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#45 狼王子と甘く蕩ける初夜を ⑵ ✱
しおりを挟むいつしかクリスは夜着を脱ぎ去っていた。おそらくお得意な魔法によってだろう。
気づけば私も上下ともに下着を取り払われており、お互い何も纏っていない、生まれたまんまの姿だ。
因みに、クリスの狼獣人の姿には二つのタイプがあって、一つは王都で見た、もふもふとした毛で覆われた大きな狼の姿。もう一つは、人の姿にケモ耳と尻尾のみがある姿だ。
今のクリスは、ケモ耳&尻尾のみの姿である。
なので、芸術的な彫刻かと見紛うほどの美しい肉体美が露わになっている。
何にも隔たれることなく身を寄せ合うようにして、クリスの逞しい胸板と私のささやかな乳房とが密着し、互いの素肌が隙なく重なりあっている。
ただそれだけで、これ以上にないほどの安堵感と幸福感に満たされる。
あたかも本来自分のあるべき所におさまっているかのような、そんな錯覚さえ覚える。
元いた世界での事も、この異世界での事も。そのすべては、ここへ辿り着くためのものだったんじゃないかと思ってしまうほどに。
本当に何もかもがしっくりとくる。
ーーやっぱり私とクリスとの出会いは運命だったのかも。
クリスの逞しい腕によってふわりと包み込まれている腕のなか、思考に耽っていると。
私と同じように思っていたかは不明だが……。
クリスは、こうして傍でいられる喜びを噛みしめるかのように、ぎゅっと私の身体を抱きしめたまま動かずにいた。
そんなクリスから唐突に、ちょっぴり拗ねたような声音が重なりあった素肌からじんわりと伝わってくる。
「僕がこんなにも余裕をなくしているというのに……。ノゾミはずいぶん余裕なんだね」
ーーそんな声でさえもどうにも愛おしくて堪らない。
王都でのあの夜の甘やかな快感を知っているせいか、まだ触れてもらっていなかった下肢のその奥がキュンと切ない音を奏でた。
クリスに一刻も早く触れて欲しいと乞うように。
また、その感触が羞恥を掻き立てて、カッと全身が紅潮する。
そこにクリスのふっと軽やかな笑みを零した音が聞こえて、続けざまに、今度はいつもの優しい甘やかな声音が耳元に届いた。
「余裕だと思えば、こんな風に、僕の言動ひとつで途端に真っ赤になって余裕をなくしてしまう。本当にノゾミは愛らしいね。そういうところも堪らない」
かと思った次の瞬間には。
「それに、僕に早く触れて欲しいと言うように、両膝を擦り合わせて、素直に示してくれるところなんか。もう本当に愛おしくて愛おしくて、どうしようもないよ」
「ち、違うッ!」
不意打ちで、さっき無意識に示した反応を指摘されてしまった。
思わず鋭い口調で否定するも、これ以上にないくらいに全身が沸騰したように熱くなり、真っ赤になっていることだろう。
これでは肯定しているようなものだ。というか、そもそも事実なのだけれど。
それを素直に認められるほど、こういうことに慣れていないのだからどうしようもない。
どこか開き直ったような心持ちでいると、クリスからは意外な言葉が返ってくる。
「ノゾミ、ごめんね。怒らせるつもりはなかったんだ。ノゾミの示してくれる反応がどれもこれも愛らしかったものだから、ついはしゃいでしまったんだ。でも、これからは、意地悪なんてせずに、約束通り、たっぷりと愛してあげるからね」
クリスの言葉にほっと安堵していたら、直後、にっこりと極上の微笑を満面に綻ばせたクリスが、私の額にチュッと可愛らしいキスを降らせた。
私は、初めての夜同様、クリスのこの世の者とは思えぬ美しさに魅了され、無意識にコクンと顎を引くことで応える。
それからはもう、宣言通り、クリスによって私は、この世のものとは思えない悦楽の坩堝へと填まったかのように、たっぷりと愛されるのだった。
初体験もクリスだったために、王都での初めてのあの夜には、思いもしなかったけれど、狼獣人の血を引くクリスとの情交は、普通とは違っているのかもしれない。
といっても、比較することができないので、なんとも言えないのだが、兎に角こうして甘い蕩けるような初夜ははじまったのである。
ケモ耳&尻尾のみの狼獣人の姿となったクリスの、人よりも長くて肉厚な熱くぬめらかな舌で、咥内の弱いところを余すことなく、擽るようにして攻め立てられ、クチュクチュと濡れた音を響かせつつ、ことごとく蹂躙されて。
思考には靄でもかかったかのように、うっすらと白く霞んでゆく。
手指では、やわやわと揉みしだかれたお陰で、ぷっくりと勃起して敏感になりすぎている乳首を尚もクリクリと嬲るように捏ねくりまわされ。
その都度、鼻にかかったような甘ったるい吐息とくぐもった嬌声とをキスの合間で繰り返す。
「……んぁ……はっ、ぁ、んぅ、ふッ、んんぅ」
そうしてもう一方の手指は、下肢の秘めたる場所へと這わされ。
既に執拗な愛撫により花芽を剥かれ、充血してふっくらと膨らんだ艶めく真珠を親指の腹で押し潰される。
他の指では、とめどなく溢れくる蜜で泥濘んだ蜜壺を抉るような素早い動きで攪拌され続けていた。
絶えることなく甘味な快感を与えられているせいで、どこもかしこも気持ちよすぎて堪らない。
ぴちゃっ、ぐちゅっと、辺りに立ちこめる夥しい淫猥な水音。
互いが漏らす荒々しく弾んだ息遣い。
互いの湯気が立つように熱せられた身体から迸る汗や、それらでしっとりとした互いの身体の感触。
匂い立つような妖艶な色香を纏ったクリスの表情や逞しい体躯、燃え立つような情欲を宿した蒼く煌めく瞳。
それらすべてが五感までをもことごとく刺激してくる。
やがてクリスの唇が咥内を蹂躙し尽くしたのか、甘やかなキスから解放された。
かと思っていると、首筋や鎖骨というように身体の表皮に牙を穿ちつつ、いつしか胸へと到達する。
先端だけでなく乳暈まで咥え込まれて、ジュルルッと、いやらしい音を響かせながら強く吸い上げられてしまい、身体が大きく跳ね上がった。
「あっ、やぁっ、ーーはぁう、っ、んぁあ、ぁ、ああっ」
身悶えるような快感の大波がひっきりなしに押し寄せてくる。
ふわふわとした夢現の狭間を彷徨っている私の眼前には、あの淫夢のような、人と狼獣人の姿とがあたかもシンクロするようにして、絶えず入れ替わり続ける。
もうどちらに翻弄されているのかもわからない。
そのうち狼獣人のクリスにすべてを喰らい尽くされてしまっているような感覚に陥ってゆく。
その間も、ずっとクリスの手指や唇や舌が身体の至る所に這わされていて、途絶えることなく攻め立ててくる。
「ひゃッ、んぅ、あっ、ぁあん、ふぅ、んぅ」
クリスに触れられているところから、えもいわれぬ愉悦が絶えることなく送り込まれてくる。
それらは少しずつ少しずつ、けれども確実に、身体の奥深く、深部へと蓄積されてゆく。
やがて募りに募った愉悦が耐えがたい強烈な快楽へと変貌を遂げ、滾るように身体を熱してゆく。
おさまりきらなくなった熱情をなんとか放出しようと、狂ったように身悶えることしかできない。
もうなにがなにやらわからない。今にも狂ってしまいそう。
クリスによって絶えず与えられた愉悦が熱になり、それが限界まで膨れ上がって今にも破裂してしまいそうだ。
それらを早くクリス自身で満すことで解放して欲しい。
そうして深いところで繋がりあって、互いの熱でぐちゃぐちゃに蕩けてひとつに交わりたい。
初めての夜に目覚めたばかりの雌である本能に突き動かされるようにして、私はクリスに向けて掠れた声で必死に乞うていた。
「ねぇ、く、クリス……っ、おねっ、がい、はや、くぅ」
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