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努力の結果

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残る一週間を各々で過ごしたのちに迎えた、テストの日。
 各自精一杯やり終え、後は結果を待つのみ。

 やがて一週間が経ち、とうとうテストの結果が分かる日となった。

 美冬先生から順番に呼ばれ、合計五教科分のテスト用紙が返却される。
 早速呼ばれた私は受け取ってすぐ席に戻り、ゆっくりと点数の書かれた部分に目を向けた。
 名前順にて、私が三人の中で一番早いという事もあり、二人とも私に釘づけだ。

「現代文……九十三点。数学Ⅰは八十、英語Ⅰは八十五、物理は八十四、地理Aは八十六。まあ……充分ね」
「うわぁ、完璧だね姫華」
「私も、変態になろうかな……」
「ちょっと美紀、それはどういう事かしら? まるで私が変態で、変態だから頭が良いみたいじゃない」
「え、違うの? だって絵の画力も、人間捨ててる分だけ上手いって統計があるじゃん? あれと一緒かなって」
 何の疑問もない様子で私にそう言い切る美紀。それは敵を生むからやめなさい。
「待ちなさい、そもそも私が変態だって所を否定させなさいよ。確かに人間性を中途半端にしか捨ててない人は、絵が下手糞って統計があるけども……って、そんな話はどうでも良いのよ!」
「とりあえず私は変態じゃないわ。ねえ、藍?」
「え!? えぇー……うん」
 何故か、藍ですら半信半疑状態だった。そんな……藍だけは、私をそんな目で見てないと信じていたのに。
「も、もう良いわ……変態で……」
 軽く投げやり状態で、私はそう二人に呟く。もうやけくそよ、やけくそ。
「あ、開き直った」
 ――なんて無駄話をしている所で、美紀の名前が呼ばれる。
 一瞬で緊張に包まれた美紀が、腫物を触るようにテスト用紙を受け取り、ダッシュで帰ってきた。
「やばいやばいやばい! 来たよ、とうとう帰って来ちゃったよ!」
 興奮冷めやまぬ状態の美紀を、とりあえず落ち着かせる。
「まあ待ちなさい、あなたの解答用紙は一番最後よ。先に藍のを見ましょう」
 そうこうしている内に、ちょうど藍が受け取り終わり、席に戻ってきた所で話を再開する。
 苗字が藤乃ふじのだから、七瀬、である美紀より遅いのは仕方ない。
「さあ、藍……一気に公開しちゃいなさい」
「う、うん……じゃ、じゃあ行くよ……!」
「現代文……八十四点。数学Ⅰ七十二、英語Ⅰは七十三、物理は七十二、地理Aは七十五……よ、良かった超ギリギリ……! いやったぁー!」
 無事追試を逃れた藍は、思わずガッツポーズで嬉しさを噛み締めていた。
 一応言っておくが、七十点以上で赤点回避となっている。
「良いなぁ藍……これで後、私だけだぁ……うわぁ怖い。心臓止まりそう」
「私も、美紀の結果が怖くて生理が止まりそうよ」
「それ妊娠しちゃってるよ……なんでおめでたなんだよ姫華……」
「美紀、ツッコミのキレが緊張のあまり、なくなってるわよ」
「う、うるさいやい! よーし、もう見るよ見ちゃうからね! 絶対見ちゃうからねー!」
 芸人の前振りの如き台詞を吐きながら、美紀はすぐさま豪快に用紙をめくり、点数を確認する。
「現代文……七十一点。数学Ⅰは七十二、英語Ⅰは七十、物理は七十、地理Aは……」

「六十九……点……」

 美紀が、一瞬にして真っ白になった。有名ボクサーもびっくりな程に。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 絶叫しながら、勢いでテスト用紙を折り曲げ、飛行機にして窓から飛ばす美紀。よりにもよって、一点を逃すなんて……。
「お、落ち着きなさい。過ぎてしまったものはしょうがないわ」
「うるせいやい変態生! 一点を逃した私の気持ちなんて、分かるまーい!」
「変態と優等生が混じってるわよ美紀……と、とりあえず落ち着いた方が良いわ。あまりうるさいと……」
 教壇に立っている美冬先生が、案の定こちらを睨んでいる。それはもう、視線で人を殺せるんじゃないかと思えるレベルで。
 そんな視線に、流石の美紀も一瞬で冷静になった。
「はい、すいませんでした許して下さい一点ください」
「さりげなく、点数をもらおうとするんじゃないわよ……」

 結局美紀は、一点を逃すという凡ミス極まりない事をやらかし、夏休みに……一人、追試という名の補習が決定したのだった。
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