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5.マスコットは売れた?
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「だったら、ハンドメイドイベントに出店するのはどう?」
おばあちゃんが、目をキラキラさせて言う。
「ハンドメイドイベント?」
「町内会の水田さんがね、自分で作ったアクセサリーをイベントで売るから遊びにきてってこの前チラシ置いていったのよ」
水田さんもおばあちゃんの茶飲み友達なんだよ。あたしのおばあちゃんなのに、コミュ力ありすぎてこわいくらい。あたしにも分けてほしいよ……。
おばあちゃんはよっこいしょと立ち上がり、レジ下の書類入れを探す。
「あったあった。次回はゴールデンウイークに開催されるみたいよ」
かわいらしいクマのイラストが書かれたチラシには、アクセサリー・キャンドル・バッグ・ポーチ・陶器・ぬいぐるみなど、さまざまなハンドメイド作品を売ることができると、写真と共に紹介されていた。
ぬいぐるみ……!
ここなら、ハンドメイドのぬいぐるみを買いに来るお客さんにたくさん出会えるんだ。
「いいじゃん! 桐ケ谷の作品ならぜったい人気出るよ」
あたしのハイテンションとはうらはらに、桐ケ谷は表情が暗い。
「未成年だと、保護者の許可がないと出店できないって書いてあります」
桐ケ谷は、チラシの裏面にある『出店募集!』の項目にある『未成年の場合、保護者の許可または同伴が必要になります』と書いてあった。
「あー……」
親の許可が必要となると、ダメか……いや、ダメじゃないぞ。
あたしはおばあちゃんに向き直った。
「おばあちゃん! 許可くれませんかっ!」
「え、わたし?」
おばあちゃんは目を丸くした。
「あたしも、桐ケ谷といっしょに参加する! おばあちゃんにぜったいに迷惑かけないようにするから。おねがい!」
あたしは、手を顔の前であわせてこすり合わせた。
「イベントの日はお店もお手伝いできないからそこも迷惑かけちゃうけど……」
「お店のことはいいのよ」
おばあちゃんは、慌てたように言った。
そして、視線を落としてヒザをなでる。
「お店の手伝いをしてくれる陽乃葉ちゃんに甘えて、陽乃葉ちゃんに子どもらしいことをなにも体験させてあげられなくなって、ずっと思っていたの。おばあちゃんだけじゃない。お母さんも、いつも由愛ちゃんと愛生ちゃんの世話をさせて申し訳ない気持ちでいっぱいなの」
おばあちゃんの言葉に、あたしも桐ケ谷もだまって耳を傾けた。
なんだかつらそうなおばあちゃんの声に、胸がくるしくなるよ。
「そんなこと言わないで。あたしは好きで手伝っているんだから」
もちろん自分の時間は減るけど、別に自分の自由な時間が増えたところでやりたい習い事もないし、熱中する趣味もない。
だれかの役に立つくらいしか、やることがないんだもん。
でも、おばあちゃんはあたしの言葉に首を振った。
「ダメなおばあちゃんでごめんなさいね」
そう思ってくれててうれしい半面、本当に好きでやっていることだから、あまり否定もしないでほしい気持ちもある。
これがあたしのアイデンティティでもあるから。
けど、おばあちゃんは大人として、あたしに子どもっぽいことをしてほしいっていう気持ちも伝わってきた。子どもでいられる時間って短い。あっというまに、あたしは大人になってしまうって、おばあちゃんはよくわかっているんだ。
あたしは、まだピンと来ていないけどね。
おばあちゃんは、あたしと桐ケ谷の顔を力強い瞳で見た。
「イベントの保護者許可、出しましょう。桐ケ谷くん、陽乃葉ちゃんと仲良くしてあげてね」
「やったぁ! おばあちゃんありがとう!」
「ありがとうございます」
桐ケ谷は、またぴしっとした背筋のままおじぎした。
なんだか、わくわくしてきた!
ハンドメイドイベントに出るだなんて、さっきまでのあたしじゃ考えもつかなかったよ。
「じゃあ桐ケ谷、ハンドメイドイベントまでに、がんばってマスコットを作らないとね!」
「うん、がんばるよ」
桐ケ谷は内心興奮しているのか、ほほを赤らめてうなずいた。
イベントに出れば、もっと桐ケ谷の笑顔を見られるかな。
おばあちゃんが、目をキラキラさせて言う。
「ハンドメイドイベント?」
「町内会の水田さんがね、自分で作ったアクセサリーをイベントで売るから遊びにきてってこの前チラシ置いていったのよ」
水田さんもおばあちゃんの茶飲み友達なんだよ。あたしのおばあちゃんなのに、コミュ力ありすぎてこわいくらい。あたしにも分けてほしいよ……。
おばあちゃんはよっこいしょと立ち上がり、レジ下の書類入れを探す。
「あったあった。次回はゴールデンウイークに開催されるみたいよ」
かわいらしいクマのイラストが書かれたチラシには、アクセサリー・キャンドル・バッグ・ポーチ・陶器・ぬいぐるみなど、さまざまなハンドメイド作品を売ることができると、写真と共に紹介されていた。
ぬいぐるみ……!
ここなら、ハンドメイドのぬいぐるみを買いに来るお客さんにたくさん出会えるんだ。
「いいじゃん! 桐ケ谷の作品ならぜったい人気出るよ」
あたしのハイテンションとはうらはらに、桐ケ谷は表情が暗い。
「未成年だと、保護者の許可がないと出店できないって書いてあります」
桐ケ谷は、チラシの裏面にある『出店募集!』の項目にある『未成年の場合、保護者の許可または同伴が必要になります』と書いてあった。
「あー……」
親の許可が必要となると、ダメか……いや、ダメじゃないぞ。
あたしはおばあちゃんに向き直った。
「おばあちゃん! 許可くれませんかっ!」
「え、わたし?」
おばあちゃんは目を丸くした。
「あたしも、桐ケ谷といっしょに参加する! おばあちゃんにぜったいに迷惑かけないようにするから。おねがい!」
あたしは、手を顔の前であわせてこすり合わせた。
「イベントの日はお店もお手伝いできないからそこも迷惑かけちゃうけど……」
「お店のことはいいのよ」
おばあちゃんは、慌てたように言った。
そして、視線を落としてヒザをなでる。
「お店の手伝いをしてくれる陽乃葉ちゃんに甘えて、陽乃葉ちゃんに子どもらしいことをなにも体験させてあげられなくなって、ずっと思っていたの。おばあちゃんだけじゃない。お母さんも、いつも由愛ちゃんと愛生ちゃんの世話をさせて申し訳ない気持ちでいっぱいなの」
おばあちゃんの言葉に、あたしも桐ケ谷もだまって耳を傾けた。
なんだかつらそうなおばあちゃんの声に、胸がくるしくなるよ。
「そんなこと言わないで。あたしは好きで手伝っているんだから」
もちろん自分の時間は減るけど、別に自分の自由な時間が増えたところでやりたい習い事もないし、熱中する趣味もない。
だれかの役に立つくらいしか、やることがないんだもん。
でも、おばあちゃんはあたしの言葉に首を振った。
「ダメなおばあちゃんでごめんなさいね」
そう思ってくれててうれしい半面、本当に好きでやっていることだから、あまり否定もしないでほしい気持ちもある。
これがあたしのアイデンティティでもあるから。
けど、おばあちゃんは大人として、あたしに子どもっぽいことをしてほしいっていう気持ちも伝わってきた。子どもでいられる時間って短い。あっというまに、あたしは大人になってしまうって、おばあちゃんはよくわかっているんだ。
あたしは、まだピンと来ていないけどね。
おばあちゃんは、あたしと桐ケ谷の顔を力強い瞳で見た。
「イベントの保護者許可、出しましょう。桐ケ谷くん、陽乃葉ちゃんと仲良くしてあげてね」
「やったぁ! おばあちゃんありがとう!」
「ありがとうございます」
桐ケ谷は、またぴしっとした背筋のままおじぎした。
なんだか、わくわくしてきた!
ハンドメイドイベントに出るだなんて、さっきまでのあたしじゃ考えもつかなかったよ。
「じゃあ桐ケ谷、ハンドメイドイベントまでに、がんばってマスコットを作らないとね!」
「うん、がんばるよ」
桐ケ谷は内心興奮しているのか、ほほを赤らめてうなずいた。
イベントに出れば、もっと桐ケ谷の笑顔を見られるかな。
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