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第五章「選挙開幕」
第39話 追われる白騎士
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ロザリンが立ち去ってから五分と立たないうちに救護班は脱落者たちを舞台上から運び出し、入れ替わりに第二ブロックの候補者たちが舞台の上に上がり始めた。
「ソーマ、ソーマ!アッシュだぞ!」
そう言って指差した先にはアッシュが盾に姿を戻したアイギスを手に歩いていた。
きゃああああああああああああ!
それに気づいた遺物科の女子生徒たちの黄色い悲鳴が闘技場内を満たす。
アッシュはそれに気づいたのか観客席に向けて手を振る。それによってさらに女子生徒たちは興奮する。男子生徒たちもそれに対抗してか頑張って候補者たちの応援のために雄叫びを上げているが完全に掻き消されてしまっている。
「よっ、人気者は大変だな」
「こんな所にいていいのか?」
いつの間にかハシーシュが双魔の横の開いた席に座っていた。
「なんだよ、せっかく様子を見に来てやったのに」
「サボりに来ただけだろ」
「……バレたか。まあ、いい。私はこれから手を離せないからな。頑張れよ。ティルフィングも双魔を頼んだぞ」
「うむ、任せておけ!」
ハシーシュはポンポンとティルフィングの頭を軽くたたくと立ち上がりフラフラと去っていった。
「いったいなんだったのだ?」
「さあな、それより始まるぞ」
『さあ、それでは候補者の皆さんの準備も済んだようなので第二ブロックを開始するっスよー!』
第一ブロックと同じように舞台上の候補者たちが臨戦態勢に入る。アッシュは中央から少し離れたところに立っていた。
『第二ブロック。始め!』
「うおおおおおお!」
「オラあ!」
「覚悟しろ!コラぁ!」
「え?え?えーー!?」
アメリアの返しの合図とともに、ほとんどの男子生徒がアッシュ目掛けて走り始めた。
「な、な、なんでーーーー!?」
アッシュはこの事態を予想していなかったのか溜まらず逃げ始める!
その戦況に観客席から遺物科の女子生徒たちが一斉にブーイングを上げる。
「ちょっとー!アッシュ様に何するのよ!」
「アッシュくん!逃げて――!」
「卑怯者―!全員モゲろー!」
散々なブーイングを受けた候補者たちは涙を流しながら前進する。
「くっ!例えどんな罵倒を受けようとも日ごろの恨みここで晴らしてくれる!」
「そうだ!女子の人気を独り占めしやがって!」
「俺なんて……俺なんて……うわああああ!」
憤怒と悲しみが入り混じった凄まじい形相で追いかけてくるむさ苦しい集団にアッシュは逃げるほかない。
「ど、どうしてみんな怒ってるのーー!?」
(男っていつの時代もバカよね)
「な、何のこと!?」
(何でもないわ)
本人はいまいち理解できないようだが、アイギスにはアッシュが狙われている理由をしっかりと分かっているらしい。
『おおっと!第二ブロック第一候補と目されるアッシュ=オーエンさんが猛追されているー!女の恨みは恐ろしいと言いますが、男の恨みも大概っスね!』
「「「「「アハハハハ!」」」」」
アメリアのコメントが笑いを誘う中、舞台上では変化が起こっていた。
「アッシュ様に何するのよ!」
「これでも喰らいなさい!えーい!」
「「「うぎゃあああああああ!」」」
アッシュを追っていた最後尾の候補者たちが女子たちの攻撃を受けて場外へと吹き飛ばされたのだ。
「同志―――――!」
「くそうっ!アッシュ=オーエン許すまじ!」
アッシュの真後ろを駆けていた候補者たちが剣気を膨れ上がらせた。
(普段は男女問わず人気だが……嫉妬と言うか鬱憤は貯まるからな)
アッシュの惨状を見て双魔は苦笑せずにはいられなかった。
男の嫉妬は恐ろしくもあり、滑稽でもあり、そして実に憐れなものだ。
そうこうしているうちに舞台上の人数は四十人を切った。そして、攻撃をアイギスで弾きながら逃げ回っていたアッシュは追い詰められていた。
『逃げ回っていたオーエンさんですが舞台の端まで追い詰められてしまたっス!万事休すかー!っと凄い悲鳴っスね……』
アッシュが追い詰められたのを見て観客席から上がる悲鳴が凄いことになっていた。
「フッ、フフフ!もう逃げ場はないぞ!」
「日ごろの恨みを思い知れ!」
「いつも、世話になってるがそれはそれこれはこれだ!」
「いくぞ!」
「「「「おう!」」」」
半円状にアッシュを囲んだ候補者たちが一斉に飛び掛かった。それを見てアッシュはにこやかに笑みを浮かべてアイギスを構えた。
「みんな、ごめんね。ここまで逃げてきたけど……僕の勝ちだよ!”神聖璧《トイコス》・半球《ヘーミスパイリオン》”!」
「へぶっ!」
「ぐえっ!」
「ぎゃん!」
アッシュはアイギスの解技を発動させ、前方に半円状の光の壁を出現させた。アッシュに向かってきていた候補者たちはその壁に思いきり身体を叩きつけられる形になってしまったのだ。
「拡大《アウクセーシス》!」
光壁はアッシュの声に合わせて急速に範囲を拡大していく。
「え?うわっ!?」
「きゃっ!?」
迫りくる壁を避けることもできず、為す術なく候補者たちは続々と場外に押し出されていく。
跳躍してどうにか逃れようとする者もいたが半球の性質上、上にも壁が拡大して他の者と同様に場外へと押し出されてしまった。そして、アッシュは最後まで舞台の上に立っていた。
『第二ブロックの覇者が決定したっス!第一ブロックに引き続き前評議会役員アッシュ=オーエンさん!鮮やかな勝利を収めました!やはり”ブリタニア王家の白騎士”の名は伊達ではないのか!』
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
きゃああああああああああああ!アッシュさまあああああああ!
鳴りやまぬ歓声と黄色い悲鳴の中、アッシュは遠目でも分かるほど顔を真っ赤にして舞台を後にした。
(やっぱり、あの渾名恥ずかしいんだな)
暫くするとアッシュとアイギスが戻ってきた。アッシュの顔からはまだ赤みが引ききっていなかった。余程恥ずかしかったらしい。
「アッシュ!すごかったぞ!かっこよかった!」
ティルフィングがぴょんぴょん跳ねながらアッシュを出迎えた。
「う、うん……ありがとう」
「ん、流石、”ブリタニア王家の白騎士”サマだな」
「そのあだ名は止めてって言ってるでしょ!」
アッシュはまた顔を真っ赤にして怒りだした。
「分かった分かった、悪かったって……ほら、第三ブロックが始まるぞ」
アッシュはほとんどの生徒を押し出し場外にしたので怪我人がほとんど出ずすぐに次のブロックに移ることができるようだった。
『それでは!第三ブロックを開始するっス!…………始め!』
「ソーマ、ソーマ!アッシュだぞ!」
そう言って指差した先にはアッシュが盾に姿を戻したアイギスを手に歩いていた。
きゃああああああああああああ!
それに気づいた遺物科の女子生徒たちの黄色い悲鳴が闘技場内を満たす。
アッシュはそれに気づいたのか観客席に向けて手を振る。それによってさらに女子生徒たちは興奮する。男子生徒たちもそれに対抗してか頑張って候補者たちの応援のために雄叫びを上げているが完全に掻き消されてしまっている。
「よっ、人気者は大変だな」
「こんな所にいていいのか?」
いつの間にかハシーシュが双魔の横の開いた席に座っていた。
「なんだよ、せっかく様子を見に来てやったのに」
「サボりに来ただけだろ」
「……バレたか。まあ、いい。私はこれから手を離せないからな。頑張れよ。ティルフィングも双魔を頼んだぞ」
「うむ、任せておけ!」
ハシーシュはポンポンとティルフィングの頭を軽くたたくと立ち上がりフラフラと去っていった。
「いったいなんだったのだ?」
「さあな、それより始まるぞ」
『さあ、それでは候補者の皆さんの準備も済んだようなので第二ブロックを開始するっスよー!』
第一ブロックと同じように舞台上の候補者たちが臨戦態勢に入る。アッシュは中央から少し離れたところに立っていた。
『第二ブロック。始め!』
「うおおおおおお!」
「オラあ!」
「覚悟しろ!コラぁ!」
「え?え?えーー!?」
アメリアの返しの合図とともに、ほとんどの男子生徒がアッシュ目掛けて走り始めた。
「な、な、なんでーーーー!?」
アッシュはこの事態を予想していなかったのか溜まらず逃げ始める!
その戦況に観客席から遺物科の女子生徒たちが一斉にブーイングを上げる。
「ちょっとー!アッシュ様に何するのよ!」
「アッシュくん!逃げて――!」
「卑怯者―!全員モゲろー!」
散々なブーイングを受けた候補者たちは涙を流しながら前進する。
「くっ!例えどんな罵倒を受けようとも日ごろの恨みここで晴らしてくれる!」
「そうだ!女子の人気を独り占めしやがって!」
「俺なんて……俺なんて……うわああああ!」
憤怒と悲しみが入り混じった凄まじい形相で追いかけてくるむさ苦しい集団にアッシュは逃げるほかない。
「ど、どうしてみんな怒ってるのーー!?」
(男っていつの時代もバカよね)
「な、何のこと!?」
(何でもないわ)
本人はいまいち理解できないようだが、アイギスにはアッシュが狙われている理由をしっかりと分かっているらしい。
『おおっと!第二ブロック第一候補と目されるアッシュ=オーエンさんが猛追されているー!女の恨みは恐ろしいと言いますが、男の恨みも大概っスね!』
「「「「「アハハハハ!」」」」」
アメリアのコメントが笑いを誘う中、舞台上では変化が起こっていた。
「アッシュ様に何するのよ!」
「これでも喰らいなさい!えーい!」
「「「うぎゃあああああああ!」」」
アッシュを追っていた最後尾の候補者たちが女子たちの攻撃を受けて場外へと吹き飛ばされたのだ。
「同志―――――!」
「くそうっ!アッシュ=オーエン許すまじ!」
アッシュの真後ろを駆けていた候補者たちが剣気を膨れ上がらせた。
(普段は男女問わず人気だが……嫉妬と言うか鬱憤は貯まるからな)
アッシュの惨状を見て双魔は苦笑せずにはいられなかった。
男の嫉妬は恐ろしくもあり、滑稽でもあり、そして実に憐れなものだ。
そうこうしているうちに舞台上の人数は四十人を切った。そして、攻撃をアイギスで弾きながら逃げ回っていたアッシュは追い詰められていた。
『逃げ回っていたオーエンさんですが舞台の端まで追い詰められてしまたっス!万事休すかー!っと凄い悲鳴っスね……』
アッシュが追い詰められたのを見て観客席から上がる悲鳴が凄いことになっていた。
「フッ、フフフ!もう逃げ場はないぞ!」
「日ごろの恨みを思い知れ!」
「いつも、世話になってるがそれはそれこれはこれだ!」
「いくぞ!」
「「「「おう!」」」」
半円状にアッシュを囲んだ候補者たちが一斉に飛び掛かった。それを見てアッシュはにこやかに笑みを浮かべてアイギスを構えた。
「みんな、ごめんね。ここまで逃げてきたけど……僕の勝ちだよ!”神聖璧《トイコス》・半球《ヘーミスパイリオン》”!」
「へぶっ!」
「ぐえっ!」
「ぎゃん!」
アッシュはアイギスの解技を発動させ、前方に半円状の光の壁を出現させた。アッシュに向かってきていた候補者たちはその壁に思いきり身体を叩きつけられる形になってしまったのだ。
「拡大《アウクセーシス》!」
光壁はアッシュの声に合わせて急速に範囲を拡大していく。
「え?うわっ!?」
「きゃっ!?」
迫りくる壁を避けることもできず、為す術なく候補者たちは続々と場外に押し出されていく。
跳躍してどうにか逃れようとする者もいたが半球の性質上、上にも壁が拡大して他の者と同様に場外へと押し出されてしまった。そして、アッシュは最後まで舞台の上に立っていた。
『第二ブロックの覇者が決定したっス!第一ブロックに引き続き前評議会役員アッシュ=オーエンさん!鮮やかな勝利を収めました!やはり”ブリタニア王家の白騎士”の名は伊達ではないのか!』
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
きゃああああああああああああ!アッシュさまあああああああ!
鳴りやまぬ歓声と黄色い悲鳴の中、アッシュは遠目でも分かるほど顔を真っ赤にして舞台を後にした。
(やっぱり、あの渾名恥ずかしいんだな)
暫くするとアッシュとアイギスが戻ってきた。アッシュの顔からはまだ赤みが引ききっていなかった。余程恥ずかしかったらしい。
「アッシュ!すごかったぞ!かっこよかった!」
ティルフィングがぴょんぴょん跳ねながらアッシュを出迎えた。
「う、うん……ありがとう」
「ん、流石、”ブリタニア王家の白騎士”サマだな」
「そのあだ名は止めてって言ってるでしょ!」
アッシュはまた顔を真っ赤にして怒りだした。
「分かった分かった、悪かったって……ほら、第三ブロックが始まるぞ」
アッシュはほとんどの生徒を押し出し場外にしたので怪我人がほとんど出ずすぐに次のブロックに移ることができるようだった。
『それでは!第三ブロックを開始するっス!…………始め!』
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