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番外編
「グリーク、逆転勝利! 二十四年ぶりの優勝となりました!」
しおりを挟む「グリーク、逆転勝利! 二十四年ぶりの優勝となりました!」
拡声器から放たれた言葉に、わ、とグリーク側の応援チームが湧き上がる。まだ住んで半年も経っていないが、愛着の湧いている土地のスポーツチームの勝利は素直に嬉しい。
嬉しいが……。
得点王となった新人、オリバーが両手を上げて快哉を叫ぶ。彼にメンバー達が抱きつき、勝利の喜びを味わっていた。
「すごいね! オリバー君、大活躍じゃないか!」
ルカスさんが嬉しそうに遠眼鏡を覗き込んでいる。興奮して頬が赤く染まっていた。その隣でレオンさんも満足げに頷いている。
「はい……。本当に優勝しちゃいましたね」
両チームが整列をし、終了の礼をする。その後、オリバーは俺の方を向き、満面の笑みで拳を掲げてきた。
口が動く。
『楽しみにしてるね、ウィル』
彼の口唇の動きを読み取り、耳まで赤くなった。エースの行動の意味を知らない、俺の周囲に座っている女性たちがきゃあ、と感嘆の声をあげる。
「何? あのファンサ!」
「すっごくかっこよかったんだけど! とろけるような笑顔じゃない!?」
「このあたりにオリバー様の恋人でも座ってんの!?」
周囲を見渡す彼女たちに、俺はそっと視線をそらす。
「てか、オリバー様って彼女いるの?」
「インタビューには溺愛する恋人がいるって書いてあったよ」
そうなのか、と前方に座っている女性たちを見る。何も知らない彼女たちは続けた。
「オリバー様の彼女ってどんな人なんだろ」
「やっぱり、美人で頭が良くて仕事のできるスーパーウーマンって感じじゃないの?」
女性でなければ美人でもないし仕事もすごく出来るというわけではない。いたたまれなくてうつむいてしまった。
そんな彼女たちの会話を聞いていないのだろう、ルカスさん達は隣でファンサービスとして会場の子どもと触れ合う選手たちを楽しそうに眺めていた。
「もしくは逆に普通だけどめちゃくちゃセックスがうまいとか!」
きゃはは、と笑いながらも際どい内容についつい聞き耳を立ててしまう。
「ありえるかも……。てかさ、オリバー様の方も慣れてそうだし、セックスもうまそうだよね。前にハプバーに出入りしてるの見たって人いたし。隣に派手な女侍らせてたって」
きっと、ホワイトニーに会いに行った日のことを言っているのだろう。
オリバーは俺としか関係がないが、確かにセックスは上手いと思う。俺もオリバーとしか経験がないから他と比べてどうということではないが、毎回とても気持ちよくなっている。
「そっかなー。逆に割と自分勝手なプレイしそうじゃない? だって放ってても女の方から寄ってきそうじゃん。やっばい趣味があっても肉欲を満たすだけなら不自由してなさそう」
ぎょっとして発言者を見る。派手な金髪に、肌を露出した服を着ている化粧が濃いめの女性だった。
「あー、ハプバー通ってるくらいだもんねぇ」
他の女性も頷く。すっかりその場ではオリバーは遊び人として話が進んでいった。
そんなわけない、と言いたいがそれを言うとなぜ知っているのかという話になる。むかむかと苛立つ気持ちを抱え、今度こそ俺は選手の方へと視線を移したのだった。
「じゃあ、またね、ウィル君! オッドリーに来ることがあったらいつでも声かけてね!」
ぶんぶんと手を降ってルカスさん達は家へと帰っていく。チーム公式のロゴの入ったグッズをいくつか購入しており、日常で使うのだと言っていた。
俺も帰るか、とオッドリー郊外にある飛行場へと足を向ける。そこは竜人がドラゴンになって飛ぶ際に、服を脱いで変身することが出来るように大きめのテントが張ってあり、中には人狼も使っていいというテントがある。そこで狼になって駆ければ三時間ほどでグリークにはたどりつく。
少し歩いたところでふいに、シュウウ……とピアスについているトランシーバーが鳴る。かけてくる相手は一人しかいない。
『ウィル! 見ててくれた!? 俺達が優勝をするところ!』
興奮した声が聞こえてくる。
「ああ……。おめでとう。かっこよかったぞ。……俺は先に帰ってるからお前はゆっくり休んでから……」
『え? 何言ってるの? ウィルも一緒に泊まっていこうよ』
当たり前のように出てきた提案に驚く。
「他のメンバーもいるだろ?」
『いるけど、夜に打ち上げをしたら終わりだよ。ウィル、宿屋で待っててよ! お祝いしてよ!』
浮かれた声に本当に大丈夫かと思ってしまう。
「宿は、チームが用意してくれたんだろ? 部外者の俺が入っていいのか?」
『グレードの高い部屋を自腹で借りておいたよ! 俺は酒を飲まないし、皆疲れてるからすぐに解散すると思うからさ!』
そう言われてしまったら断りづらい。
こうして俺はオリバーの指定した宿へと足を向けた。
「うわぁ……」
見たこともないような細工の施されたランプが黄金に輝き、クイーンサイズのベッドを照らしている。その隣にはソファが置かれ、冷やされたワインが置かれていた。
チーズも並べられ、ここで十分酒が飲める。
「……なんだこれ」
貧乏人の俺からすると落ち着かない。ちょこん、とソファの端のほうに座り、きょろきょろと内装を見回すことしか出来なかった。
「ただいま~!」
ばたん、と扉が開きオリバーが入ってくる。ソファに座っている俺を見つけた彼は目を輝かせ、一直線に小走りになって向かってきた。
「見てた? 俺たち、優勝したよ!」
ぎゅう、と抱きしめられ、耳まで熱くなる。更には急いで帰ってきたであろう彼の匂いも濃い。グラウンドで輝いていた彼を思い出し、ソワソワと落ち着かなかった。
「うん……。すごかったな。特に最後の逆転シュート。レオンさんもルカスさんも興奮してた」
「あ、あの二人もいたよね。めったにないくらい真剣に見ててくれて嬉しかったな」
告げながらオリバーは俺を抱きかかえてベッドに下ろす。酒は飲んでいないようで、アルコールの匂いはあまりしなかった。
彼は緑の瞳をとろけさせる。
「ウィルは? 興奮した?」
試合場で雄々しく活躍していた先ほどとのギャップがすごい。こく、と頷いた俺に嬉しそうに覆いかぶさってきた。ふいに、女性モノの香水の香りが鼻につく。
びくりとして真顔でオリバーを見つめると、彼は気まずそうに目をそらした。
「あー……、わかっちゃう? 実は出待ちの子がいて……。でも、触ってもないし!」
身の潔白を証明するべくオリバーは真剣に告げてくる。
「……まぁ、アレだけ活躍したら女の人に目をつけられるだろうな」
言いながらも心のうちは全く穏やかではない。
両手で彼を引き寄せ、唇に口をつけた。
「……んっ」
驚いたような顔をしながらも、オリバーは受け入れて俺の後頭部に手を回し、舌を侵入させてきた。
「……っ、ふ……、んん……」
くちゅくちゅと水音をさせながら舌同士を絡めあう。オリバーの舌は肉厚で、熱くて、あっという間に頭が沸騰したようになる。
「……どうしたの? 積極的じゃん」
「別に……」
太ももでオリバーのモノを確認する。疲れているからだろうか、まだあまり硬くない。
「するか?」
尋ねると、オリバーはゴク、と喉を鳴らす。わかりやすい反応が可愛らしい。
俺は彼を押し倒すと、ズボンを脱がした。思ったよりも汗の匂いはしない。きっと軽く湯を浴びてから来たのだろう。
「可愛がってやるからな」
れろぉ……、と舌を伸ばして恋人のモノを舐める。ふにふにと袋を揉んでやると、もうパンパンになっているのが可愛らしい。
全部は入らないものの、なんとか喉奥まで含み、足りないところを手で刺激してやる。どんどん熱く硬くなってくる。
「ん……、ぁ……、ふっ……んんっ……、オリバーの、おっきくなってる……」
水音を立ててしゃぶってやると、彼の身体が震える。
「ぅあっ……、なんか、今日のウィル……、エロい……」
息が荒い。舌先でちろちろとくびれの当たりを刺激してやると、余計に苦い味が口内に広がる。
ちゅぱ、と一旦口を離し、片手でしごきながら幼馴染の様子を確認する。耳まで赤くなり、ギラギラと欲情した瞳を俺に向けてきていた。
コートを駆け回り、点を取りまくっていた男がたったこれだけでこんなに可愛らしくなってしまうのだ。何が遊び人だ、と内心で思った。
「今日は、いっぱいお前を労いたいんだよ」
「……そうなの?」
キラリ、とオリバーの瞳が輝く。まだまだ勃ちきっていないそれを引き続きしゃぶろうとしたところで、頭を離され、くるりと押し倒された。
「だったら、やってみたいプレイがあるんだけど……」
懇願されるように上目遣いで見られる。なんでも言うことを聞いてあげたい気持ちになった。
「……なんだ」
「縛らせてほしい……」
上目遣いに言われ、きょとんと目を丸くする。
「あ、もちろん、ムリだったらいいんだけど……」
「いや……、いいけど、そういう願望があったんだな」
意外だった。彼は俺の嫌がることはけしてしない。痛がることも。
こくりとオリバーが頷く。
「俺に縛られて俺のためだけに家で生活してくれる妄想は記憶がなかった時すっごくしてた。イリスにも、他の人にも、誰にも会わないで俺だけのウィルでいてくれればいいのにって」
熱い瞳で見つめられる。そんなことはムリだとわかっているからこそ、優勝したこのタイミングでねだってきたのだろう。
「いい……、けど、あまり期待はするなよ」
「え!?」
オリバーの瞳が輝く。そして、嬉しそうに何度か頷いた。
彼は一度俺から引くと、キャリーを手に取り、身体に巻きつける革製のベルトと手錠を出す。当たり前のように出てきたものだから半眼になった。
「……なんで用意してんだよ」
「今日、くじ引きで当たったんだよ。他にも張り型とか当ててた人いたな……。ちなみに一等賞は普通に現金だった」
へにゃ、とオリバーは笑う。スポーツチームのノリはそんなものなんだな、と遠い目になった。
「これが当たった時、ウィルを縛ってみたいなって思ったんだ。快諾してくれてありがとう」
告げると、オリバーはまず俺の両手を背中へと回し、手錠につなぐ。手錠には革製の輪っかがついていて、腕が痛くならないようになっていた。そういうプレイにつかうものだからだろう。
二の腕にもベルトをつける。短い鎖がついていてベルト同士を繋いでいた。首輪もつけ、そこから伸びている鎖についたクリップを乳首に取り付ける。
「んっ」
さすがにコレは予想していなかった。身体を震わせると、恋人は俺の顔を覗き込んでくる。
「これは嫌?」
きっと嫌だと言えばやめてくれるのだろう。けれど、背中にぞくぞくとしたものが走り、俺はつい首を横に振ってしまった。ホッとしたようにオリバーは目を細め、さらに続ける。
最後は足だ。太ももと足首をつなぐように革のベルトをつけ、更に伸びている長い鎖を左右のベッドの足にくくりつけられた。絶妙な長さで固定され、足を閉じられない。
オリバーは興奮して頬に手を当てた。
「うわ……。これイイ……。俺だけのウィルって感じがする」
更にローションを取り出し手に垂らすと俺の身体に塗りたくっていく。オリバーの手つきがやたらいやらしく、ついつい身体をくねらせてしまった。
「ここ、興奮してよだれ垂らしちゃってるね」
先走りを塗り拡げられ、恥ずかしさに頬が熱くなる。自分だって興奮してペニスが天を仰いでいるくせに。
オリバーは更にローションを指に垂らすと後ろの孔に入れてくる。ならしていないからきついかと思ったが、ローションの助けを借りてするりと受け入れていた。
「……えっろ」
俺の尻の孔は周囲がぷくりと膨らんでいるらしい。オリバーは両手で尻たぶを掴み左右に広げてきた。
「んんっ……」
恥ずかしくて顔を隠したいのに両手が縛られているので出来ない。
「俺の指を美味しそうに食べてる……。気持ちいい?」
コクコクと頷く。ふふ、とオリバーは笑った。
「もう入れていい?」
「ん……、早く……」
俺の身体はすっかりオリバーに与えられる快楽を知ってしまっている。じゅくじゅくと下腹のあたりが切なくもどかしく、早く彼の熱を受け入れたくて仕方がなかった。
ぴと、と先端が当てられる。期待で心臓の鼓動が早くなっていく。
ず、ず、とオリバーのものが挿入される。彼の体温が直接伝わりよりその場所を意識してしまう。
最近俺の身体はおかしい。まだ先端しかはいっていないのに、もうイク直前のような心地になっているのだ。
「あ……っ」
俺のものとは違い、大きくて長いオリバーのペニスに中をえぐられるとすぐに子猫のような声を出してしまう。彼の相好が崩れ嬉しそうに更に奥をついてきた。
「ああっ……、そこ……」
「うん。ここだよね? ウィルの好きなところ」
とん、とんと先端でこすられ、コクコクと頷く。知っているくせに、と思うが、睨むことも出来ず奥歯を噛んで快楽に耐えていた。今更乳首に繋がれたクリップが気になってきた。痛すぎない強さでつまんできていてじわじわと侵食するような快楽を送り込んできている。その上、首輪と繋がっているものだから身体をひねらせるだけで引っ張られるような感じになる。
「いっぱいついてあげるね」
オリバーは告げると俺の腰に手を当て、腰を揺り動かし始めた。
「あっ……、あぁっ……、はげし……っ」
「ごめん、今日、すっごく興奮してて、ちょっと乱暴にするかも……」
声がかすれている。小さい頃から知っている幼馴染はいつのまにか男の色気を凝縮したような顔ができるようになってしまっているようで、俺を喰らい尽くしたいとでも言いたげに目をギラつかせていた。
ぞくぞくと心臓が撫でられたような心持ちになる。
「うん……、優しくしなくていい。好きなように動いていいからっ……!」
水音を立てて再びオリバーが動き出す。はぁ、はぁと吐息を漏らしながらも逃さないとでも言うように正確に奥に向かって突き入れてきた。
「うわ……、ウィルの中、ぎゅうぎゅう抱きしめてきてくれてる。すっごく気持ちいい……」
「好き? オリバー、俺の中に入れるのイイ?」
「んっ……、いい……っ! これすき……っ」
涙目になって快楽を貪っている様子は愛らしい。いつもなら俺の方から抱きつくのだが、今は手足が縛られているから出来ない。
「オリバー……、キスして? ちゅーしてほしいよぅ……」
なんとか腹筋で起き上がろうとするが、繋がったままではうまくいかない。
一度引き抜いたオリバーは俺の上半身を掴み、体位を変え対面座位の形にする。より俺の結腸をいじめるのに都合の良い状態だった。それでも、キスできることが嬉しくてオリバーの唇に唇をあわせる。
「ん……、ちゅ……、ぁ……、ふっ……」
舌同士を絡めあう濃厚なディープキスをしていると、再び侵入してきたオリバーのモノが出し入れを開始する。
「あっ……、んんっ……そこっ……、そこ、好きっ……、すぐ、おかしくなっちゃ……」
奥をつかれるたびに頭が白くなっていく。身体を動かされるたびに鎖が揺れるので、それで乳首も引っ張られる。
「ちくびもっ……、なん……、これぇっ……。ずっと、きもちよくてぇっ……」
「クリップつけられるの、気持ちいいの? ウィル、変態さんだね」
オリバーが笑い混じりに耳元で囁いてくる。逃げるように首を振った。
「やだぁ……っ、言わないで……っ」
「痛くされるの、気持ちいいんだ? 中も、ぎゅうぎゅうってすごく締め付けてる」
「うぅっ……」
どちゅ、と奥をつかれ、メスイキしてしまった。びくん、びくんと魚のように身体が跳ねる。
「イっちゃった? 変態って言われてイっちゃったの?」
「ちがう……、へんたいじゃ、ないぃ……っ」
視界がにじみ、目から涙があふれる。
「オリバーだからぁっ……! おまえ、だから、イイのっ……」
彼の肩をがじがじと噛む。
「んんっ……」
彼の身体が震えた。イったのだろう。気まずそうに、恨めしそうに俺を見る。
「……もー……、ふいうちじゃん」
拗ねた声音は可愛らしい。たったあれだけの言葉で達するなんて。ふ、と俺は笑う。
同時に、また女の子たちのうわさ話を思い出した。何が、慣れてそうだ。これだけの言葉でイっちゃうくらいには純粋で可愛らしい男なんだ、と内心で彼女たちに言い返していた。
「オリバー、かわいい……」
思わず口に出してしまった。まるで子どものように恋人は頬をふくらませる。
「……ウィルってば」
再び腰を掴まれる。達したはずなのに未だに硬いままのそれがさらに奥に入ってきた。
「あぁあっ」
再び結腸をつかれ、身体が震える。
「決めた。今日はやめてって言ってもやめてあげない。一緒に天国へ行こ?」
ずちゅ、ずちゅと結合部から音が漏れる。試合をして疲れているだろうに、何なんだこのスタミナは。
こうして俺は何度達したかわからないまま、最後は鎖を外され、抱きしめあってプレイを終えた。
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