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3 やっぱり箱庭ゲームの世界? ~二日目
しおりを挟む一日目の夕方になり、ここが剣と魔法のファンタジーの世界でもなんでもないらしいことがわかり、益々マリサは途方にくれた。
しかもここは、マリサがやっていた、箱庭ゲームの世界に似ていることに気がついたのだ。
暮れていく世界の中、一本の木以外何もない場所で心細さとひもじさで、今度こそ正気がどうかなりそうだった。
現実からの逃避だったのかもしれない、なんとなくマリサは目を瞑り、エアースマホ・・・・・・を片手に、箱庭ゲームを指で操作してしまっていた。
毎日惰性でやっていた箱庭ゲームが、現実となって起動していたとしたら……。
ここが箱庭ゲームの世界ならば、初期設定では受信箱に、簡易テントとおもちゃのバケツとスコップ、何種類かの種と苗やなんかが入っているはずなのだ。
最初の箱庭の世界は荒れ地で、一本だけ実のなる木が生えているのだ。
目を瞑り、エアースマホ片手に簡易テントを選択する。
おっかなびっくり目を開けると、一抱え程の大きさの、ベージュ色の収納袋が足元に横たわっていた。
収納袋に、『簡易テント』どプリントされている。
マリサはがくっと肩を落とした。
「……やっぱり、『箱庭のロンド』の中のような気がする。ふっ、ふふふ……」
よろよろと立ち上がって、のろのろとテントの設営をすると、マリサは倒れこむようにテントに潜り込んだ。
「……ふっ、ふふふっ……」
それからしばらく、くぐもった声が荒れ地に虚しく響いていた。
◇◇◆◇◇
スマホの箱庭ゲーム、『箱庭のロンド』と思しき、妙ちくりんな世界に放り込まれて二日目の朝。
マリサはテント横の一本だけの木を見て目を瞠った。
「そうだ、昨日収穫忘れてたっ!」
一本の木には、一つだけマンゴーのような形の赤い実が生っていた。
ゲームのアバターが何も生産できなくても飢えないように、一日に一度だけ収穫の出来る、食べられる実だった。
ただし、収穫しなければ熟れたままで時を止めてしまうのだ。
「あーっ、もったいなかったあ、お腹減ってるのに!」
とほほ顔で掌サイズの実をもぐと、早速かじりつく。
じゅわっと甘酸っぱい果汁がしたたり、とろりとした果肉と共に喉を潤していく。夢中で噛り付いてあっと言う間に食べ終える。
「はあ~おいしかったあー」
しみじみと言ってお腹をさするが、いっきに食べるのではなかったと後悔もする。
中途半端にお腹に入れたせいか、お腹にスイッチが入ったように、より、グーグーと煩く鳴りだしたのだ。
まだまだ空腹を満たすには足りない、足りなすぎるのだ。
絶望と言う名の岩が背中にのしかかっていた。
いつの間にか木には明日のための小さな実が生っているのが目に留まる。
青く硬い実はか細い光となって、絶望的な気持ちを僅かに照らしていた。
「なにもしなくても一日、だったら少しでもあがいてみようじゃないの」
まずは、昨日苦労して見つけた小川へ水を汲みにいくのだ。
幸い、お腹は壊れてないし、どこにも不調はない。
生水はやはり躊躇するので、火を起こす術を考えること、生命を繋ぐ、この一本の木にも水をやりたいことと、畑も作らなければとマリサは考えていた。
「でも、さすがに一人じゃこわいのよね」
昨日はたまたま無事に水場まで辿り着いて、たまたま無事に戻れただけかもしれないのだ。
そう考えたら額から汗がたらりと流れた。
「あっ、そうだ。もしかしてもしかしたら、もう一つギフトがあるかも」
目を瞑る必要はないかと思い至って、左手にスマホを持っているつもりになると、不思議なことに、長四角の物体がぼんやりと見えてきて、手にも重みを感じて、マリサは鳥肌を立てる。
「うわっ、これ、私のスマホだわ……。だんだん鮮明になってきた」
オレンジ色のカバーをつけたスマホが、はっきりと手に握られていた。
ドキドキする胸を押さえ、電源を入れてみてずっこけた。
いきなり、ゲーム画面だったのだ。
ゲームを起動させようとしたのに、既にゲームは立ち上がっていた。
「そっか、エンドレスでゲームしてるのね。ゲーム三昧だわ……ははっ」
じわじわと涙が浮かんでくる。滲んだ涙を拭って画面を覗いたら、受信箱に目当てのものが入っていた。
「うわあ、あった! もうこれで、『箱庭のロンド』の世界で間違いないってことだわね」
どーん、ずーんと落ち込みながら、受信箱の中の「???」と表示された箱に指を乗せる。
『中身は開けてのお楽しみ ランダムにて、S、A、B、C、D、E、Fの便利アイテム又はペットが貰えます 便利アイテムかペットをお選びください』
という説明が画面に浮かび上がった。
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