10 / 26
第二章
3
しおりを挟む
「知ってるかい、波奈ちゃん」
コトリ、と湯呑みをお盆に置いて、私を見る。
「え、何を?」
みっちゃんの声に、世界が少しだけ色を取り戻した。
「嘘から出た実、ってことわざがあるんだよ」
「ウソからでたまこと……?」
聞いたことがあるような、ないような。
「そう。最初はウソだったけど、そのあと本当のことになることもあるっていう意味よ」
「ウソが、本当のことに……?」
私と楓真が、いつか本当に付き合うことになるってこと?
こんな大ウソつきな私が、楓真に許されて付き合う未来があるってこと?
「そんなの……無理だよ」
私の後ろ向きな発言に、みっちゃんは小さく首を振る。
「今のままじゃ、無理かもね。本当のことになるよう、努力したらいいんだよ。失った信用を取り戻すのは大変だけど、楓真くんの信用を取り戻すためならそれくらいできるでしょ?」
うふふ、とみっちゃんが笑う。
みっちゃんは優しいけれど、70年以上生きてきた人だから、生ぬるいことを言っていると圧をかけられがち。ちなみに、みっちゃんは年齢非公開だと言って教えてくれてないんだけど、私のおばあちゃんと近そうな世代だし、なんとなく70代かな、と思っている。
そっか、最初はウソでも、そのうち本当になることもあるんだ。
もちろん、信頼を取り戻すのは大変なことだけど、やるしかない。
「うん。私、楓真に好きになってもらえるよう、がんばる!」
今は「ウソから出たまこと」ってことわざが、心のお守りになるような気がした。
コトリ、と湯呑みをお盆に置いて、私を見る。
「え、何を?」
みっちゃんの声に、世界が少しだけ色を取り戻した。
「嘘から出た実、ってことわざがあるんだよ」
「ウソからでたまこと……?」
聞いたことがあるような、ないような。
「そう。最初はウソだったけど、そのあと本当のことになることもあるっていう意味よ」
「ウソが、本当のことに……?」
私と楓真が、いつか本当に付き合うことになるってこと?
こんな大ウソつきな私が、楓真に許されて付き合う未来があるってこと?
「そんなの……無理だよ」
私の後ろ向きな発言に、みっちゃんは小さく首を振る。
「今のままじゃ、無理かもね。本当のことになるよう、努力したらいいんだよ。失った信用を取り戻すのは大変だけど、楓真くんの信用を取り戻すためならそれくらいできるでしょ?」
うふふ、とみっちゃんが笑う。
みっちゃんは優しいけれど、70年以上生きてきた人だから、生ぬるいことを言っていると圧をかけられがち。ちなみに、みっちゃんは年齢非公開だと言って教えてくれてないんだけど、私のおばあちゃんと近そうな世代だし、なんとなく70代かな、と思っている。
そっか、最初はウソでも、そのうち本当になることもあるんだ。
もちろん、信頼を取り戻すのは大変なことだけど、やるしかない。
「うん。私、楓真に好きになってもらえるよう、がんばる!」
今は「ウソから出たまこと」ってことわざが、心のお守りになるような気がした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
失禁少女 ~彼女はおしがましながら思いを伝える~
赤髪命
恋愛
星月学園の新入生、清水聖依奈(しみずせいな)は、「声を出すと尿意が増す」という体質に悩まされていた。入試面接の日、聖依奈はおもらししてしまったところを同じく入試を受けていた高堰耐志(たかせきたいし)に見られてしまい、ひどく落ち込む。入学式の日、教室に行くと隣には耐志の姿が。
「なんだか、高堰くんの前だと、安心できる気がする……」
聖依奈が耐志に思いを寄せる中、学園内には他にも恋のライバル出現⁉
「おもらし」が織り成す学園ラブコメ、ここにあり!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる