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第二章「さらに7回追加されました」
第二章第5話「夢で見たんだよ」
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「とにかく、本当にここにウィル君はいないよ。悪いけど帰ってくれないかな。僕は今からオッドリーに行くから」
「オッドリーへ? 何しに?」
オリバー君は首をかしげる。たしかに普段引きこもっている僕が外に出ることは珍しいだろう。
「レオン君を……」
そこまで言って口をつぐむ。オッドリーに行く目的はレオン君を危機から救うためだが、だとしたら今、時間を繰り返していると告げなくてはいけなくなる。そして、自分が知っている一番最後のオリバー君の情報はウィル君と別れた事だ。
今それを言うと追い打ちをかけることにならないだろうか。
もちろん、ウィル君については話さずに触りだけ話すことは出来るが、オリバー君は確実に気にするし聞きたがる。これから起こる未来に対して嘘をつくのは申し訳ないと思った。
僕はマジマジとオリバー君を見る。彼は外から見たら浮気性に見えるが、この六年の間ずっとウィル君に執心している。何度もウィル君が逃げ出すたびにここに来るが、そのたびに内心傷ついていると知っている。あえて今言うことではないだろう。
「……レオン君に会う用事があるだけ。とにかく、急いでるから」
帰ってもらおうとしたところで、オリバー君に腕を掴まれた。
「俺も行く。しばらくルカスから離れない」
「……は?」
彼の瞳は真剣そのもので、僕は顔をしかめた。
「ルカスも知っているでしょ? 俺の才能」
能力があるものなら基本的な魔術であれば勉強して習得出来る。その中でも相性がいい魔術は通常の倍以上の効果を発揮する。これらは個人が生来持っている特殊能力だと言われており、わざわざ呪文を詠唱しなくても使用できるくらいにその人にとって身近な能力となっている。
僕たちが学園に居た頃には特別な名前をつけられていなかったが、最近では才能と呼ばれるようになっていた。
僕の場合は無効化であり、その名の通り僕の身に降りかかる状態異常を無効にできる能力だ。このおかげでループの間も記憶を保っていられる。
「……まさか」
僕は唾を飲む。コクリ、とオリバー君は頷いた。
「夢で見たんだよ。ミニスカメイド服を着たルカスとウィルが抱きしめあっているのを。俺の予知夢は必ず当たる。つまり、ルカスについていけばいつかウィルにも会えるはずなんだ」
彼の才能は未来予知であり、夢に見たことが現実に起こるらしい。けれど、いつ、どこでといった細かい事は知りようがなく、本人曰く扱いづらい能力らしい。
「ミニスカメイド服って……。僕が着るわけないよ、レオン君の前以外で」
「……レオンの前だったら着るんだ」
「着るとしてもレオン君の需要がないと着ないから。とりあえず、その未来予知はきっと間違っているよ」
未来予知ができると聞いてはいるが、これまでに僕は彼の予知夢が当たったところを見たことがない。それに、当たりそうもない未来を告げられたことで僕はまともに相手をする気がなくなった。
僕は荷物を手に取り立ち上がる。
「君たち竜人は人間の二十倍鼻が効くんだろう? 匂いで探せなかったのかい?」
ドアに鍵をかけるとオッドリーへの道を進む。当たり前のようにオリバー君はついてきた。
「ウィルがニオイ対策をしないわけがないだろ? 匂い消しの薬を使った上に香水をふりかけたみたいで、全然わからなかった。だったら未来で会うことがわかっているルカスのところに来てウィルが訪れるのを待っていたほうが確実だろ?」
そうだろうか。素直に探し回ったほうが早いのでは、とは思ったが、オリバー君も必死なのだろう。相変わらずついてくるようなので飽きるまでは自由にさせることにした。
何より今は一秒でも時間が惜しい。早くレオン君に会って未来の出来事を伝えなければいけないのだ。
僕は歩を早める。万年運動不足の僕の脚にオリバー君は軽々とついてきて、結局二人でオッドリーに行くことになったのだ。
「オッドリーへ? 何しに?」
オリバー君は首をかしげる。たしかに普段引きこもっている僕が外に出ることは珍しいだろう。
「レオン君を……」
そこまで言って口をつぐむ。オッドリーに行く目的はレオン君を危機から救うためだが、だとしたら今、時間を繰り返していると告げなくてはいけなくなる。そして、自分が知っている一番最後のオリバー君の情報はウィル君と別れた事だ。
今それを言うと追い打ちをかけることにならないだろうか。
もちろん、ウィル君については話さずに触りだけ話すことは出来るが、オリバー君は確実に気にするし聞きたがる。これから起こる未来に対して嘘をつくのは申し訳ないと思った。
僕はマジマジとオリバー君を見る。彼は外から見たら浮気性に見えるが、この六年の間ずっとウィル君に執心している。何度もウィル君が逃げ出すたびにここに来るが、そのたびに内心傷ついていると知っている。あえて今言うことではないだろう。
「……レオン君に会う用事があるだけ。とにかく、急いでるから」
帰ってもらおうとしたところで、オリバー君に腕を掴まれた。
「俺も行く。しばらくルカスから離れない」
「……は?」
彼の瞳は真剣そのもので、僕は顔をしかめた。
「ルカスも知っているでしょ? 俺の才能」
能力があるものなら基本的な魔術であれば勉強して習得出来る。その中でも相性がいい魔術は通常の倍以上の効果を発揮する。これらは個人が生来持っている特殊能力だと言われており、わざわざ呪文を詠唱しなくても使用できるくらいにその人にとって身近な能力となっている。
僕たちが学園に居た頃には特別な名前をつけられていなかったが、最近では才能と呼ばれるようになっていた。
僕の場合は無効化であり、その名の通り僕の身に降りかかる状態異常を無効にできる能力だ。このおかげでループの間も記憶を保っていられる。
「……まさか」
僕は唾を飲む。コクリ、とオリバー君は頷いた。
「夢で見たんだよ。ミニスカメイド服を着たルカスとウィルが抱きしめあっているのを。俺の予知夢は必ず当たる。つまり、ルカスについていけばいつかウィルにも会えるはずなんだ」
彼の才能は未来予知であり、夢に見たことが現実に起こるらしい。けれど、いつ、どこでといった細かい事は知りようがなく、本人曰く扱いづらい能力らしい。
「ミニスカメイド服って……。僕が着るわけないよ、レオン君の前以外で」
「……レオンの前だったら着るんだ」
「着るとしてもレオン君の需要がないと着ないから。とりあえず、その未来予知はきっと間違っているよ」
未来予知ができると聞いてはいるが、これまでに僕は彼の予知夢が当たったところを見たことがない。それに、当たりそうもない未来を告げられたことで僕はまともに相手をする気がなくなった。
僕は荷物を手に取り立ち上がる。
「君たち竜人は人間の二十倍鼻が効くんだろう? 匂いで探せなかったのかい?」
ドアに鍵をかけるとオッドリーへの道を進む。当たり前のようにオリバー君はついてきた。
「ウィルがニオイ対策をしないわけがないだろ? 匂い消しの薬を使った上に香水をふりかけたみたいで、全然わからなかった。だったら未来で会うことがわかっているルカスのところに来てウィルが訪れるのを待っていたほうが確実だろ?」
そうだろうか。素直に探し回ったほうが早いのでは、とは思ったが、オリバー君も必死なのだろう。相変わらずついてくるようなので飽きるまでは自由にさせることにした。
何より今は一秒でも時間が惜しい。早くレオン君に会って未来の出来事を伝えなければいけないのだ。
僕は歩を早める。万年運動不足の僕の脚にオリバー君は軽々とついてきて、結局二人でオッドリーに行くことになったのだ。
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