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10.かわいいものに癒されるあたしたち
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「陽乃葉ちゃーん!」
「あ、町内会の水田さん」
おばあちゃんの茶飲み友達の水田さんが声をかけてくれた。水田さんも出店者で、今回あたしたちを見守ってくれるんだ。
「あらぁ、かわいいねぇ。すっごくすてきよ! これならきっとうまくいくわ」
水田さんの言葉を聞いて、あたしはすごく安心した。
「今日は、よろしくお願いします。あたしの友達の桐ケ谷と鈴蘭です。こちら、おばあちゃんのお友達の水田さん」
「困ったことがあったら相談しに来てね」
水田さんと桐ケ谷と鈴蘭それぞれに紹介し、あいさつしあう。
あいさつを終えると、水田さんはあたしたちの両隣のブースの人たちにもあいさつをしてくれた。
「じゃあ私は向こうのブースだから、困ったことがなくてもぜひ来てね。アクセサリーを作っているの」
水田さんはすぐその場を離れた。
心強い気持ちになり、あたしはすこし余裕ができた。やっと息ができる気がする。
「そろそろ、イベントが始まるね」
桐ケ谷に話しかけたんだけど……姿は見当たらない。さっきまであたしの隣にいたのに。
きょろきょろと見回すと、桐ケ谷は床に座り込んでいた。ずいぶん小さく縮こまって。
「どうしたの?」
しゃがみこんで桐ケ谷の顔を見る。
「感じ悪い男子より、陽乃葉と鈴蘭で売ってくれた方がいいと思う。俺は見えないようにここでじっとしている」
意思を固めた顔で、きっぱり言う。
そういや、桐ケ谷は普通に「鈴蘭」って呼び捨てしているんだよね、最近。
単純に苗字を知らないだけなんだろうけど、なんだか胸がチクっとする。
正体不明のもやもやを忘れるように、あたしは桐ケ谷をなぐさめる。
「そんなことないって」
「俺、愛想よく接客なんてできない! シミュレーションしてみたけど、笑えない! 話せない!」
めずらしく、桐ケ谷は気弱になっていた。急に。
「まぁ、無理にとは言わないけどさ」
「それに、まだ陽乃葉のためのクマが完成してない」
陽乃葉のためのクマ、という言葉に、あたしは顔が赤くなる。
「手芸用品店で選んだ、あの生地の?」
わかっていて、聞いちゃった。もし万が一勘違いだったらはずかしいから。
「そう。どうしてもリボンがうまく作れなくて。できたら陽乃葉に一番に見せるから」
さっきまで、鈴蘭呼びに嫉妬していたあたしの心は乱れまくってしまった。
桐ケ谷はごそごそと自分のカバンを引き寄せ、中に手を入れた。
「完成するまで見んなよ」
「わ、わかった。ありがとう……」
何がありがとうかわからないけど、あたしは桐ケ谷の前にいられなくなって、立ち上がってイスに座る。イスは二脚しかないから、どちらにせよだれかは座れないんだけどね。
すでにイスに座っていた鈴蘭は、あたしを見て頬を赤らめていた。
「……何よ」
鈴蘭はすっと、くーたんを持ちあげて自分の顔を隠した。かわいいものにあふれた空間だからか、鈴蘭は堂々とくーたんを持っている。あたし、あむちゃんは置いてきちゃった……こんなオープンな雰囲気なら紹介したかったのに。
「陽乃葉ちゃんが、かわいい」
少し高めの声で、くーたんに声をあてている。
「もう、からかわないでよ!」
ちらっと桐ケ谷を見るけど、リボンに夢中でこっちの会話には気付いていないみたい。よかったぁ。
「あ、町内会の水田さん」
おばあちゃんの茶飲み友達の水田さんが声をかけてくれた。水田さんも出店者で、今回あたしたちを見守ってくれるんだ。
「あらぁ、かわいいねぇ。すっごくすてきよ! これならきっとうまくいくわ」
水田さんの言葉を聞いて、あたしはすごく安心した。
「今日は、よろしくお願いします。あたしの友達の桐ケ谷と鈴蘭です。こちら、おばあちゃんのお友達の水田さん」
「困ったことがあったら相談しに来てね」
水田さんと桐ケ谷と鈴蘭それぞれに紹介し、あいさつしあう。
あいさつを終えると、水田さんはあたしたちの両隣のブースの人たちにもあいさつをしてくれた。
「じゃあ私は向こうのブースだから、困ったことがなくてもぜひ来てね。アクセサリーを作っているの」
水田さんはすぐその場を離れた。
心強い気持ちになり、あたしはすこし余裕ができた。やっと息ができる気がする。
「そろそろ、イベントが始まるね」
桐ケ谷に話しかけたんだけど……姿は見当たらない。さっきまであたしの隣にいたのに。
きょろきょろと見回すと、桐ケ谷は床に座り込んでいた。ずいぶん小さく縮こまって。
「どうしたの?」
しゃがみこんで桐ケ谷の顔を見る。
「感じ悪い男子より、陽乃葉と鈴蘭で売ってくれた方がいいと思う。俺は見えないようにここでじっとしている」
意思を固めた顔で、きっぱり言う。
そういや、桐ケ谷は普通に「鈴蘭」って呼び捨てしているんだよね、最近。
単純に苗字を知らないだけなんだろうけど、なんだか胸がチクっとする。
正体不明のもやもやを忘れるように、あたしは桐ケ谷をなぐさめる。
「そんなことないって」
「俺、愛想よく接客なんてできない! シミュレーションしてみたけど、笑えない! 話せない!」
めずらしく、桐ケ谷は気弱になっていた。急に。
「まぁ、無理にとは言わないけどさ」
「それに、まだ陽乃葉のためのクマが完成してない」
陽乃葉のためのクマ、という言葉に、あたしは顔が赤くなる。
「手芸用品店で選んだ、あの生地の?」
わかっていて、聞いちゃった。もし万が一勘違いだったらはずかしいから。
「そう。どうしてもリボンがうまく作れなくて。できたら陽乃葉に一番に見せるから」
さっきまで、鈴蘭呼びに嫉妬していたあたしの心は乱れまくってしまった。
桐ケ谷はごそごそと自分のカバンを引き寄せ、中に手を入れた。
「完成するまで見んなよ」
「わ、わかった。ありがとう……」
何がありがとうかわからないけど、あたしは桐ケ谷の前にいられなくなって、立ち上がってイスに座る。イスは二脚しかないから、どちらにせよだれかは座れないんだけどね。
すでにイスに座っていた鈴蘭は、あたしを見て頬を赤らめていた。
「……何よ」
鈴蘭はすっと、くーたんを持ちあげて自分の顔を隠した。かわいいものにあふれた空間だからか、鈴蘭は堂々とくーたんを持っている。あたし、あむちゃんは置いてきちゃった……こんなオープンな雰囲気なら紹介したかったのに。
「陽乃葉ちゃんが、かわいい」
少し高めの声で、くーたんに声をあてている。
「もう、からかわないでよ!」
ちらっと桐ケ谷を見るけど、リボンに夢中でこっちの会話には気付いていないみたい。よかったぁ。
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