14 / 47
#14 夢に見た王子様現る!?
しおりを挟む誰かの腕の中にすっぽりと包み込まれているような、そんな心地がする。
あたたかくてとっても心地がよくて、凄く安心できる。
まるでゆりかごのよう。
いつまでもいつまでも微睡んでいたくなってしまう。そこに。
「ノゾミ」
なんとも耳に心地いい甘やかな声音で名を呼ばれ。
ーーこの声、もしかして夢に出てくる王子様? あぁ、また夢を見てるんだ。
淫夢に登場する王子様の声に、当然夢を見ているのだと思い込み目を開けてみると。
「ノゾミ、大丈夫? どこか痛いところはない? 頭とか打っていない?」
とっても心配そうに矢継ぎ早に問い返してくる淫夢に登場してくる先輩に瓜二つの王子様の姿がそこにはあった。
けれどそこにいたのは王子様だけじゃない。
王子様の隣には、同じく心配そうな顔をしたルーカスさんもいる。その傍らには、いつものようにフェアリーもピクシーもいた。
皆一様にベッドに横になっている私のことを心配そうに覗き込んでいる。
どうやらいつものあの淫夢ではないらしい。
けれども、一体なにがどうしてこんなことになっているのかがさっぱりわからない。
寝起きというのも手伝って、正常に働かない頭は大混乱だ。
「ちょっと、待って。私、まだ夢の中なの? それとも頭が可笑しくなっちゃってるの? なにこれ、夢と現実がごちゃ混ぜになってる。もー、ヤダッ! 誰か助けてーー!」
寝起きでパニックを起こしてしまった私は、頭を両手で抱え込んで大声を出すなり布団の中に潜り込んだ。
すぐに皆が心配しておのおの声をかけてくれていたけれど、それに何かを返すような余裕などなかった。
少しして目も完全に醒めて落ち着を取り戻した頃。
ルーカスさんの優しい声音が耳に流れ込んできて。
「ノゾミ様。ご安心くだされ。この若者は、倒れたノゾミ様を連れ帰ってくれたレオンですじゃ。否、正確には、レオンは仮の姿で隣国からきた旅人だそうですじゃ。わしが以前お伝えしました、ゴブリンの呪いで、変身魔法が解けなくなっていたそうですじゃ」
思いもよらなかった言葉に驚き、飛び上がるような勢いで布団から顔を出す。
そうして続けざまに混乱気味に私が放った、
「え? レオンが旅人? それに変身魔法ってどういうことですか?!」
という問い掛けに対して応えてくれたのは、ルーカスさんではなく先輩に瓜二つの王子様もとい、隣国の旅人だった。
「隣国のモンターニャ王国からこの国に来るには、精霊の森を抜けるのが一番の近道なんだよ。でも邪妖精や魔物が棲まうだろう。だから狼に変身して抜けようとしたんだ。そこでゴブリンに遭遇したんだよ」
『隣国の旅人』というのも言いにくいので、レオンと呼ぶことにする。
なんでもレオンは、隣国の商人であるらしく、珍しい骨董品を買い付けるためにこの国に来る途中、人間嫌いの魔物らに見つからないように狼の子供の姿に『変身魔法』とやらで化けていたらしい。
その道中、運悪く遭遇したゴブリンに変身魔法が解けないように呪いの呪文をかけられたのだという。
そして驚くことに、その呪いをかけられたら最後。解く術はなく傷が全身に及んで死に至るんだそうだ。
それに関しては、私が聖女として召喚された際に備わっていたという驚異的な能力が絶大な力を発揮したようだった。
もう一つ驚いたのは、レオンは呪いをかけられたあと頭を強く打っていたようで、すべてではないが、所々記憶が抜け落ちてしまっているらしい。
なので、自分が商人で、この国に骨董品を求めて訪れていた以外の記憶を失ってしまっているというのだ。
「え? じゃあ、名前も思い出せないんですか?」
さぞかし心細いだろうと思って思わずかけた言葉に、
「……うん。でも、悪いことばかりじゃないよ。こうしてノゾミのようなとても可憐で愛らしい聖女様に巡り会えたんだからねぇ」
レオンは、大したことでもないというように爽やかな微笑みを浮かべて、なんとも甘やかな声音で歯の浮くような台詞を吐く。
なんだか、淫夢からそのまま飛び出してきたようなレオンの風貌や物言いに私の心はザワザワとして、ちっとも落ち着かなかった。
そんな私の様子をやけに静かに見守っていたフェアリーとピクシーが、とんでもないことを言い放つ。
「あらあらノゾミンったら、真っ赤になっちゃって。狼のレオンのときとは違ってぽーっとしちゃってるし。もしかして、人間の姿のレオンに一目惚れでもしちゃったのかしら」
「あっ、ホントだ~! ノゾミ、真っ赤になってる~!」
「そうなの? だったら光栄だなぁ」
「////ーーち、違うからッ! 布団に潜り込んでたせいなんだってば!」
「これこれ、フェアリーにピクシー。二人の邪魔になるじゃろうが。こういうときは気を利かすもんじゃ」
おかげで、ルーカスさんまでが余計なお節介発言を繰り出してきて、私は真っ赤になりながら言い訳を繰り返す羽目になったのだった。
どうして突然呪いが解けて人の姿に戻れたのかなど少々謎めいた部分はあれど……。
こうしてルーカスさんの家に居候中の身である私の他に、人間の姿であるレオンが加わることとなったのである。
10
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
この度、青帝陛下の番になりまして
四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる