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第二章

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 1時間目の授業が終わり、まりなちゃん栞奈ちゃんメグちゃんが、いそいそと私を取り囲む。ほかのクラスメイトも、朝の先輩襲撃がいったい何事だったのか興味があるみたいでこちらの様子をチラチラとみている。
「大丈夫だった?」
 心配そうなまりなちゃん。
「めっちゃ怖かったねぇ!」
 お化け屋敷でテンションが上がるタイプの栞奈ちゃんは、なぜか目がキラキラしている。
「もしハラスメント的なものを受けたのなら、一緒に先生に言いましょう。大丈夫、目撃者はたくさんいるから」
 メグちゃんが、いつも通り難しめな言葉で私をフォローしてくれる。
 私は、端的にさっきあった出来事を話した。
「なんかね、『あたしも楓真を好きなんだから』って言われて……」
 ひぇ~! と、栞奈ちゃんが大げさに驚く。教室も、ちょっとざわっとした。
「すごいねぇ。普通、下級生にそんなこと言う?」
 まりなちゃんが眉をひそめた。
「それで、波奈ちゃんはなんて返したんです?」
 冷静でありながら、メグちゃんが興味津々な様子で聞いてくる。さすがのメグちゃんも、気になる案件だったみたい。
「予鈴が鳴っちゃって、そこで話は終わっちゃった」
 3人と教室は、ちょっとがっかりしたような空気に包まれていた。いや、勝手にガッカリされても!
 私が無言でもやもやしている間に、3人はわいわい盛り上がっている。
「きれいな人だったよねー」
 まりなちゃんの言葉に、メグちゃんが口をはさむ。
「ルッキズムに言及するのはスマートじゃないけれど……3年生のオーラも相まって、圧倒されました」
「そうそう! 女王様みたいなオーラだった!」
 栞奈ちゃんが、アゴに手をあてながらフムフムとうなずいている。
 当たり前だけど、他人事。私は生きた心地がしないんだけどなぁ。
「で、波奈ちゃんはどうするの?」
 栞奈ちゃん、普段はふざけているけど、今はするどい視線を私に向けてくる。
「楓真先輩、譲っちゃうの?」
 まりなちゃんも、メグちゃんも、じっと私を見る。
 ここで、私の見栄っ張りな心がまたむくむく湧いてくる。
 もう見栄は張らない、ウソはつかない、正直に生きるんだって決めた。
 けれど、大きなことを言いたくなってしまう。
 そんな私が言える本音は、ひとつ。
「私だって、楓真が好きだから譲らないよ」
 私の見栄に教室が沸いたところで、次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
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