委員長はかわいいものに癒されたい!

花梨

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5.マスコットは売れた?

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 桐ケ谷のひみつを知り、あたしのひみつをひとつ教えた翌日の学校。あたしの心は、いつもより緊張感があった。
 ほんとうに、桐ケ谷はあたしが「委員長と呼ばれることに疲れた」ってことを誰にも言わないかな。大丈夫だよね。
 あと、「陽乃葉」って呼ばれたとき、クラスの人たちがどういう反応をするかの方がこわい。委員長の肩書に疲れたから陽乃葉と呼ばれることになった、なんて言えないし。でも理由を言わなければヘンな噂を流されるかもしれないし。
 あー! 余計なことを言ってしまったー!
 昨日は、あたしのひみつも教えなきゃ平等じゃないって勢いで言ってしまったけど、ほんとうに言って良かったのかなって。
 ドキドキしながら教室についた。そっと中を見ると、桐ケ谷はまだ来ていない。いつもギリギリに到着するから、今日もそうだろう。ぽっかり空いたとなりの席をちらっと見てから、自分の席についてランドセルから筆記用具とか教科書を取り出す。
 陽乃葉って言われたらどう返事をしようか……。
 ほかの子にはどう言おうか……。
 それで頭がぐるぐる!
「おはよう陽乃葉ちゃん」
「……! お、おはよう鈴蘭」
 声の主は鈴蘭だった。頭の中は桐ケ谷でいっぱいだったから、桐ケ谷に言われたのだと思って驚きすぎた。
 普段と違うあたしの様子に鈴蘭はちょっと驚いたみたいだけど、特に何も言わず自分の席についた。
 あたしは、鈴蘭の後ろ姿を見つめる。
 顔も心も整っていて、宿題も提出物も期日を守る。それなのに、親しい友だちはいないっぽい。まぁ、あたしにもいないし、友だちがいるからどうこうってことではないけど。
 ……鈴蘭もいろいろあるのかなって、思うことはある。疲れているのはあたしだけじゃないのかもって。
 あたしは、ランドセルのポケット部分に入れておいたクラゲのマスコットに触れる。触るだけで、ふかふかしてかわいいってわかる。
 かわいいものは、いい!
 やっぱ癒される!
 あたしが内心ニヤニヤしていると、となりの席にどさっとネイビーのランドセルが置かれた。
 桐ケ谷だ!
 ドキドキしつつ、桐ケ谷を見上げる。
「お、おはよう……」
「……っす」
 小さい声で、おそらくあいさつと思われる発声をしてくれた。
 そして桐ケ谷は、そのまま机に突っ伏した。寝た。
 昨日の放課後はけっこうよくしゃべってくれたけど、やっぱり午前中は苦手みたい。
 桐ケ谷の細くてきれいな指先を見ると、ばんそうこうが貼られていた。
 ……もしかして、おそくまでマスコット作りに励んでいるから、寝不足とか?
 そう思うと、態度の悪さも提出物の出さなさも、ぜんぶ許してあげるか~……なんて、思うわけないだろ! それはそれ、これはこれ!
「桐ケ谷、寝る前に昨日提出期日だった遠足の……」
「なぁんでもいー」
「なんでもよくない! あたしが怒られるの!」
「マスコットあげるからゆるして」
「ちょ、シー!」
 余計なことを言うんじゃない!
 委員長が、マスコットをかわいがっているなんて知られたら。
 小六にもなって赤ちゃんみたいって笑われて、委員長として頼りないって思われたら。
 あたしの存在意義がなくなっちゃうんだよー!
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