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第二章
第一話 寝顔だけなら天使
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今日も依頼を受けるべく、早朝から冒険者ギルドへと向かう為早起きをする。
まだ眠いと駄々をこねるヴェレッドを、ヘリオスが叩き起こし、三人で早目の朝食を摂り冒険者ギルドへと向かった。
「うぅー、もう少し寝ておきたかったのじゃぁ~」
「いい依頼がなくなっちまうかもしれねぇだろ」
「ふん、そんなものゴンザレスに何とかさせればよいのじゃ」
「お、お姉様? さすがにそういうわけには……」
「おいおい……」
こうして他愛もない? 会話をしていたらすぐに冒険者ギルドへ到着した。
道中、「抱っこ」とせがみ、ヘリオスに抱っこをしてもらったヴェレッドは、スヤスヤと眠っている。寝顔だけ見ればまさに天使だ。ヴェレッドの本性を知っていても見惚れてしまうくらいには。
「お姉様の寝顔、可愛らしいわね」
「……寝顔だけならな」
ヘリオスはヴェレッドを抱えている為、今日はセレーネが扉を開ける。
時間が早いと言うのに、もう冒険者達は殺到していた。いい依頼は朝に貼り出される為、その報告と合わせて、朝と夕方は混みやすいのだ。
そんな慌ただしい空気の中でもヴェレッドは注目を集める。筋肉と筋肉がぶつかり合い、依頼の取り合いをするむさ苦しい雰囲気に似合わない愛くるしい寝顔に、冒険者達の顔が緩む。
「おっ、妾ちゃんだっ!」「何て可愛い寝顔なんだ」「天使だ! 天使が降臨したぞ!」「おお、何と神々しい……」「くそっ、あの男羨ましい! 俺に代われ!」など、反応はいつも通り……いや、いつも以上だった。特に“天使”という言葉に賛成する冒険者達の声がすごかった。この冒険者達がヴェレッドの冒険者ランクを知ったら、果たしてどんな反応をするのか。
「そろそろ起こしていいだろ」
「そうね。でも、この寝顔を見ると躊躇っちゃうわね」
「否定はしねぇが、んなこと言ってたら依頼が決まらねぇだろ」
「んむぅ~? なんじゃ、着いたのか? ふわぁ~……」
欠伸をしながら、眠い目をこすりつつヴェレッドが起き出した。と思ったらきっとヘリオスを睨みつけ、その両頬を思いきりグイーっと引っ張った。
「いひ、ひてぇっ! 何しやがんだ、姉貴ッ!」
ぴょんと華麗にヘリオスの腕から飛び降り、ヴェレッドは文句を言う。
「いい夢を見ておったというのに、こなたらのせいで目が覚めてしもうたわ! 今まさにオークの肉に齧り付くとこじゃったというのにーっ」
ダンダンと地団太を踏むヴェレッドに、周囲の冒険者は微笑ましいものを見るような目を向ける。
「だからってな――」
「まぁ、よい」
「よくねぇッ!」
「ヘリオス? 口でお姉様に敵うわけないでしょ。諦めた方がいいわ」
ぐぅと言葉を飲みこみ仏頂面になるヘリオスに、セレーネはくすくすと笑う。
「お姉様。オークでしたらご自分で討伐されてはいかがですか? ジェシカさんにお願いしたら、お料理を作ってくださると思いますよ?」
「ふむ、それもそうじゃな。ヘリオス、今日はセレーネに免じて許してやるのじゃ」
「何で俺が姉貴に許してもらわなきゃならないんだ……」
納得がいかないヘリオスはブツブツとヴェレッドに聞こえないよう、小さな声で呟く。が、もちろんヴェレッドの耳には届いている。
「何じゃ? 文句でもあるのか、ヘリオス?」
「うっ……ナンデモアリマセン……」
と、ヘリオスは答えるしかなかった。
まだ眠いと駄々をこねるヴェレッドを、ヘリオスが叩き起こし、三人で早目の朝食を摂り冒険者ギルドへと向かった。
「うぅー、もう少し寝ておきたかったのじゃぁ~」
「いい依頼がなくなっちまうかもしれねぇだろ」
「ふん、そんなものゴンザレスに何とかさせればよいのじゃ」
「お、お姉様? さすがにそういうわけには……」
「おいおい……」
こうして他愛もない? 会話をしていたらすぐに冒険者ギルドへ到着した。
道中、「抱っこ」とせがみ、ヘリオスに抱っこをしてもらったヴェレッドは、スヤスヤと眠っている。寝顔だけ見ればまさに天使だ。ヴェレッドの本性を知っていても見惚れてしまうくらいには。
「お姉様の寝顔、可愛らしいわね」
「……寝顔だけならな」
ヘリオスはヴェレッドを抱えている為、今日はセレーネが扉を開ける。
時間が早いと言うのに、もう冒険者達は殺到していた。いい依頼は朝に貼り出される為、その報告と合わせて、朝と夕方は混みやすいのだ。
そんな慌ただしい空気の中でもヴェレッドは注目を集める。筋肉と筋肉がぶつかり合い、依頼の取り合いをするむさ苦しい雰囲気に似合わない愛くるしい寝顔に、冒険者達の顔が緩む。
「おっ、妾ちゃんだっ!」「何て可愛い寝顔なんだ」「天使だ! 天使が降臨したぞ!」「おお、何と神々しい……」「くそっ、あの男羨ましい! 俺に代われ!」など、反応はいつも通り……いや、いつも以上だった。特に“天使”という言葉に賛成する冒険者達の声がすごかった。この冒険者達がヴェレッドの冒険者ランクを知ったら、果たしてどんな反応をするのか。
「そろそろ起こしていいだろ」
「そうね。でも、この寝顔を見ると躊躇っちゃうわね」
「否定はしねぇが、んなこと言ってたら依頼が決まらねぇだろ」
「んむぅ~? なんじゃ、着いたのか? ふわぁ~……」
欠伸をしながら、眠い目をこすりつつヴェレッドが起き出した。と思ったらきっとヘリオスを睨みつけ、その両頬を思いきりグイーっと引っ張った。
「いひ、ひてぇっ! 何しやがんだ、姉貴ッ!」
ぴょんと華麗にヘリオスの腕から飛び降り、ヴェレッドは文句を言う。
「いい夢を見ておったというのに、こなたらのせいで目が覚めてしもうたわ! 今まさにオークの肉に齧り付くとこじゃったというのにーっ」
ダンダンと地団太を踏むヴェレッドに、周囲の冒険者は微笑ましいものを見るような目を向ける。
「だからってな――」
「まぁ、よい」
「よくねぇッ!」
「ヘリオス? 口でお姉様に敵うわけないでしょ。諦めた方がいいわ」
ぐぅと言葉を飲みこみ仏頂面になるヘリオスに、セレーネはくすくすと笑う。
「お姉様。オークでしたらご自分で討伐されてはいかがですか? ジェシカさんにお願いしたら、お料理を作ってくださると思いますよ?」
「ふむ、それもそうじゃな。ヘリオス、今日はセレーネに免じて許してやるのじゃ」
「何で俺が姉貴に許してもらわなきゃならないんだ……」
納得がいかないヘリオスはブツブツとヴェレッドに聞こえないよう、小さな声で呟く。が、もちろんヴェレッドの耳には届いている。
「何じゃ? 文句でもあるのか、ヘリオス?」
「うっ……ナンデモアリマセン……」
と、ヘリオスは答えるしかなかった。
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