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第4話 「最初から僕とレオン君はくっつかない運命にあったんだ」
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結果、世界が滅亡した。
嘘みたいだと思うが、空に黒雲がかかり、毒が降り注いで一週間の内に人間が全滅した。僕も巻き込まれて死んだ。
どうやら僕がパーティに加わらないと全滅エンドになってしまうみたいだな、と悟った僕は、卒業直前に学園に戻ることにしてそれまでは諸国を巡って情報を集めることにした。
そうして訪問した先で、僕は東の魔女と呼ばれている大魔法使いミランダが、シュタインを生み出すべく材料を集めている現場に行き当たってしまった。
自然発生的に現れたのだと思っていたシュタインはミランダが魔獣の骨や魔力の宿った鉱石、樹液や植物から生み出したキメラだと知った。しかし、わかった頃には材料が揃っていたためにシュタインが生み出されてしまっていた。
彼女は古今東西の書物を集めており、書物の一つに書かれていたキメラ製作の秘術を試してみたいという好奇心からシュタインを作ってしまったようで、自我を持ったシュタインに一番に殺されてしまったのだろう。ミランダの屋敷が無人の廃墟となっていた事で僕はそう見当をつけた。
その後シュタインは彼女の書物を読み漁り、大量に魔獣や魔物を作り出し自分の使い魔とした。使い魔となった彼らは人間を殺し、食料としてシュタインに献上していった。
シュタインの誕生秘話を知り、シュタインを倒す仲間を探して旅を続けていた僕は、僕以外の人をサポーターとして仲間に加えたレオン君達勇者様御一行を発見した。僕の時よりも円滑にコミュニケーションが行えている様子にショックを受けつつも、つい気になってストーカーのように彼らの旅をつけてしまった。
結果、いつもならばシュタインを倒した所で僕のかわりにそのサポーターが死に、生きながらえた僕はシュタイン討伐後のレオン君とエミリアさんの様子を知れた。
彼らはフィリップ君達の死を悲しみ、寄り添うように一緒に居て抱きしめあっていた。
なるほど、とようやく僕は腑に落ちた。
レオン君とエミリアさんは恋人だったのか。であれば、確かに男から告白されたら気持ち悪いし、戸惑うよな、と納得する。
最初から僕とレオン君はくっつかない運命にあったんだ。
痛む胸を抱え、そっとレオン君達から離れた。その帰りに僕はやはり残党に殺された。これが十四回目。
十五回目のループで僕はミランダを倒す、もしくは説得することを考えた。しかし、彼女は大魔法使い。倒すのはまず無理だろう。では、説得は、と考えるが自分がループしていることを信じてもらえるかわからなかったので辞めておく事にした。それでもし彼女に疎まれて殺されてしまったら元も子もない。
また、警察や兵団に話しても信じてもらえなかったため、僕は材料の方を狙う事にした。自分にしか使えないと思っていた無効化の魔法は無機物には効くようで、ミランダが手に入れる素材の一つであるストッツ鉱石の魔力を無効化する。更に同じく素材であるヒドラの逆鱗を彼女より先に奪っておく事で、シュタインの誕生を防げないかと考えたのだった。
それでもシュタインは生まれた。けれど、弱体化していた。おかげで僕たちは全員重傷を負いながらも生きながらえ、シュタインを倒すことが出来た。
その五日後にレオン君が死んだ。彼は報奨金を受け取るために向かった街で行方不明になり、血だらけの死体で発見された。さらにその三日後に僕も傷が治りきらずに死んでしまった。今回も告白はしなかった。
そして十六回目である。
僕は考えた。結局シュタインを倒してもレオン君が死んでしまうのであれば、短い彼の生を目一杯楽しんでもらいたい。悔いが残らないようにしてもらいたい。幸せになってもらいたい。
結果、僕はレオン君とエミリアさんの恋路を全力で応援した。
旅の間、二人きりになれるように取り計らい、エミリアさんにレオン君のいい所を吹き込んだ。こうして今度はシュタインを倒し、大量に用意しておいた治癒薬でフィリップ君を回復させ、まともな状態で全員生き残った。
こうして冒頭のように彼らの結婚式で僕たちの旅は終わりを告げるはずだった。
嘘みたいだと思うが、空に黒雲がかかり、毒が降り注いで一週間の内に人間が全滅した。僕も巻き込まれて死んだ。
どうやら僕がパーティに加わらないと全滅エンドになってしまうみたいだな、と悟った僕は、卒業直前に学園に戻ることにしてそれまでは諸国を巡って情報を集めることにした。
そうして訪問した先で、僕は東の魔女と呼ばれている大魔法使いミランダが、シュタインを生み出すべく材料を集めている現場に行き当たってしまった。
自然発生的に現れたのだと思っていたシュタインはミランダが魔獣の骨や魔力の宿った鉱石、樹液や植物から生み出したキメラだと知った。しかし、わかった頃には材料が揃っていたためにシュタインが生み出されてしまっていた。
彼女は古今東西の書物を集めており、書物の一つに書かれていたキメラ製作の秘術を試してみたいという好奇心からシュタインを作ってしまったようで、自我を持ったシュタインに一番に殺されてしまったのだろう。ミランダの屋敷が無人の廃墟となっていた事で僕はそう見当をつけた。
その後シュタインは彼女の書物を読み漁り、大量に魔獣や魔物を作り出し自分の使い魔とした。使い魔となった彼らは人間を殺し、食料としてシュタインに献上していった。
シュタインの誕生秘話を知り、シュタインを倒す仲間を探して旅を続けていた僕は、僕以外の人をサポーターとして仲間に加えたレオン君達勇者様御一行を発見した。僕の時よりも円滑にコミュニケーションが行えている様子にショックを受けつつも、つい気になってストーカーのように彼らの旅をつけてしまった。
結果、いつもならばシュタインを倒した所で僕のかわりにそのサポーターが死に、生きながらえた僕はシュタイン討伐後のレオン君とエミリアさんの様子を知れた。
彼らはフィリップ君達の死を悲しみ、寄り添うように一緒に居て抱きしめあっていた。
なるほど、とようやく僕は腑に落ちた。
レオン君とエミリアさんは恋人だったのか。であれば、確かに男から告白されたら気持ち悪いし、戸惑うよな、と納得する。
最初から僕とレオン君はくっつかない運命にあったんだ。
痛む胸を抱え、そっとレオン君達から離れた。その帰りに僕はやはり残党に殺された。これが十四回目。
十五回目のループで僕はミランダを倒す、もしくは説得することを考えた。しかし、彼女は大魔法使い。倒すのはまず無理だろう。では、説得は、と考えるが自分がループしていることを信じてもらえるかわからなかったので辞めておく事にした。それでもし彼女に疎まれて殺されてしまったら元も子もない。
また、警察や兵団に話しても信じてもらえなかったため、僕は材料の方を狙う事にした。自分にしか使えないと思っていた無効化の魔法は無機物には効くようで、ミランダが手に入れる素材の一つであるストッツ鉱石の魔力を無効化する。更に同じく素材であるヒドラの逆鱗を彼女より先に奪っておく事で、シュタインの誕生を防げないかと考えたのだった。
それでもシュタインは生まれた。けれど、弱体化していた。おかげで僕たちは全員重傷を負いながらも生きながらえ、シュタインを倒すことが出来た。
その五日後にレオン君が死んだ。彼は報奨金を受け取るために向かった街で行方不明になり、血だらけの死体で発見された。さらにその三日後に僕も傷が治りきらずに死んでしまった。今回も告白はしなかった。
そして十六回目である。
僕は考えた。結局シュタインを倒してもレオン君が死んでしまうのであれば、短い彼の生を目一杯楽しんでもらいたい。悔いが残らないようにしてもらいたい。幸せになってもらいたい。
結果、僕はレオン君とエミリアさんの恋路を全力で応援した。
旅の間、二人きりになれるように取り計らい、エミリアさんにレオン君のいい所を吹き込んだ。こうして今度はシュタインを倒し、大量に用意しておいた治癒薬でフィリップ君を回復させ、まともな状態で全員生き残った。
こうして冒頭のように彼らの結婚式で僕たちの旅は終わりを告げるはずだった。
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