キスで戻る女体化魔法にかかったけど、恋人は記憶を失っている。

箱根ハコ

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第九章「ウィル」

「痛い思いはさせたくない」

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 今日はオリバーの部屋でだった。
 一週間も毎日すれば、段々ルーティーンが決まってくる。
 まずお互いの服を脱がせ合い、キスをしながらオリバーが俺の身体をまさぐってくる。これが大変長い。何十分も体を触られて、最後の方は頭がクラクラしてくる。
 やられっぱなしは嫌なので俺もオリバーのものを舐める。そのたびにこれが自分の中に入ってくるのだと思い何とも言えない気持ちになっていた。

「っ……、ぁ……」

 シックスナインの体位でお互いの性器を口に含んでいる。ちゅぱちゅぱと水音がして舐めあげていると、オリバーが俺の後ろの穴に指を突っ込んできた。ローションを塗りたくっていたのであっさりと指を含む。

「ここ、随分と柔らかくなったね」

 恍惚とした声でオリバーが呟く。恥ずかしくて俯いた。ここに指が入るということは、快楽でぐずぐずに溶かされる時間が始まるということである。気持ちいいが、少し怖い。

「……も、これ、挿れていいぞ」

 れろ、と先端を舐める。ぴくり、とオリバーの身体が震えた。

「ん……、でも、痛い思いはさせたくないし」

 くにくにと前立腺を責められ、頭がぼうっとしてくる。確かめるように幼馴染は一度指を抜くとくぱぁ、と人差し指と中指で左右に開いた。

「んっ……」

 空気に触れて身悶える。

「大丈夫かなぁ……」

 オリバーのモノを見る。大きくて、茎の当たりは血管が浮いている。顔に似合わず凶悪なものに、ごくりとつばを飲んだ。

「これ……、入ってきたら俺どうなっちゃうんだろ……」

 呟いた独り言が聞こえていたようで、オリバーのものがますます大きくなった。

「は……、なに……」

「あーもー! ウィルってそんなに煽り上手だっけ」

 くるん、と身体を反転させられ押し倒される。膝裏を手で割り開きつつ、クッションを腰の下に敷いている。オリバーの部屋に最近追加されたこれは主にセックスの間俺の腰を支えるために使われていた。

「……痛かったら、すぐに言ってね。……止められるかどうかわからないけど」

 ぼそ、と耳元で囁かれる。彼の瞳は潤み、頬は紅潮していた。

「……俺だって、長年好きだった相手との初めてで、緊張してるんだ」

 拗ねたように告げてくる彼が可愛くてどうにかなりそうだった。あ、と口を開け深い口付けを交わす。とろとろの舌とからめ合い、顔を離す。

「一週間もかけて慣らしてくれたんだから、大丈夫だ」

 吐息がかかるほどの近さで返す。オリバーは泣きそうな顔でず、と先端を俺の後ろの穴の縁につけてきた。

「……挿れるよ」

 まずは亀頭が入ってくる。思っていたよりも衝撃がないのは、初めてのときと違って慣らされ、ローションでぬるぬるになっているから。

「……入ってきた……ぁ」

 少しずつ侵入してくる。指の何倍も窮屈で、熱かった。生まれた頃から一緒にいる幼馴染の一部が体内に入ってきたのだと知るとなんとも言えない気持ちになる。

「んんっ……」

 カリのあたりが前立腺に当たり、身体を震わす。思っていた通り、指よりも感じてしまった。

「……痛くない?」

 オリバーが俺の髪をかきあげ、顔を覗き込んでくる。恥ずかしいのに、動けない。俺は何度も頷いた。

「大丈夫だから……、続きして」

「うん……、ウィルの中、すごく気持ちいい……。ぎゅうぎゅうしめつけてきて、温かくて……」

 夢見心地で呟いて、さらに入ってくる。ふいに動かなくなり、見てみると根本まで挿入されていた。
 彼の目がキラキラと輝いている。

「うわぁ……、俺、全部ウィルの中入ってる」

 感動を噛み締めているためか、一度動かず馴染むのを待ってくれてありがたい。しばらくしてオリバーはとん、とんと奥の方を刺激し始めた。

「え……、なんで」

 男なら、思い切り抜き差ししたいだろうに、少しずつ慣らしてくれているのだろうか。

「奥にも、気持ちよくなれるところがあるらしいよ。結腸っていうらしくて……。俺、ウィルにもっと気持ちよくなってほしいからさ」

 何度も刺激を加えられ、えもしれぬ快楽が襲ってくる。

「んんっ……」

「ここも前立腺と同じで快感を感じるようになるのには修行がいるらしいんだけど、ウィルは才能があるみたいだね」

 嬉しそうに瞳を細め、更に腰を動かしてくる。どんどんストロークの幅が大きくなっていった。

「あっ……、あぁっ……、なにこれっ……、なにこれぇっ……」

 びくんびくんと身体が跳ねる。気持ちよくて涙が出そうだった。口を閉じられなくて、ヨダレがこぼれ落ちる。

「うわ……、ウィルの中、びくびくって震えて……、締め付けてきて、気持ちいい……。最高……」

 夢見がちに呟いている。どんどん追い詰められてきて何がなんだかわからない。

「やぁ……、やだっ……、クる……。何か、きちゃうっ……」

 助けを求めるようにオリバーの背中に手を回す。ついつい爪を立ててしまった。

「かわいい……。ウィル、かわいいね。いいよ。いっぱいイって。明日はお休みなんだし、たくさん気持ちよくなろうね」

 どちゅどちゅと結腸をいじめながらも、そんな事を言ってくる。眼の前が真っ白になって、意識を手放していた。

「あぁっ……」

 達したのだろう。奥での絶頂は初めてだった。快楽の海に浸って抜け出せない。

「ウィル、イった? 大丈夫? 気持ちよかった?」

 ぐちゅぐちゅと腰を動かしながらも気遣う姿勢は見せてくる。本人も止められないのだろう。

「ぁ……、ん……」

 けれど答えられない。俺は黙って何度も頷くしかできなかった。オリバーはそれで満足なようで、にぃ、と口角を釣り上げると更についてくる。

「あぁあっ……、あっ……もっ……そこ、いじめちゃ……、だめっ……」

 つかれるたびに絶頂しているような気がする。気持ちよくて、馬鹿になってしまう。

「いじめてないよ。ウィルに気持ちよくなって欲しくてがんばってるの」

 ぐちゅ、どちゅ、と動くたびに卑猥な水音がする。もう辞めてほしいのに、もっと欲しいような不思議な気持ちになった。

「そ……んな、むりっ……むり、もうイけない……、きもちいいの、むりだからぁ……」

 赤ん坊のように泣き出してしまった。慌てて抜こうとするのがさみしくて、腰に足を絡めてしまう。

「え? ウィル……?」

「でていっちゃやだ……。中にいてぇ……」

 快楽でおかしくなっているのは眼の前の男のせいだというのに、まるで甘えるように俺はオリバーに縋ってしまう。

「……なにその拷問」

 苦しそうに金の竜人が呟く。

「じゃあ、中で出していい? ウィルのここ、俺の子種でいっぱいにしていい?」

 ふに、と俺の下腹の当たりを抑える。彼の手の上から俺も手を重ねた。

「うん……、して? オリバーの、俺の中でたくさん出して?」

 平素の俺だったら、絶対に言わないであろう言葉が口から出てくる。ごくり、と喉仏を動かし、腰を押さえてきた。

「ごめん、もうちょっとがんばってね」

 ず、と一度引き抜くと再び中に挿れる。これまで俺を気遣ってきたオリバーがようやく自分の快楽のために動き始めた。

「あっ……、んっ……あぁっ……そこ、すきっ! きもちいい……!」

「ん……っ、俺も、いいっ」

 オリバーの眉間にシワが寄っていく。乱暴に動かされると、そのたびに好きという気持ちが溢れ出す。自分はそういう性癖だったのだろうか。
 次第に腰の動きが早くなる。ペニスもびくびくと震えてきた。

「イく……、もっ……」

 どちゅん、と奥まで突き入れると中に出す。熱い飛沫が飛び出しているのを感じて、頭が白くなった。
 出されてイッったのだ。ぎゅうぎゅうとオリバーを締め付け、浅い呼吸を繰り返す。

「……すご。気持ちよくて変になる」

 そんな可愛いことを言いながら落ちてきた恋人は隠していた羽と尻尾を出して巻き付いてくる。絶頂の余韻が収まるまで、しばらくそうしてお互いの体温を感じていたのだった。





 初めての体験に、お互いに疲れていたのだろう。寝落ちして、一晩経ってしまった。
 ずっとオリバーのものが入っていた上に、開脚したままだった足は馬鹿になってしまっており、体中が痛い。お互いに回復魔法をかけあい、ようやく身体が動くようになったころには昼を超えていた。

「……今日は獣人には誰も会えないね」

 ぐう、とお腹がなるが、起き上がる気にはなれずオリバーの温かさに包まれていた。

「あ、そうだ、ウィル。これ」

 ごそごそとオリバーがベッドサイドに置いていた小箱を取り出す。
 中には例の指輪が入っていた。オリバーがWと頭文字のつく人間を選んでデートすることにしたきっかけの指輪。

「……あ」

「もらってくれる?」

 瞳は真剣で、俺はごくりと唾液を嚥下する。

「……うん。俺からも、そのうち贈らせてくれ」

 頷き返すとオリバーは俺の指を掴み、左手の薬指にはめてくる。

「楽しみにしてるね」

「そうだな……。ずっと、もらってばかりだし」

 そっと腕輪に触れる。ピアスも結局オリバーに金を払っていない。更には指輪まで。

「イイよ、別に。ってか、腕輪もピアスもどちらかというと張り合う気持ちの方が強かったし」

「張り合う?」

 何とだ? と彼を見つめると、オリバーは少し恥ずかしそうに視線をそらした。

「……ウィル、ずっとイリスに買ってもらった服着てただろ? ……服なら毎日は着ないけど、ピアスや腕輪なら毎日つけられるじゃん」

「……は?」

 目を丸くする。そういえば、ピアスも腕輪も毎日装着していた。

「……あの頃から、張り合っていたのか?」

 腕輪はかなり最初に買ってもらったものだ。当時の彼は俺にそこまで興味を持っていないと思っていた。金の竜人はコクリと頷く。

「つけてくれてるの見て嬉しかった。……ピアスは、ウィルの好きな人とやらにザマァ見ろって思ってた。……まぁ、それは俺だったんだけど」

 手を取り、オリバーの指と絡ませられる。俺の手には受け取ったばかりの指輪が輝いていた。

「これからは、ウィルのここに指輪がずっとついてるの、嬉しすぎる」

 へにゃり、と笑う。こんなことで喜んでくれるのかと思うと不思議な気持ちになった。
 そういえば、コレを買ったのは初夜に失敗してあまりお互いに触れなくなっていた時期だった。彼なりに不安だったのだろうか。
 頑張って働いて、俺も一刻も早く指輪を買おう。彼に似合いの、WtoOと記載されているものを。



__________________________

これで一旦本編は終わりです。
次回以降はおまけのただウィルとオリバーがいちゃいちゃするだけのお話です。
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