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学校から帰宅し玄関に入ると、そこには俺のものより幾分か大きいローファーが脱ぎ捨てられていた。それにまたか……とため息をつき、階段をあがって自分の部屋へ向かう。自室のドアを開けて中を見渡すと、そこには案の定幼なじみである男が我が物顔で寛いでいた。

「お、文希おかえり。遅かったじゃん」
「……翔悟、来るなら連絡しろって言ってるだろうが」
「えー別にそんなんいいじゃん。俺とお前の仲だし」

ベッドを占領している翔悟は軽く俺をあしらうと、読んでいた漫画に意識を戻す。どうやらこの間貸した巻数を読み切ってしまい、続きが気になって勝手にやって来たようだった。俺の部屋は、すっかりこいつの漫喫と化してしまっている。

「はぁ……俺はテスト近いから勉強するけど、邪魔するなよ」
「おう、お構いなく。頑張れ~~」

呑気な声にイラッとしながら、俺は机の上に問題集を広げる。顔も良けりゃ頭もいい翔悟は、テスト前でも別段勉強をしていない。曰く、授業中に全て頭に叩き込んでいるからテスト勉強など必要無いらしい。それでもしっかり結果を残しているからさすがである。ずっと一緒に育ってきたというのに、この頭の作りの違いに若干悲しくなる。

「……」
「……」

付き合いの長い翔悟は最早家族のようなもので、同じ空間に居ても全く気を使わないし気になることもない。しんとした部屋の中、俺は早速問題集と向き合い始める。難関である数学と格闘していると、あっという間に時間が過ぎていった。

「はーー……頭痛くなってきた……ちょっと休憩するか……」

集中力が切れ、俺は伸びをしてから立ち上がる。ベッドの方へ目を向けると、翔悟は漫画を片手に寝落ちていた。すやすや気持ちよさそうに寝こける姿に、再びイラッとさせられる。

「まったく……そんな余裕あんなら部活にでも入りゃいいのに」

それか、彼女でも作るとか……顔も頭もスタイルもいい翔悟は昔からかなりモテたが、なぜか彼女がいるところを見たことがない。もしかしたらこっそり作ってたりしたのかもしれないが、それにしては俺と過ごしている比率が高すぎる。放課後や休日など、暇な時間があれば俺の部屋に入り浸っているのだ。こうまで俺にべったりだと、こいつ学校でちゃんと友達いるのか……?と心配になってくる。

「……おい、制服のまま寝ると皺になっちまうぞ」
「……」

階下から飲み物を取ってきて部屋に戻ってくると、寝こけていた翔悟が目を覚ましていた。まだ若干ぼんやりしながら、ベッドに突っ伏している。持ってきた飲み物をサイドテーブルに置いてやり、俺は再び机に戻ろうとする。しかし、翔悟が唐突に手を掴んできて、その場に引き止められた。

「……翔悟?」
「なあ文希、やばい」

振り返ると、翔悟がいやに神妙な面持ちでこちらを見上げていた。それから突っ伏していた身体をのろのろと起こし、ベッドの上に座り込んだ。

「……ちんこ勃っちまったんだけど」
「………………???はぁ???」

予想だにしない幼馴染の発言に、俺は思考停止して硬直する。そして恐る恐る視線を翔悟の股間へ向けると、そこは確かにギッチギチにテントを張っていた。服越しでもそのブツが立派なのが分かって、思わずドキッとしてしまう。

「なんかやけにエロい夢見ちまってさ……今朝も抜いたっつーのにやばい」
「っ、んなこといちいち知らせてくんな!トイレにでも行って勝手に抜いてこいよ」

俺は掴まれた手を振り払おうとしたが、逆に翔悟に引き寄せられてしまった。姿勢を崩し、ベッドの上に倒れ込んでしまう。

「……っ!?おい翔悟、なんのつもり……」
「なあ文希、せっかくだから、一緒にしてみないか?」
「……?は……?」

身体を起こすと、なにやら爛爛とした様子の翔悟が間近に迫っていた。言ってることも意図も全く読めなくて怖い。俺は咄嗟に距離を取ろうとするも、手をがっしり掴まれている為叶わない。

「な、なに、を……」
「そんなん、ちんこの抜きあいに決まってるじゃんか」
「……!?はぁぁっ!?」
「他人に触られるのってどんな感じなのか、興味ねえ?試しにやってみよーぜ」
「何言ってんだお前!?正気か!?この暑さで頭イカれちまったのか!?」
「大マジだし俺の頭はいつだって聡明だけど?」

キリッとさせた綺麗な顔を近づけられ、俺は気圧されるあまり言葉を失ってしまう。嘘つけ、お前絶対頭やられてる……と言いたげな目で見るも、翔悟は謎にノリ気で微塵も引き下がろうとしない。

「こんなのいつものじゃれあいの延長にしか過ぎないって。な?文希も少しは興味あるだろ?」
「なっ、ないっ!こんなの、ダメに決まってるだろ……!」
「はは、文希はほんと意固地でクソ真面目だなあ。実はものすごいむっつりスケベなくせに」
「……っ!?ち、ちが……っ!」
「パソコンの検索履歴エロワードばっかじゃん。ブクマもエロ動画サイトばっかだし」
「はっ!?お前っ、何勝手に見て……!」
「そんな四六時中オナニーばっかして、もう自分でするの飽きただろ?すっげえ気持ちよくしてやるからさ♡」
「っ、ちょっ、……っ!」

いつの間にか壁際に追いやられ、俺は逃げ場をなくして狼狽える。嫌だ、やめろと思うのに、ほんの少しだけ期待してしまっている自分がいるのも否めなかった。そのせいか本気で抵抗していないと翔悟に察され、身体に触れられてしまう。
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