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第二章「さらに7回追加されました」
第二章第41話「も~、ウィルにだけって約束だったのに」
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オリバー君はドラゴンの形状になっても一度に二人までしか乗せられない。まずはパウル君とピオさんを運び、レオン君とオロスさん、最後に僕とウィル君を運んだ。
「うわぁ、本当にぴかぴかしているんだね! 君の逆鱗は」
夜空を飛んでいる中、僕はオリバー君の逆鱗があまりにも綺麗でついつい叫んでしまった。
「も~、ウィルにだけって約束だったのに」
「そんな約束、した覚えないだろ……」
オリバー君の言葉に、ウィル君は呆れた顔をする。オリバー君の逆鱗はずっときれいな金色の光を発していた。
「ねぇ、ウィル。今日一日他人の記憶が読めたってことは、俺の記憶も読んでいたの?」
風の音に紛れてオリバー君が尋ねてきた。ウィル君は首を横に振った。
「読んでいない。俺は複製した能力を使わないでいることもできるから。……それに、怖くて見られなかったよ。宿屋のおかみさんで試してみたんだけど、やたら自分がちっぽけな人間に映っていて……。他人から見た俺の印象を否応なしに見せつけられるんだ。少し、パウルさんに同情してしまったな」
ウィル君は肩を落とす。
「見てくれて良かったのに。俺がどんだけウィルを好きか言わなくてもわかったと思うよ」
「それはもういいよ……」
どこか疲れたようにウィル君は返していた。横目で見ると真顔だったので、本心から告げているのだろう。相変わらずこの二人の距離感はよくわからない。
ぴかぴかと輝く逆鱗を眺めていると、あ、とオリバー君が少しだけ振り返る。
「ねぇ、ウィル。光る逆鱗は二人だけの秘密じゃなくなったから、空から見る花火の綺麗さを俺たちだけの秘密にしようよ」
オリバー君の声が笑っている。自慢したいようだった。こういうところはまだ幼い子供のようで可愛らしい。
「へぇ、そんなことをしていたのかい?」
きっとこの高さから見る花火は見ごたえがあるだろう。僕は足の下に広がる夜景を見ながら考える。オリバー君が上機嫌で答えた。
「うん、すごい迫力できれいだったなぁ。あんまり近寄ると怒られるから、ちょっと遠くだったけれど」
ウィル君は感慨深げにオリバー君の鱗を撫でた。
「そうか……。また、空から花火が見られるんだな……」
彼の顔が揺らぐ。きらきらと目尻が輝いていた。オリバー君の逆鱗から放たれる光で彼の輪郭が見えた。あどけない子供のようでいて、一つの長い旅が終わった大人のような、何とも言えない顔をしていた。
思わず手を伸ばし、彼の頭を撫でる。
「お疲れ様」
耳元で囁く。彼は照れくさそうに、それでも頬を緩ませて僕を見た。
オリバー君が虜になるのも仕方ないと思うような、美しい表情だった。
ピオさんに指示されて到着したのは、堅牢な岩壁に囲まれた豪華な家だった。
「お疲れ様! これで全員だな」
誘導灯としてランプを数個庭に並べてくれていたピオさんは、無事に僕たちが到着したのを見つけて笑顔で出迎えてくれた。
レオン君はオロスさん達の見張りで地下にいるらしい。ピオさんの隣に壮年の男性と女性が立っていた。
「紹介するよ。こちら、カールさんとソフィーさん。俺がウィルやオリバーを保護した事件で一緒に奮闘してくださった警察官の二人だ」
彼らはニコニコとした笑顔で僕たちを出迎えてくれた。
てっきり、もう少し若い人かと思っていたので人の良さそうなおじいさんとおばあさんが現れて驚いた。
「去年か一昨年に引退したんだ。俺が新人の頃から良く面倒を見てくれた。オリバーにお願いして呼んできてもらったんだ」
そういえば、オリバー君はフェスティバルの前日に何処かへ出かけていた。
「よろしくね」
ソフィーさんが手を差し伸べてくれる。僕は皺だらけのその手を握り返した。この国で女性が警官として勤め上げたというのは極めて稀なので、その意味でも内心驚いていた。
「あなたがレオンのパートナーかい? 芯の強そうな子だ」
カールさんと握手をする。彼らはウィル君ともハグをし、ドラゴンの形態のオリバー君抱きしめていた。
「あの小さな子供が、よくもまぁこんなに大きくなって」
ソフィーさんがオリバー君の頭を撫でる。オリバー君は機嫌良さそうに尻尾を振っていた。
「ソフィーたちは、あんまり変わってないね」
「そりゃもう私達はいい年だもの」
ケラケラと笑い、彼女たちは屋敷の中に案内をしてくれる。ここはソフィーさんの別荘で、カールさん共々オリバー君の背中に乗ってここまで来て、独自のルートでメウト内部の事を調べていたらしい。
「ソフィーさんはオリバー君達と面識があるんですか?」
不思議に思い尋ねる。ピオさんとオリバー君たちはお互いの顔を知らなかったのに。
「ああ。私とレオン、カールとピオでコンビを組んで動いていたからね。それで、この子達を保護してその日のうちにレオンが連れ帰ったから」
「そこでルカスに会ったんだよね。懐かしいな」
ソフィーさんの話にオリバー君が同調する。そういう経緯だったのかと二人を見た日のことを思い出した。
「話は大体ピオから聞いたよ。で、警察も手配済みさ。明日になったらウィルが言っていた竜人とやらも助けられるだろうね」
「あれ、でもここの警察はメウトと癒着しているんじゃ……」
僕は首を傾げる。カールさんがニヤっと笑った。
「だから俺たちが来たんだよ。なぁに、ここの上の奴に知り合いがいるからな。圧力をかけよう」
「ピオやレオンが嘘をつくとは思えないからね。それに、こっちには証人もいる」
ソフィーさんは僕とウィル君を見る。
そうして次の日、まずはパウル君とオロスさんが重要参考人として警察に連れて行かれた。
オロスさんはさらなる余罪が見つかり、本格的に裁判にかけられるという。
あの論文を書くために四人の竜人を〝解体〟していたらしく、それらが全て白日のもとに晒されたのだった。
「うわぁ、本当にぴかぴかしているんだね! 君の逆鱗は」
夜空を飛んでいる中、僕はオリバー君の逆鱗があまりにも綺麗でついつい叫んでしまった。
「も~、ウィルにだけって約束だったのに」
「そんな約束、した覚えないだろ……」
オリバー君の言葉に、ウィル君は呆れた顔をする。オリバー君の逆鱗はずっときれいな金色の光を発していた。
「ねぇ、ウィル。今日一日他人の記憶が読めたってことは、俺の記憶も読んでいたの?」
風の音に紛れてオリバー君が尋ねてきた。ウィル君は首を横に振った。
「読んでいない。俺は複製した能力を使わないでいることもできるから。……それに、怖くて見られなかったよ。宿屋のおかみさんで試してみたんだけど、やたら自分がちっぽけな人間に映っていて……。他人から見た俺の印象を否応なしに見せつけられるんだ。少し、パウルさんに同情してしまったな」
ウィル君は肩を落とす。
「見てくれて良かったのに。俺がどんだけウィルを好きか言わなくてもわかったと思うよ」
「それはもういいよ……」
どこか疲れたようにウィル君は返していた。横目で見ると真顔だったので、本心から告げているのだろう。相変わらずこの二人の距離感はよくわからない。
ぴかぴかと輝く逆鱗を眺めていると、あ、とオリバー君が少しだけ振り返る。
「ねぇ、ウィル。光る逆鱗は二人だけの秘密じゃなくなったから、空から見る花火の綺麗さを俺たちだけの秘密にしようよ」
オリバー君の声が笑っている。自慢したいようだった。こういうところはまだ幼い子供のようで可愛らしい。
「へぇ、そんなことをしていたのかい?」
きっとこの高さから見る花火は見ごたえがあるだろう。僕は足の下に広がる夜景を見ながら考える。オリバー君が上機嫌で答えた。
「うん、すごい迫力できれいだったなぁ。あんまり近寄ると怒られるから、ちょっと遠くだったけれど」
ウィル君は感慨深げにオリバー君の鱗を撫でた。
「そうか……。また、空から花火が見られるんだな……」
彼の顔が揺らぐ。きらきらと目尻が輝いていた。オリバー君の逆鱗から放たれる光で彼の輪郭が見えた。あどけない子供のようでいて、一つの長い旅が終わった大人のような、何とも言えない顔をしていた。
思わず手を伸ばし、彼の頭を撫でる。
「お疲れ様」
耳元で囁く。彼は照れくさそうに、それでも頬を緩ませて僕を見た。
オリバー君が虜になるのも仕方ないと思うような、美しい表情だった。
ピオさんに指示されて到着したのは、堅牢な岩壁に囲まれた豪華な家だった。
「お疲れ様! これで全員だな」
誘導灯としてランプを数個庭に並べてくれていたピオさんは、無事に僕たちが到着したのを見つけて笑顔で出迎えてくれた。
レオン君はオロスさん達の見張りで地下にいるらしい。ピオさんの隣に壮年の男性と女性が立っていた。
「紹介するよ。こちら、カールさんとソフィーさん。俺がウィルやオリバーを保護した事件で一緒に奮闘してくださった警察官の二人だ」
彼らはニコニコとした笑顔で僕たちを出迎えてくれた。
てっきり、もう少し若い人かと思っていたので人の良さそうなおじいさんとおばあさんが現れて驚いた。
「去年か一昨年に引退したんだ。俺が新人の頃から良く面倒を見てくれた。オリバーにお願いして呼んできてもらったんだ」
そういえば、オリバー君はフェスティバルの前日に何処かへ出かけていた。
「よろしくね」
ソフィーさんが手を差し伸べてくれる。僕は皺だらけのその手を握り返した。この国で女性が警官として勤め上げたというのは極めて稀なので、その意味でも内心驚いていた。
「あなたがレオンのパートナーかい? 芯の強そうな子だ」
カールさんと握手をする。彼らはウィル君ともハグをし、ドラゴンの形態のオリバー君抱きしめていた。
「あの小さな子供が、よくもまぁこんなに大きくなって」
ソフィーさんがオリバー君の頭を撫でる。オリバー君は機嫌良さそうに尻尾を振っていた。
「ソフィーたちは、あんまり変わってないね」
「そりゃもう私達はいい年だもの」
ケラケラと笑い、彼女たちは屋敷の中に案内をしてくれる。ここはソフィーさんの別荘で、カールさん共々オリバー君の背中に乗ってここまで来て、独自のルートでメウト内部の事を調べていたらしい。
「ソフィーさんはオリバー君達と面識があるんですか?」
不思議に思い尋ねる。ピオさんとオリバー君たちはお互いの顔を知らなかったのに。
「ああ。私とレオン、カールとピオでコンビを組んで動いていたからね。それで、この子達を保護してその日のうちにレオンが連れ帰ったから」
「そこでルカスに会ったんだよね。懐かしいな」
ソフィーさんの話にオリバー君が同調する。そういう経緯だったのかと二人を見た日のことを思い出した。
「話は大体ピオから聞いたよ。で、警察も手配済みさ。明日になったらウィルが言っていた竜人とやらも助けられるだろうね」
「あれ、でもここの警察はメウトと癒着しているんじゃ……」
僕は首を傾げる。カールさんがニヤっと笑った。
「だから俺たちが来たんだよ。なぁに、ここの上の奴に知り合いがいるからな。圧力をかけよう」
「ピオやレオンが嘘をつくとは思えないからね。それに、こっちには証人もいる」
ソフィーさんは僕とウィル君を見る。
そうして次の日、まずはパウル君とオロスさんが重要参考人として警察に連れて行かれた。
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