1 / 1
初老の戯言
しおりを挟む
私は毎日通勤で片道2時間半ほど、猛スピードで地を滑る箱に監禁される。往復で5時間だ。1日24時間の内、睡眠は7時間程なので、起床時間はトータルで18時間。仕事は9時間、食事や風呂などのルーティンは合わせて2時間とすると、残りは7時間。たったの7時間だ。そこからさらに通勤の5時間を引くと、、と考えているとやりきれない思いで苛まれ、私は通勤のために生きているのでは無いかとすら思う。よくもまぁこんな生活を続けられているものだ。
朝も夕も常に頭の中で通勤時間が長いから早く支度をしなくては、という動機で体が勝手に動いてる。渡り鳥は長距離飛行するので寝ながら飛ぶというが、人間も極限状態では可能なのでは無いかとすら思う。少なくとも私は、起床してから電車に乗るまでの定型的な動作の間、脳が労働を怠っている。朝食べたものなぞ細かく覚えていない。
さて、今朝もいつも通り6時21分の電車に乗るために数分前からホームに並ぶ。こんな朝早いのに、乗客がわんさかいて何だか励まされる。ホント、ご苦労なこったよ。運良く座席に座れると秒でうたた寝をかます。いや、座れなくても吊り革を握ったまま仮眠している。若い頃は、読書をしたり、ニュースに目を通したり、通勤時間を有効に活用しよう!と意気込んでいた。しかし今は、電車にゆらゆら揺られる内に、私はゆりかごに揺られる赤子のようにスヤスヤと寝息をたててしまう。最近は電車の中で良質な睡眠をとる方法を試行錯誤している。そういえば、電車に枕は持ち込み可能だろうか。
早いもので、私はもうアラフォーだ。おじさんではないか、何だか虚しくなってくる。若い頃は歳を重ねることに何の抵抗もなかったが、数年前の誕生日から何とも言えない不快なモヤモヤを感じるようになった。若い頃に想像していたアラフォーよりも中身は全く未熟なんだもの。先日、会社の部下と飲みに行ったが、ベロベロに酔って「上司、マジで尊敬してます」とか熱い視線を送ってきやがった。やめてくれ、私はそんな大層な大人じゃ無いんだ、と苦笑いしながら溜息を吐いた。年功序列のうちの会社では、私も例外無くそれなりの役職を持っていた。それ故だろうか、部下の言う言葉は満更でもなかった。
歳をとるにつれ、時の流れが早い。大人は子供より感覚が鈍いのでピーマンの苦みがさほど気にならないように、血気盛んな少年の頃と比べ、感情の起伏も緩やかになった。ここまで聞くと、老いるということは一見つまらないように感じるかもしれない。だが実際は、なんというか、生きるのが楽になった。人生は一度きりだとかいうが、そんなの考えなくたって今日と変わらない平凡な明日がやって来るのは普遍の事実だ。例え明日死ぬとしても、そうとは知らず、今の次の今が続くと思っているのだろう。
総じて、虚しいおじさんは毎日通勤に2時間半もかけている、という嘆きをタラタラと語られ、甚だ迷惑だと思われてしまっては、ここまで読んだ甲斐がないだろう。だが、前置きが長くて大したことでも無いことを勿体ぶる、それがおじさんになるということなのだよ。
つまりだな、毎日頑張るためには、上手に手を抜くことだ。生き急ぐな、何もしなくたって年の功が付いてくるし、悪知恵も付く。訂正、寛容になるのだ。無意識下で養った力は意識下よりも遥かに強固で身体に馴染む。それが何年も毎日6時21分の電車に乗って、懲りずに無遅刻無欠勤を達成している秘訣なのだ。
朝も夕も常に頭の中で通勤時間が長いから早く支度をしなくては、という動機で体が勝手に動いてる。渡り鳥は長距離飛行するので寝ながら飛ぶというが、人間も極限状態では可能なのでは無いかとすら思う。少なくとも私は、起床してから電車に乗るまでの定型的な動作の間、脳が労働を怠っている。朝食べたものなぞ細かく覚えていない。
さて、今朝もいつも通り6時21分の電車に乗るために数分前からホームに並ぶ。こんな朝早いのに、乗客がわんさかいて何だか励まされる。ホント、ご苦労なこったよ。運良く座席に座れると秒でうたた寝をかます。いや、座れなくても吊り革を握ったまま仮眠している。若い頃は、読書をしたり、ニュースに目を通したり、通勤時間を有効に活用しよう!と意気込んでいた。しかし今は、電車にゆらゆら揺られる内に、私はゆりかごに揺られる赤子のようにスヤスヤと寝息をたててしまう。最近は電車の中で良質な睡眠をとる方法を試行錯誤している。そういえば、電車に枕は持ち込み可能だろうか。
早いもので、私はもうアラフォーだ。おじさんではないか、何だか虚しくなってくる。若い頃は歳を重ねることに何の抵抗もなかったが、数年前の誕生日から何とも言えない不快なモヤモヤを感じるようになった。若い頃に想像していたアラフォーよりも中身は全く未熟なんだもの。先日、会社の部下と飲みに行ったが、ベロベロに酔って「上司、マジで尊敬してます」とか熱い視線を送ってきやがった。やめてくれ、私はそんな大層な大人じゃ無いんだ、と苦笑いしながら溜息を吐いた。年功序列のうちの会社では、私も例外無くそれなりの役職を持っていた。それ故だろうか、部下の言う言葉は満更でもなかった。
歳をとるにつれ、時の流れが早い。大人は子供より感覚が鈍いのでピーマンの苦みがさほど気にならないように、血気盛んな少年の頃と比べ、感情の起伏も緩やかになった。ここまで聞くと、老いるということは一見つまらないように感じるかもしれない。だが実際は、なんというか、生きるのが楽になった。人生は一度きりだとかいうが、そんなの考えなくたって今日と変わらない平凡な明日がやって来るのは普遍の事実だ。例え明日死ぬとしても、そうとは知らず、今の次の今が続くと思っているのだろう。
総じて、虚しいおじさんは毎日通勤に2時間半もかけている、という嘆きをタラタラと語られ、甚だ迷惑だと思われてしまっては、ここまで読んだ甲斐がないだろう。だが、前置きが長くて大したことでも無いことを勿体ぶる、それがおじさんになるということなのだよ。
つまりだな、毎日頑張るためには、上手に手を抜くことだ。生き急ぐな、何もしなくたって年の功が付いてくるし、悪知恵も付く。訂正、寛容になるのだ。無意識下で養った力は意識下よりも遥かに強固で身体に馴染む。それが何年も毎日6時21分の電車に乗って、懲りずに無遅刻無欠勤を達成している秘訣なのだ。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
徹夜でレポート間に合わせて寝落ちしたら……
紫藤百零
大衆娯楽
トイレに間に合いませんでしたorz
徹夜で書き上げたレポートを提出し、そのまま眠りについた澪理。目覚めた時には尿意が限界ギリギリに。少しでも動けば漏らしてしまう大ピンチ!
望む場所はすぐ側なのになかなか辿り着けないジレンマ。
刻一刻と高まる尿意と戦う澪理の結末はいかに。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
台本集(声劇)
架月はるか
大衆娯楽
フリー台本(声劇)集。ショートショートから、長編までごちゃ混ぜです。
ご使用の際は、「リンク」もしくは「作品名および作者」を、概要欄等にご記入下さい。また、音声のみでご使用の場合は、「作品名および作者」の読み上げをお願い致します。
使用に際してご連絡は不要ですが、一報頂けると喜びます。
最後までお付き合い下さると嬉しいです。
お気に入り・感想等頂けましたら、今後の励みになります。
よろしくお願い致します。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる