委員長はかわいいものに癒されたい!

花梨

文字の大きさ
上 下
7 / 29
5.マスコットは売れた?

1

しおりを挟む
 桐ケ谷のひみつを知り、あたしのひみつをひとつ教えた翌日の学校。あたしの心は、いつもより緊張感があった。
 ほんとうに、桐ケ谷はあたしが「委員長と呼ばれることに疲れた」ってことを誰にも言わないかな。大丈夫だよね。
 あと、「陽乃葉」って呼ばれたとき、クラスの人たちがどういう反応をするかの方がこわい。委員長の肩書に疲れたから陽乃葉と呼ばれることになった、なんて言えないし。でも理由を言わなければヘンな噂を流されるかもしれないし。
 あー! 余計なことを言ってしまったー!
 昨日は、あたしのひみつも教えなきゃ平等じゃないって勢いで言ってしまったけど、ほんとうに言って良かったのかなって。
 ドキドキしながら教室についた。そっと中を見ると、桐ケ谷はまだ来ていない。いつもギリギリに到着するから、今日もそうだろう。ぽっかり空いたとなりの席をちらっと見てから、自分の席についてランドセルから筆記用具とか教科書を取り出す。
 陽乃葉って言われたらどう返事をしようか……。
 ほかの子にはどう言おうか……。
 それで頭がぐるぐる!
「おはよう陽乃葉ちゃん」
「……! お、おはよう鈴蘭」
 声の主は鈴蘭だった。頭の中は桐ケ谷でいっぱいだったから、桐ケ谷に言われたのだと思って驚きすぎた。
 普段と違うあたしの様子に鈴蘭はちょっと驚いたみたいだけど、特に何も言わず自分の席についた。
 あたしは、鈴蘭の後ろ姿を見つめる。
 顔も心も整っていて、宿題も提出物も期日を守る。それなのに、親しい友だちはいないっぽい。まぁ、あたしにもいないし、友だちがいるからどうこうってことではないけど。
 ……鈴蘭もいろいろあるのかなって、思うことはある。疲れているのはあたしだけじゃないのかもって。
 あたしは、ランドセルのポケット部分に入れておいたクラゲのマスコットに触れる。触るだけで、ふかふかしてかわいいってわかる。
 かわいいものは、いい!
 やっぱ癒される!
 あたしが内心ニヤニヤしていると、となりの席にどさっとネイビーのランドセルが置かれた。
 桐ケ谷だ!
 ドキドキしつつ、桐ケ谷を見上げる。
「お、おはよう……」
「……っす」
 小さい声で、おそらくあいさつと思われる発声をしてくれた。
 そして桐ケ谷は、そのまま机に突っ伏した。寝た。
 昨日の放課後はけっこうよくしゃべってくれたけど、やっぱり午前中は苦手みたい。
 桐ケ谷の細くてきれいな指先を見ると、ばんそうこうが貼られていた。
 ……もしかして、おそくまでマスコット作りに励んでいるから、寝不足とか?
 そう思うと、態度の悪さも提出物の出さなさも、ぜんぶ許してあげるか~……なんて、思うわけないだろ! それはそれ、これはこれ!
「桐ケ谷、寝る前に昨日提出期日だった遠足の……」
「なぁんでもいー」
「なんでもよくない! あたしが怒られるの!」
「マスコットあげるからゆるして」
「ちょ、シー!」
 余計なことを言うんじゃない!
 委員長が、マスコットをかわいがっているなんて知られたら。
 小六にもなって赤ちゃんみたいって笑われて、委員長として頼りないって思われたら。
 あたしの存在意義がなくなっちゃうんだよー!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】 「……襲われてる! 助けなきゃ!」  錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。  人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。 「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」  少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。 「……この手紙、私宛てなの?」  少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。  ――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。  新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。 「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」  見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。 《この小説の見どころ》 ①可愛いらしい登場人物 見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎ ②ほのぼのほんわか世界観 可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。 ③時々スパイスきいてます! ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。 ④魅力ある錬成アイテム 錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。 ◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。 ◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。 ◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

処理中です...