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第五章「選挙開幕」

第45話 決戦開幕

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 通路を抜けると一気に視界が開ける。二日前にも通った場所だが、あの時は観客は誰一人としていなかった。感じたことのない人の熱量を感じた。

 舞台の修復はもう終わっているようだ。先に出ていた候補者たちが舞台に上がり始めている。

 無意識に手を握り込んでしまう。手汗も出ている。珍しく緊張しているようだ。そんな自分を落ち着かせるように深呼吸をしながら足を進める。そして、舞台の上に上がった。どうやら双魔が最後の一人だったようだ。

 候補者たちの視線が双魔に集まる。

 (おお!ソーマ!見られているぞ!)
 「ん、そう言えばいつもの癖で魔術科のローブ着てきちまったな」

 しかし、いつもと違って中はしっかりと遺物科の実技用制服を着こんでいる。

 様々な感情が双魔への視線に乗せられている。その多くは困惑だ。「どうして、ここに魔術科の生徒がいるんだ?」「いや、でも、中は遺物科の制服だぞ?」「あの遺物は……」と言ったところだろうか。候補者たちの困惑はすぐに観客席へと飛び火した。

 これまでのブロックでは見ることのなかったざわめきが起こっている。それを察してか、すかさずアメリアがアナウンスを入れる。

 『最終第五ブロック!最後に入場してきたのは伏見双魔さんだー!その身に纏うローブは遺物科の生徒にして魔術科の講師の証拠!なんとなんと!遺物と契約したのはついこの間らしいっス!伏見くん頑張れー!』

 アメリアの声に答えるように魔術科の生徒たちが声援を上げる。

 きゃああああああああああああ!伏見先生頑張ってー!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 男女ともに自分を応援してくれているようだ。

 「伏見君頑張ってー!」
 「ふぁいとー!」

 梓織と愛元の姿も見えた。イサベルは……見つからないが何処かで見ているのだろう。

 しかし、今ので候補者たちに警戒されてしまっただろう。声援を受けて悪い機敏ではないが面倒な事態に陥りそうだ。

 『えー、ただいま、アナウンスは公平にしろと怒られてしまいましたっス……以後気をつけるっス…………』



 アメリアの沈んだ声に笑いが起こる。反対に舞台上は緊張感に支配されている。候補者それぞれが静かに手にした遺物を構えた。

 双魔は中心から大きく離れた端の方に陣取った。

 (魔術を使うわけにはいかないからな……せめて背後の憂いくらいは除いておきたいからな……)

 クラスメイトや知った顔もチラホラ見える。その中でも最も警戒すべきはサリヴェンだ。目を動かして位置を探す。

 いた。サリヴェンは双魔の丁度真反対に立っていた。特に構えることもなくフルンティングを片手で持っている。その姿は静かすぎて逆に異様に見えた。サリヴェンの近くに立つ候補者たちも不気味がっているようだ。

 そこに放送席で復活を果たしたアメリアの声が響き渡った。

 『それでは!気を取り直して最終第五ブロックを開始するっス!評議会役員最後の一席は誰の手に!?』

 歓声は止み闘技場内は静寂に満ちる。

 『第五ブロック!始め――!』

 選挙という名の戦争は火蓋を落とされた。導火線が燃え切り爆発した火薬の如く候補者たちは動き始めた。
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