52 / 55
第九章「ウィル」
「痛い思いはさせたくない」
しおりを挟む今日はオリバーの部屋でだった。
一週間も毎日すれば、段々ルーティーンが決まってくる。
まずお互いの服を脱がせ合い、キスをしながらオリバーが俺の身体をまさぐってくる。これが大変長い。何十分も体を触られて、最後の方は頭がクラクラしてくる。
やられっぱなしは嫌なので俺もオリバーのものを舐める。そのたびにこれが自分の中に入ってくるのだと思い何とも言えない気持ちになっていた。
「っ……、ぁ……」
シックスナインの体位でお互いの性器を口に含んでいる。ちゅぱちゅぱと水音がして舐めあげていると、オリバーが俺の後ろの穴に指を突っ込んできた。ローションを塗りたくっていたのであっさりと指を含む。
「ここ、随分と柔らかくなったね」
恍惚とした声でオリバーが呟く。恥ずかしくて俯いた。ここに指が入るということは、快楽でぐずぐずに溶かされる時間が始まるということである。気持ちいいが、少し怖い。
「……も、これ、挿れていいぞ」
れろ、と先端を舐める。ぴくり、とオリバーの身体が震えた。
「ん……、でも、痛い思いはさせたくないし」
くにくにと前立腺を責められ、頭がぼうっとしてくる。確かめるように幼馴染は一度指を抜くとくぱぁ、と人差し指と中指で左右に開いた。
「んっ……」
空気に触れて身悶える。
「大丈夫かなぁ……」
オリバーのモノを見る。大きくて、茎の当たりは血管が浮いている。顔に似合わず凶悪なものに、ごくりとつばを飲んだ。
「これ……、入ってきたら俺どうなっちゃうんだろ……」
呟いた独り言が聞こえていたようで、オリバーのものがますます大きくなった。
「は……、なに……」
「あーもー! ウィルってそんなに煽り上手だっけ」
くるん、と身体を反転させられ押し倒される。膝裏を手で割り開きつつ、クッションを腰の下に敷いている。オリバーの部屋に最近追加されたこれは主にセックスの間俺の腰を支えるために使われていた。
「……痛かったら、すぐに言ってね。……止められるかどうかわからないけど」
ぼそ、と耳元で囁かれる。彼の瞳は潤み、頬は紅潮していた。
「……俺だって、長年好きだった相手との初めてで、緊張してるんだ」
拗ねたように告げてくる彼が可愛くてどうにかなりそうだった。あ、と口を開け深い口付けを交わす。とろとろの舌とからめ合い、顔を離す。
「一週間もかけて慣らしてくれたんだから、大丈夫だ」
吐息がかかるほどの近さで返す。オリバーは泣きそうな顔でず、と先端を俺の後ろの穴の縁につけてきた。
「……挿れるよ」
まずは亀頭が入ってくる。思っていたよりも衝撃がないのは、初めてのときと違って慣らされ、ローションでぬるぬるになっているから。
「……入ってきた……ぁ」
少しずつ侵入してくる。指の何倍も窮屈で、熱かった。生まれた頃から一緒にいる幼馴染の一部が体内に入ってきたのだと知るとなんとも言えない気持ちになる。
「んんっ……」
カリのあたりが前立腺に当たり、身体を震わす。思っていた通り、指よりも感じてしまった。
「……痛くない?」
オリバーが俺の髪をかきあげ、顔を覗き込んでくる。恥ずかしいのに、動けない。俺は何度も頷いた。
「大丈夫だから……、続きして」
「うん……、ウィルの中、すごく気持ちいい……。ぎゅうぎゅうしめつけてきて、温かくて……」
夢見心地で呟いて、さらに入ってくる。ふいに動かなくなり、見てみると根本まで挿入されていた。
彼の目がキラキラと輝いている。
「うわぁ……、俺、全部ウィルの中入ってる」
感動を噛み締めているためか、一度動かず馴染むのを待ってくれてありがたい。しばらくしてオリバーはとん、とんと奥の方を刺激し始めた。
「え……、なんで」
男なら、思い切り抜き差ししたいだろうに、少しずつ慣らしてくれているのだろうか。
「奥にも、気持ちよくなれるところがあるらしいよ。結腸っていうらしくて……。俺、ウィルにもっと気持ちよくなってほしいからさ」
何度も刺激を加えられ、えもしれぬ快楽が襲ってくる。
「んんっ……」
「ここも前立腺と同じで快感を感じるようになるのには修行がいるらしいんだけど、ウィルは才能があるみたいだね」
嬉しそうに瞳を細め、更に腰を動かしてくる。どんどんストロークの幅が大きくなっていった。
「あっ……、あぁっ……、なにこれっ……、なにこれぇっ……」
びくんびくんと身体が跳ねる。気持ちよくて涙が出そうだった。口を閉じられなくて、ヨダレがこぼれ落ちる。
「うわ……、ウィルの中、びくびくって震えて……、締め付けてきて、気持ちいい……。最高……」
夢見がちに呟いている。どんどん追い詰められてきて何がなんだかわからない。
「やぁ……、やだっ……、クる……。何か、きちゃうっ……」
助けを求めるようにオリバーの背中に手を回す。ついつい爪を立ててしまった。
「かわいい……。ウィル、かわいいね。いいよ。いっぱいイって。明日はお休みなんだし、たくさん気持ちよくなろうね」
どちゅどちゅと結腸をいじめながらも、そんな事を言ってくる。眼の前が真っ白になって、意識を手放していた。
「あぁっ……」
達したのだろう。奥での絶頂は初めてだった。快楽の海に浸って抜け出せない。
「ウィル、イった? 大丈夫? 気持ちよかった?」
ぐちゅぐちゅと腰を動かしながらも気遣う姿勢は見せてくる。本人も止められないのだろう。
「ぁ……、ん……」
けれど答えられない。俺は黙って何度も頷くしかできなかった。オリバーはそれで満足なようで、にぃ、と口角を釣り上げると更についてくる。
「あぁあっ……、あっ……もっ……そこ、いじめちゃ……、だめっ……」
つかれるたびに絶頂しているような気がする。気持ちよくて、馬鹿になってしまう。
「いじめてないよ。ウィルに気持ちよくなって欲しくてがんばってるの」
ぐちゅ、どちゅ、と動くたびに卑猥な水音がする。もう辞めてほしいのに、もっと欲しいような不思議な気持ちになった。
「そ……んな、むりっ……むり、もうイけない……、きもちいいの、むりだからぁ……」
赤ん坊のように泣き出してしまった。慌てて抜こうとするのがさみしくて、腰に足を絡めてしまう。
「え? ウィル……?」
「でていっちゃやだ……。中にいてぇ……」
快楽でおかしくなっているのは眼の前の男のせいだというのに、まるで甘えるように俺はオリバーに縋ってしまう。
「……なにその拷問」
苦しそうに金の竜人が呟く。
「じゃあ、中で出していい? ウィルのここ、俺の子種でいっぱいにしていい?」
ふに、と俺の下腹の当たりを抑える。彼の手の上から俺も手を重ねた。
「うん……、して? オリバーの、俺の中でたくさん出して?」
平素の俺だったら、絶対に言わないであろう言葉が口から出てくる。ごくり、と喉仏を動かし、腰を押さえてきた。
「ごめん、もうちょっとがんばってね」
ず、と一度引き抜くと再び中に挿れる。これまで俺を気遣ってきたオリバーがようやく自分の快楽のために動き始めた。
「あっ……、んっ……あぁっ……そこ、すきっ! きもちいい……!」
「ん……っ、俺も、いいっ」
オリバーの眉間にシワが寄っていく。乱暴に動かされると、そのたびに好きという気持ちが溢れ出す。自分はそういう性癖だったのだろうか。
次第に腰の動きが早くなる。ペニスもびくびくと震えてきた。
「イく……、もっ……」
どちゅん、と奥まで突き入れると中に出す。熱い飛沫が飛び出しているのを感じて、頭が白くなった。
出されてイッったのだ。ぎゅうぎゅうとオリバーを締め付け、浅い呼吸を繰り返す。
「……すご。気持ちよくて変になる」
そんな可愛いことを言いながら落ちてきた恋人は隠していた羽と尻尾を出して巻き付いてくる。絶頂の余韻が収まるまで、しばらくそうしてお互いの体温を感じていたのだった。
初めての体験に、お互いに疲れていたのだろう。寝落ちして、一晩経ってしまった。
ずっとオリバーのものが入っていた上に、開脚したままだった足は馬鹿になってしまっており、体中が痛い。お互いに回復魔法をかけあい、ようやく身体が動くようになったころには昼を超えていた。
「……今日は獣人には誰も会えないね」
ぐう、とお腹がなるが、起き上がる気にはなれずオリバーの温かさに包まれていた。
「あ、そうだ、ウィル。これ」
ごそごそとオリバーがベッドサイドに置いていた小箱を取り出す。
中には例の指輪が入っていた。オリバーがWと頭文字のつく人間を選んでデートすることにしたきっかけの指輪。
「……あ」
「もらってくれる?」
瞳は真剣で、俺はごくりと唾液を嚥下する。
「……うん。俺からも、そのうち贈らせてくれ」
頷き返すとオリバーは俺の指を掴み、左手の薬指にはめてくる。
「楽しみにしてるね」
「そうだな……。ずっと、もらってばかりだし」
そっと腕輪に触れる。ピアスも結局オリバーに金を払っていない。更には指輪まで。
「イイよ、別に。ってか、腕輪もピアスもどちらかというと張り合う気持ちの方が強かったし」
「張り合う?」
何とだ? と彼を見つめると、オリバーは少し恥ずかしそうに視線をそらした。
「……ウィル、ずっとイリスに買ってもらった服着てただろ? ……服なら毎日は着ないけど、ピアスや腕輪なら毎日つけられるじゃん」
「……は?」
目を丸くする。そういえば、ピアスも腕輪も毎日装着していた。
「……あの頃から、張り合っていたのか?」
腕輪はかなり最初に買ってもらったものだ。当時の彼は俺にそこまで興味を持っていないと思っていた。金の竜人はコクリと頷く。
「つけてくれてるの見て嬉しかった。……ピアスは、ウィルの好きな人とやらにザマァ見ろって思ってた。……まぁ、それは俺だったんだけど」
手を取り、オリバーの指と絡ませられる。俺の手には受け取ったばかりの指輪が輝いていた。
「これからは、ウィルのここに指輪がずっとついてるの、嬉しすぎる」
へにゃり、と笑う。こんなことで喜んでくれるのかと思うと不思議な気持ちになった。
そういえば、コレを買ったのは初夜に失敗してあまりお互いに触れなくなっていた時期だった。彼なりに不安だったのだろうか。
頑張って働いて、俺も一刻も早く指輪を買おう。彼に似合いの、WtoOと記載されているものを。
__________________________
これで一旦本編は終わりです。
次回以降はおまけのただウィルとオリバーがいちゃいちゃするだけのお話です。
60
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる