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第五章「選挙開幕」
第43話 賢翁の思惑、因果の鼓動
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学園長ヴォーダン=ケントリスは来賓席で魔導連合から派遣された視察官の相手をしているところだった。
「いやはや、今年度も粒ぞろいですな。それに勝ち抜けはしなかったが将来有望な者も多そうだ。カリキュラム変更による新しい制度も上手く機能しているようですな」
「次世代は着実に育っておるということじゃな。埋もれていた優秀な生徒が幾人も発掘できておる」
選挙制度の改定はより優秀な者に学園の舵取りをさせるためだけではなく。実践に通じる原石たる生徒を見い出す目的もあった。
「ハハハ、確かにそうですな……ところでケントリス殿、ここまで四人の生徒が役員に決定しました。ポストは当人らで決めるとして、それぞれについてのご意見を拝聴させていただきたい」
「……フム」
ヴォーダンは顎髭をゆるりと撫でて考える素振りを見せてから口を開いた。
「そうじゃのう、キュクレイン君、オーエン君に関しては特に何か言うこともない。敢えて言うなら昨年と比べてより磨きがかかっておる」
「そうですな……特に両名とも剣気の展開が非常に滑らかだ」
「うむ、リリー君に関しては大番狂わせだと思われているようじゃが中等部からの報告によれば洞察力と瞬発力に優れ、肝が据わっておるとのことじゃった。期待はしておったが、結果はそれ以上じゃ。これから大いに成長するじゃろう」
その評価に視察官は首肯する。
「マック=ロイ君に限ってはようやく折れてくれたという気持ちが強いのう……彼はかなり頑固じゃからな、役員になれるものを固辞し続けておったからな。脅すような規則を作って良心はいたんだが伏龍にせよ鳳雛にせよ、いつかは飛び立たねばならぬからのう!フォッフォッフォ!」
視察官は手帳を取り出すと手元に用意された資料を確認しながら二人の情報をメモし始める。
「しかし、な」
「しかし……なんですかな?」
含みを帯びた言葉に視察官は走らせていた筆を止めてヴォーダの顔を見た。
「儂が今年最も期待しておるのは最後の第五ブロックじゃ」
「誰か目を掛けている生徒が出場するのですか?」
「その質問については答えられん。儂は公平な立場でなくてはならぬ故。じゃが、確実に面白いものが見られるじゃろうて。フォッフォッフォ」
楽しそうに笑うヴォーダンに視察官は困惑とも期待ともとれる複雑な表情を浮かべた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「クックック…………さて、ようやく第五ブロックか、実に待ちわびた」
闘技場の最上階、柱の影に身を潜めた男は舞台を見降ろしていた。フードの奥で目を爛々と輝かせ、口元を大きく歪ませて心の内の醜悪さを顔に浮かび上がらせている。
「ターゲットは必ずアレを使う……実験だけ、あわよくばそのまま使い魔にするつもりだったが、第五ブロックにあの小僧もいるとはな、ついでに憂さ晴らしもできるというものだ!フハハハハハ!」
男が哄笑を上げるのとほぼ同時に第四ブロックで半壊した舞台の修復が終わり候補者たちが舞台上に出てくる。
隔絶されたと思われた運命が再び動き出そうと熱を帯びていることに気づいている者は…………唯一人。
「いやはや、今年度も粒ぞろいですな。それに勝ち抜けはしなかったが将来有望な者も多そうだ。カリキュラム変更による新しい制度も上手く機能しているようですな」
「次世代は着実に育っておるということじゃな。埋もれていた優秀な生徒が幾人も発掘できておる」
選挙制度の改定はより優秀な者に学園の舵取りをさせるためだけではなく。実践に通じる原石たる生徒を見い出す目的もあった。
「ハハハ、確かにそうですな……ところでケントリス殿、ここまで四人の生徒が役員に決定しました。ポストは当人らで決めるとして、それぞれについてのご意見を拝聴させていただきたい」
「……フム」
ヴォーダンは顎髭をゆるりと撫でて考える素振りを見せてから口を開いた。
「そうじゃのう、キュクレイン君、オーエン君に関しては特に何か言うこともない。敢えて言うなら昨年と比べてより磨きがかかっておる」
「そうですな……特に両名とも剣気の展開が非常に滑らかだ」
「うむ、リリー君に関しては大番狂わせだと思われているようじゃが中等部からの報告によれば洞察力と瞬発力に優れ、肝が据わっておるとのことじゃった。期待はしておったが、結果はそれ以上じゃ。これから大いに成長するじゃろう」
その評価に視察官は首肯する。
「マック=ロイ君に限ってはようやく折れてくれたという気持ちが強いのう……彼はかなり頑固じゃからな、役員になれるものを固辞し続けておったからな。脅すような規則を作って良心はいたんだが伏龍にせよ鳳雛にせよ、いつかは飛び立たねばならぬからのう!フォッフォッフォ!」
視察官は手帳を取り出すと手元に用意された資料を確認しながら二人の情報をメモし始める。
「しかし、な」
「しかし……なんですかな?」
含みを帯びた言葉に視察官は走らせていた筆を止めてヴォーダの顔を見た。
「儂が今年最も期待しておるのは最後の第五ブロックじゃ」
「誰か目を掛けている生徒が出場するのですか?」
「その質問については答えられん。儂は公平な立場でなくてはならぬ故。じゃが、確実に面白いものが見られるじゃろうて。フォッフォッフォ」
楽しそうに笑うヴォーダンに視察官は困惑とも期待ともとれる複雑な表情を浮かべた。
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「クックック…………さて、ようやく第五ブロックか、実に待ちわびた」
闘技場の最上階、柱の影に身を潜めた男は舞台を見降ろしていた。フードの奥で目を爛々と輝かせ、口元を大きく歪ませて心の内の醜悪さを顔に浮かび上がらせている。
「ターゲットは必ずアレを使う……実験だけ、あわよくばそのまま使い魔にするつもりだったが、第五ブロックにあの小僧もいるとはな、ついでに憂さ晴らしもできるというものだ!フハハハハハ!」
男が哄笑を上げるのとほぼ同時に第四ブロックで半壊した舞台の修復が終わり候補者たちが舞台上に出てくる。
隔絶されたと思われた運命が再び動き出そうと熱を帯びていることに気づいている者は…………唯一人。
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