 大丈夫? 僕のせいで泣かせたりしてごめんね」

 見るからにシュンとしたクリスにはケモ耳だってあるので、大きなワンコそのものだ。

 ーーあぁ、もう、クリスってば可愛い。

 なんてことを思いながらも、身体はもう限界だと訴えかけてくる。

 一刻も早くクリスを安心させようと、必死に訥々と声を紡ぎ出す。

「うれし……涙……だから。それより……早くぅ。お願いっ」
「そうだったね。僕ももう限界だから、入るね」

 すぐに私に余裕がないことを察してくれたらしいクリスが、組み敷いた私の身体を気遣いながらゆっくりと腰を落とし、ぬちゃっと濡れた音を立てつつ、胎内へグリグリと襞をかき分け肉槍が押し入ってくる。

 ようやく受け入れることのできたクリスの昂りの強大さに、大きな衝撃と愉悦に見舞われ、眼前には星が飛び、半開きになった唇からはあられもない嬌声が飛び出した。

「ひぁぅッ、ーーんっ、んん~~ッ!?」

 クリスは私の身体をふわりと包み込んでくれたままじっと動かずにいてくれる。

「あぁ、ノゾミ。好きだよ。愛してるよ」

 その間も、私の耳元では優しい甘やかな声音で愛を囁きつつ、労るように、頭を撫でたり、至る所に甘やかなキスの雨を降らせてくれている。

 その様子からも、クリスが私のことを大事にしてくれていることが窺える。

 この国に来る前。まだクリスが記憶を失っていたレオンだった頃から、そして今も、クリスは事あるごとに私のことを優しく気遣ってくれていた。

 何かあったとき、いつも傍にいてくれたのも、駆けつけてくれたのも、クリスだった。

 聖女であっても、そうでなくても、クリスは私のことだけを見てくれているって事も知っている。

 私だってそうだ。

 クリスが人であろうと、狼獣人であろううと。王子様であろうと、そうでなかろうと、そんなことは関係ない。

 この世でただ一人、クリストファー・パストゥールという、この人が好きだ。

 私だって、この異世界に、たまたま聖女として召喚されて、転移してきただけで、能力があるといっても普段役に立たないし、私のできることなんてたかがしれている。

 けれどもし何かあった時には、また役に立てるかもしれない。

 私には、聖女の力がある。

 その力で、この幸せをずっと守っていけるかもしれない。

 そういう意味でいえば、私はラッキーなのかもしれない。

 組み敷いた私のことを気遣いながらクリスが緩やかな動きで律動を繰り返し、その都度、甘やかな愉悦が身体を支配してゆく。

 甘やかな愉悦の波間でたゆたいながら、私は、クリスの言動の一つ一つに、イチイチ感激し、これからの未来へ想いを馳せてしまっていた。

 そんななか、悩ましげに呻いたクリスが余裕なく私の身体に覆い被さってくる。

 クリスは私の身体をぎゅうぎゅうに掻き抱き、譫言のように私の名を幾度も紡ぎ出す。

「ノゾミ……っ、ノゾミ。僕の……ノゾミ」

 私もクリスになんとか応えたくて、嬌声の合間、必死にクリスの名を紡ぎ出した。

「あっ、ああっ、んぅ、く、りす、あっ、んぅ、ク、リス……あっ、んぅっ」

 そんな私の下腹部がキューッと切なく疼いて、咥えこんでいるクリス自身を尚もキツく食い締める。

 その動きは、あたかも自分の体内へと取り込もうとするかのよう。

 クリスに組み敷かれながらも、もうどっちが上か下か、自分の身体なのか、クリスの身体なのかもすらも、わからなくなってくる。

 ふわふわとした雲の上でも浮遊しているような幸福感に包まれて、天にも昇る心地だ。

 この世で一番大事な人であるクリスと深く深く繋がりあい、ドロドロに溶けあい交じりあう。

 夫婦となったこの夜。言葉通りひとつになることができた私とクリスは、達してからも、その天国にでもいるような幸せな心地のなかで、いつまでもいつまでも、離れることなく、打ち震える互いの身体をしっかりと抱きしめあったままでいた。

 これから何があろうと離れはしない。というように。

 クリスとずっとずっと夫婦として共に生きてゆく。

 この命が尽きるその瞬間まで、この幸せを一緒に守り続ける。絶対にーー。

 意識を手放す狭間、クリスの逞しい腕に抱かれながら私はそう心に誓っていたのだった。

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