追憶ノ破片

Kyoga

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『玩』




玩ばれています。

私の胎内を蠢(うごめ)いている玩具に。

酔わされています。

甘い疼きで理性を溶かす媚薬に。

戒められています。

手首になじむ、革製の枷に。

そして…

溢れています。

アナタの帰りを待ちわび、涙を流すかのように陰口から溢れ出した蜜が、腿を伝い横たえられた床に染みをつくる。


どのぐらいの時が過ぎ、何度気を遣ったのかすら忘れてしまった。
微かに理性を繋ぎとめている意識、思考回路はショートしてしまった。
陰核に塗り付けられた媚薬と陰口に埋められた男性器を模した玩具が無情に攻めを与えてくる。
触れられることのない胸元の突起は、主張するように立ち上がり、刺激を求めている。

「…ふ‥ぅッ、ぁッ、ぁン、…ゃ‥ぁっ」

戒められた腕が、あと少しで陰核に触れられる位置でもどかしく空をきった。
身をよじって床にうつぶせ、痺れた下肢に力を入れ、床に胸を擦りつける。
腰を揺らし、冷たい床に突起を擦りつけると、玩具をくわえた胎内からもぐちゅと水音が聞こえてきた。

「…ッ、くぅ‥。司…さ‥ま、も‥ぅ、ィッ」

玩具を締め付け、幾度目かの絶頂をむかえるという瞬間、玩具の動きが止まった。

突然止んでしまった刺激に絶頂をむかえるタイミングを失い、出口を失った疼きに身を焦がす。

「は・・ぁッ、ん、あっ…」

動かない玩具を締め付け、新たな刺激を探っている時。


ガシャ、カチャン
と、ドアの開く音が聞こえた。

司様が帰ってきたのだろうか?
自らが床に四つん這う格好だったことも忘れて耳を澄ます。
リビングの入り口を見つめていると、司が帰ってきた。

「架椰、いい子にしてたか?」

リビングに入ってきた司は、私を見つけると、笑みを浮かべた。

「お帰りなさいませ・・、司様。」

「いい格好だ。」

腰を高く上げ、胸を床につけたままの私を眺め、傍らに膝をつく。
止まった玩具を掴み、途中まで引き抜きかけると、再び一気に突っ込んだ。

「く…ふぅ、ああっ、ダメッ」

口角から銀の雫を零し、肩を震わせ絶頂をむかえた。

「しっかり咥え込んじゃって、こいつがお気に入りみたいだね。」

絡みつく粘膜を逆撫でするように、ゆっくりと引き抜くと、絡みつく蜜が水音を鳴らす。

「ン…ッ」

玩具を抜かれた物足りなさに、陰口をヒクつかせる。

「ここが拡がってきたのはいいとして、楽しんじゃったらお仕置きにならないね。」

私の腕を戒めていた枷を外し、呆れたように呟く。

「だって…」

床に手をつき、司の顔を見上げる。

「言い訳をする子は、捨ててしまうよ?」

司の口から飛び出してきた言葉に、私は懸命に首を横に振る。

「それが嫌なら、いい子にしててね。」

司が私の頭に手をのばし、軽く撫でてくれた。
もし、私に尻尾がついていたら、パタ②と振っていたかもしれないが、
その代わりにその手を舐めた。
鼻先を司の足に擦りつけようと近づけると、その足は離れ、ソファーに腰掛けた。

「司様?」

物欲しげな視線で見上げると、私の足元を指差された。

「床、誰が汚したんだっけ?綺麗にしてからこっちにおいで。」

そう命じると、煙草を咥え紫煙をくゆらせる。
私は頷くと、這った姿勢のまま床にできた白い染みを舌で舐めとり、床を綺麗にした。
それを眺めていた司が、立ち上がろうとする私を制止する。

「そのままでおいで。」

「はい。」

足がもつれないように、ゆっくり司の足元に向かう。
足元に座り、司の足に頭を擦りつける。

「だいぶ、ペットらしくなってきたね。今度、首輪でも買いに行くか?」

私を見下ろし、微笑みかける。

「はい。」

瞳を輝かせ、そう返事をしたが、私は司のシャツからのぞく白い首筋に触れたくて、噛み付きたくて、首ばかりを見つめていた。

「じゃあ、シャワーを浴びて来い。」

私がそんなことを考えていることに気づかず、煙草を灰皿でもみ消し、シャワーを浴びるよう促した。

「はい。じゃあ、いってきます。」

促されるがまま、バスルームに入った私は鏡に映る自分を眺め、司のことを考えた。
服に隠されたその中身は、信じがたいが私と同じ作りである。
どんな胸の形をしているのだろう?未知の好奇心にかられ始めていた。
そんなことを考えていることは、まだ彼女は気づいていないだろう。





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